[癒やしニーズ]と[炎レストラン]

 最近、薪火で料理をするレストランが増えているように思います。炭火を使う飲食業態は、焼鳥、うなぎ、炉端焼き、焼肉などたくさんありますが、薪火で料理をする店は余り多くはありません。先日、そんな一軒、軽井沢の「薪焼 かけはし」にお邪魔しました。
 店主が、2019年の台風で倒れた長野県のりんごの木を薪として活用したいと考えてオープンした店で、〆のご飯以外はすべて薪火で料理されます。8席のみのカウンターから薪火で仕上がる料理を見ながらいただくのは、おまかせのコース料理のみ。18時一斉スタートなので、遅刻厳禁です。理由は、一つの焼き場で薪火や熾火(おきび)を操る料理だから。炭火と比べるとはるかに火加減が難しい薪の火。火力の調節、炎との距離、時間が複雑に絡み合う薪火調理は、素材に合わせた火加減を確保するための段階が重要なのです。ほんのり燻製香が漂う料理は、火加減も絶妙です。
 「2017年 食市場のトレンド」講演では、炭や薪を火力にして炎を演出する飲食店を[炎レストラン]というキーワードで紹介しています。前年の“トランプ・ショック”を引きずったまま幕を開けた17年は、生活者の[癒やしニーズ]が強くなった年。一年中焚き火を楽しむ人が増え、都会で気軽に参加できる“焚き火イベント”なるものも人気になりました。それに呼応するかのように、東京・代官山に劇場型焚き火イタリアン「falò(ファロ)」と同・自由が丘にキャンプファイヤー料理店「Campfired Grill & Café THE BANFF(キャンプファイヤーグリル&カフェザバンフ)」が、同・永田町に薪火グリル「Anchor Point(アンカー・ポイント)」が相次いでオープンしています。
 太古から人々は、炎を囲んで食事をしたり、会話を楽しんだりしてきました。だからでしょうか、炎を見ていると心が和みます。まだまだ続く[癒やしニーズ]。[炎レストラン]が再び人気になっている理由かもしれません。

食感ブームは[触感消費]へ

 「2026年 食市場のトレンド」講演では、[エモ(エモーショナル)消費]のキーワードの中で、若者の編み物ブームを取り上げました。編み物が新たな“集中できる趣味”として人気になっているという内容。実際、100円ショップのDAISOでは、編み物関連商品の24年度の売り上げが前年比170%に伸びました。無心になって手を動かす。編んだ物は形になって残る。スマホでSNSや動画を何となく見続けたときの虚無感と異なり、自分の手で生み出した充実感が得られる。スマホ全盛の今だからこそ、編み物の魅力が際立つのかもしれません。
 それを追いかけるような情報が米国からも。10~20代の間で裁縫が流行っているのだそう。ローカルテレビ局WKTVニュースは昨年、国内で約3000万人が裁縫していると報道。TikTokでも裁縫関連の投稿数は約3万件あり、若年化が進んでいると指摘しました。またニューヨーク・タイムズによると、若い世代が裁縫教室に通うようになった結果、ニューヨーク裁縫センターでは売り上げが75%増加しているとか。
 そしてノルウェーの若者が今熱中しているのが、料理なのだそう。アルゴリズムが勧める画面から離れられないZ世代とα世代が今、キッチンに逃げ込んでいるといいます。パン作りのような一から手を動かすアナログな作業が心配や不安を減らすための手段になりつつあるようで、調査会社が15~25歳を対象にした意識調査によると、生地作りから行う若者の割合は25年の調査時の55%から64%へと上昇。余暇時間に最も関心のある行為として「食事」が挙がり、ノルウェー産食材や地産地消、オーガニックへの関心も高まっているようです。確かにノルウェーでは、生地からパンや焼き菓子を作る文化はかなり身近なよう。パン作りは生地をこねているときの感触がクセになるし、生地を台に叩きつける工程はストレス発散にもなります。
 私は、来年のトレンドキーワードに[触感消費]を挙げる予定です。毛糸も布もパン生地も触って心地よく、自らの手で何かを作り上げたときの達成感は共通しています。モチモチ、ザクザクの食感ブームから[触感消費]へ。癒やされたい生活者のニーズは[五感消費]へと広がり、次のフェーズに向かっているようです。

悩み多き鍋料理

 育ち盛りの子どもがいる家庭では、白飯が何杯食べられるかがおかず選びの基準になることがあります。まずは肉。カレーでも野菜炒めでも、とにかく肉がたっぷり入っていること、そして白飯が進む味付けであること。子どもだけでなく、夫の場合もあるでしょう。
 何も考えたくないとき、野菜を摂らなきゃと気付いたとき、日々の食べ過ぎを反省したとき、冷蔵庫の整理をしたいときに作る冬の定番と言えば鍋料理。そんな奥深い理由などお構いなしの家族の反応と言えば・・・。すき焼きやしゃぶしゃぶは肉たっぷりなら大歓迎!とは言え材料代は凄まじい。チゲ鍋やモツ鍋ならまあまあいけるか!水炊きはちょっと不評で、湯豆腐などとんでもない。
 意外に“悩み多き鍋料理”。その一助にとMizkanが今年提案しているのが、肉がモリモリ進み、家族みんなが大満足できると謳う鍋つゆ“お肉がウマい”シリーズです。開発にあたっては、社内の子育て中の社員とともに子どもが喜ぶ食事の特徴を分析し、「うま味や香りがあるものは食べ進む」「お肉が好きでテンションが上がる」「ご飯のおかずにならないと不満が出る」といったリアルな親子の食生活を把握して味わいに落とし込んだといいます。特徴としては、香味油で肉や野菜に味がからむ、やみつきになるおいしさに加え、肉や野菜をスープごとご飯にかける“つゆだく丼”としても楽しめるとのこと。
 思い出されるのは、2024年、モランボンが同様の理由で発売した、冷しゃぶ用調味料“しゃぶドレ”。酷暑で冷しゃぶの食卓登場頻度は伸長しているものの、子どものいる家庭では「ご飯のおかずにならない」「子どもが喜ばない」「メインディッシュにならない」といった不満が挙がったとか。そこで、冷しゃぶが満足できるメインディッシュになるようにと開発した“たれ”が同品です。食べ応えがある濃厚感と野菜もおいしく食べられるさっぱり感を実現。思わずご飯にワンバウンドしたくなる、白飯のおかずになるしっかり味のたれに仕上げています。
 そういえば最近、老夫婦のウチでさえ、関西風の水炊きではなく、骨付き鶏肉のうま味をじっくり炊き出した白濁系博多風の水炊きにご執心。子ども返り? いえいえ、元気な証拠です。

「オノマトペ」と料理の名前

 「オノマトペ」は、自然界の音や物が発する音を表す言葉「擬音語」、耳で聞こえない物事の状態や様子、人の感情を表す言葉「擬態語」、人間や動物の声や鳴き声を表す言葉「擬声語」の総称です。この中で「擬音語」と「擬態語」は、“食”との関係性が強い言葉です。
 近年流行りの食感。“サクサク”“カリカリ”“ザクザク”“シャキシャキ”“プチプチ”は擬音語、“もっちり”“ふわふわ”“とろとろ”“ぷにょぷにょ”は擬態語です。最近は、オノマトペを商品名に入れて魅力や特徴をダイレクトに伝える手法が当たり前になっていますが、戦略的に成功した事例として思い出されるのは、何といっても1996年に発売されたポッカコーポレーション(当時)の「じっくりコトコト煮込んだスープ」。“コトコト”という擬態語を入れた表現が、時間と手間をかけて作った温かいスープをイメージさせるのに、十分な表現力を持っていました。
 オノマトペがそのまま名前になっている郷土料理もあります。例えば、福島県の「ざくざく」。里芋や大根、ごぼうなどを煮干しのだしで炊いた秋の煮物で、野菜を“ざくざく”と切る音からその名がついたと言われています。沖縄県の「しりしり」は、人参をせん切りにして炒め、カツオ節や塩で味付けした料理。専用の調理器具(シリシリ器)で人参をすりおろすときの“シリッシリッ”“すりすり”という音が名前になったという説があります。福岡県の「だぶ(らぶ)」は、さいの目に切った根菜類や鶏肉を煮込み、とろみをつけた汁物で“だぶだぶ”していることが由来とされていますし、太めの中華麺を揚げ、キャベツやキクラゲなどの野菜がたっぷり入ったとろみのある鶏ガラベースのスープをかけた山口県の「ばりそば」は、麺を食べたときに“バリバリ”という音がすることから名付けられたとか。
 郷土料理以外にも、煮込んでいるときにする“ぽたぽた”という音、箸でつまみ上げたときに煮汁が“ぽたぽた”と落ちる様子から名前がついたとされる「ぽたぽた煮」もあれば、白菜やキャベツなどの葉野菜を、歯応えがないほど軟らかく煮込んだ料理を「くたくた煮」などと呼んだりもします。料理のプロセスや特徴だけでなく、おいしさ感を伝え、仕上がりの状態まで教えてくれる「オノマトペ料理名」。見栄えや食感にこだわるお国柄らしい料理名です。

猛暑と規格外野菜

 猛暑日が続くと思えば、一転して豪雨。被災した方々への思いは尽きることがありません。異常気象は、被災地のみの話ではなく、必ずや野菜の品質低下や生育不良による価格の高騰を招きます。
 天候不順による農作物の被害とその対策。“食のトレンド情報”では、2015年[訳アリ・規格外食品]というキーワードで挙がっています。猛暑や大雨の影響で野菜や果物が不足し価格が上昇するケースが増え、割安な規格外品へのニーズが高まりました。有機農産物を宅配する「大地を守る会」(当時)は“規格外野菜・果物”のシリーズを新たに売り出し、「オイシックス」(当時)は形状が規格外の“ふぞろい野菜”を通常商品より3割安く販売。スーパーや生協でも[訳アリ・規格外食品]の取り扱いが定着し、生活者のニーズを掴みました。天候に関わらず当時、生産量の2、3割程度が規格外野菜・果物になるとされ、農家は自ら消費するほか、食品や飲料など加工用の原料に回したり、廃棄したりすることが多かったのです。が、ちょうどこの頃から、地域の直売所や「道の駅」などでそれらの野菜を割安に販売する事例が増え、さらには中高年層のネット通販利用が大きく伸びる中、世帯年収が少ない層に売れたのが、大きく曲がったきゅうりや傷が付いたりんご、割れた煎餅、チーズケーキの切れ端といった“訳アリ商品”。流通に乗せてすらもらえなかった野菜や果物、加工食品が一気に注目されました。
 24年には、オイシックス・ラ・大地(当時)が高温の影響で4倍の重さに育った規格外パプリカを“横綱パプリカ”、着色にばらつきが出てしまったパプリカを“カメレオンパプリカ”と銘打ち、“猛暑順応ベジ”として発売。種苗メーカーは、暑さに強い野菜、短期間で生育する性質で猛暑や台風の時期を避けて栽培することができる野菜などを次々に開発しました。一方米は、高温耐性品種の作付割合がこの10年で10%増えています。
 機を逸したかのように思える地球規模での温暖化。他方、猛暑にいち早く対応しようとする提供者の知恵と生活者の柔軟さ。まさに真夏の雑草のごときしなやかな力強さを目の当たりにしている近年の夏です。

月見商戦

 今年も【月見商戦】が始まりました。大将は何といっても「マクドナルド」。9/2から“月見ファミリー”の展開を始めました。今年は定番の”月見バーガー””チーズ月見”、朝マック限定の”月見マフィン”に加え、新作の“炙り牛すき焼き風月見”やリニューアル商品“北海道産バターとあんことおもちの月見パイ”などバーガー、サイドメニュー、ドリンク、デザートから成る全8商品をラインアップしています。
 大手で先陣を切ったのは「ピザハット」。8/24-11/1の期間限定で、”すき焼き月見ピザ”などを販売、続いては「ケンタッキーフライドチキン」が8/26から”とろ~り月見”シリーズ全5種を数量限定で発売しました。今年初めて参入したのが「デニーズ」。9/3から“お月見フェア”を開催。“黒麺×ガーリックライスの満月仕立て”“月見バーグ&オムライス”などに定番アレンジメニューを加え8品を提供しています。その他、「モスバーガー」「ゼッテリア」「ドミノ・ピザ」「吉野家」「びっくりドンキー」「ココス」「ペッパーランチ」「焼き肉ライク」「プロント」「コメダ珈琲」「ビアードパパ」なども月見関連のメニューを提案。変わったところでは、「ゴディバ」は満月とうさぎをデザインしたパッケージで“オータム コレクション”を、「ロッテ」は“雪見だいふく”を月見仕立てにした限定商品を登場させています。
 日本人が最も好きな季節は秋、次が春です。二季化によって2つの季節がどんどん短くなっていますが、日本人はやっぱり季節感が大好き。特に、旬や行事に合わせた食によって季節感を堪能することを渇望する国民性があります。キユーピーが2024年9月に実施した「お月見に関する意識調査」では、月見の認知度は非常に高い一方、行事としての実施率は限定的であること、さらに「食べたいもの」として“ハンバーガー”が団子に次ぐ2位に。「実際に食べているものは何?」と尋ねたら、きっと団子より“月見バーガー”でしょう。
 短くなった秋と春の季節感を感じにくくなっているからこそ、それをどんな風に感じさせ、楽しませることができるのかが、今後、食市場にますます求められます。季節感が大好きな日本人。たとえそれが、歪曲的・飛躍的解釈だとしても、季節の食として定着する可能性は大です。

味を決め、記憶に残す。[香り活用]

 2026年食市場のトレンドキーワードのひとつに挙げた[香り活用]。香りは、人間の感情や情緒を豊かにし、時にはコントロールするほどの力を持っています。それは、嗅覚情報が脳の感情や記憶を司る領域に直接伝わるという、他の感覚とは異なる特別な神経経路を持つためです。これを利用して、顧客の記憶に深く刻み込むことも可能で、よい印象を与えられれば好感度が高まるなど、大きな販促効果が期待できます。実は、香りを含めた[五感消費]および香りに特化したキーワードは、07年からなんと11回登場しています。[癒やしニーズ]が強まったときに多く登場し、香りが精神の安定に強く結びついていることが分かります。
 今年、[香り活用]を戦略として展開しているのが丸美屋食品工業です。香りにこだわった新ブランド「香りを楽しむふりかけ」を立ち上げ、今年2月、「スモークサーモン風」「牛トリュフ甘辛醤油味」の2種を発売しました。“香り”に特徴を持たせた新感覚のふりかけで、スモークサーモンの香りを付けたオイルを最後に回しかける“香り後がけ製法”や、フレーバーオイルを乳化、乾燥させて直径数ミクロン程度の小さな粒に閉じ込める“香り閉じ込め製法”などを採用。香りを際立たせるさまざまな工夫をし、商品に新たな価値を与えています。さらに8/6、新ブランド「香る炊き込み」シリーズから「山椒香る炊き込みごはんの素」「柚子香る同」を発売しました。上品で心安らぐ和の香りを手軽に楽しめる、“香り”を主役にした新しい切り口の商品として開発。香りと味のバランスを追求して何度も試作を重ねたといいます。
 一方、味の素は8/22、中華合わせ調味料「Cook Do(クックドゥ) 極(プレミアム)」シリーズから「華辣(ホアラー)麻婆豆腐用」を発売します。購入者の調査で、鮮烈な辛さやシビレによる高揚感だけでなく、落ち着いて香りに包まれながら満たされたいというニーズも分かったことから、華やかな香りと奥深いコクが特徴の“華辣”を提案します。
 おいしさの8割は嗅覚由来と言われ、特に食べ物や飲み物を味わうとき、のどの奥から鼻腔へと抜ける香り“レトロネーザルアロマ”が大きく関係します。味を決め、記憶に残す“香り”の魅力は、食市場でもっと生かされていいのではないかと思います。

日本オリジナル!? 菊形のマドレーヌ

 最近、お菓子作りを再び始めました。実家じまいをしたときに持ち帰った製菓道具は、小学生から高校生にかけて、一時期はそれこそ寝食を忘れて夢中になっていたときに使っていたものです。
 パイやケーキの型に残る焼き焦げやキズが、当時を思い起こさせます。中でも20個ほどある鉄製のマドレーヌ型は、お菓子作りを始めたばかりの頃によく使っていたもの。グラシン紙をかぶせて生地を流し込んで焼きます。グラシン紙には欧文の古い書体で“madeleine”と印刷されていて、フランスもイタリアも、何なら米国も一緒くたのイメージしか持てなかった頃、その文字が飛び切りおしゃれに感じたものです。今では、マドレーヌと言えば貝殻の形が一般的ですが、昭和の時代は周りが波になっている丸い菊の形に象徴されていました。デパートや町のケーキ屋さんで売られていたマドレーヌも、皆同じ形です。
 なぜ今は貝殻形で昭和は菊形なのでしょう。AIによると、聖ヤコブの象徴であるホタテ貝の形を、巡礼者を労うお菓子に用いたという「巡礼者のシンボル説」や、考案者とされる少女マドレーヌが、厨房にあった本物の貝殻に生地を流して焼いたという「本物の貝殻を使った説」など諸説ある中、最も有力なのは、中世にキリスト教の聖地を目指す巡礼者たちが道中でホタテ貝をお守りや食器として持ち歩いていたことや、発祥地ロレーヌ地方が巡礼路の途中だったためホタテ貝を模して作られたという説。ではなぜ、昭和は菊形だったのか。アーモンドを使うフランスの焼き菓子「パン・ド・ジェーヌ」が日本に伝わった際、形や生地が似ていたマドレーヌと混同され、もともと日本にあった菊形の木型や金属型がマドレーヌを焼く型としても使われるようになったからとか。「パン・ド・ジェーヌ」は、周囲に波形の溝があるマンケ型で作るそうです(一社 日本洋菓子協会連合会HPより)。とはいえ、私は今だかつて「パン・ド・ジェーヌ」なるものを、食べたことも見たこともありません。この説、本当かしら?
 菊は天皇家の紋章。菊の形は、和菓子の型や和食器にも広く用いられています。因みに、菊形のマドレーヌは日本オリジナルとか。昭和の日本人である私は、鉄製の菊型でマドレーヌを焼き続けようと思います。

2019年軽減税率導入時の外食・中食事情

 2027年4月から2年間、食料品の消費税率を1%に引き下げる基本方針が閣議決定されました。思い起こせば19年。消費税率が8%から10%へ引き上げられた際、軽減税率が導入されました。外食店は、テイクアウトやデリバリーに活路を探り、さまざまな取り組みが展開されました。弊社は、[外食の中食化]というキーワードでそれらを紹介しています。
 当時、早々にデリバリー市場に参入した外食店の中には、売り上げの9割以上をデリバリーで占めるほどになった店も。成功例の多くは、家では作れない本格的な料理、冷めてもおいしい料理、サラダなどもともと冷たい料理を提供していた業態。精肉と野菜をアソートして“おうち焼肉”をサポートする焼肉店のサービスも人気になりました。
 中食市場のトレンドとして忘れてはならないのが、外食企業によるテイクアウト専門への参入激化。中でも、ワタミの「から揚げの天才」や吉野家ホールディングスの「からから家」、串カツ田中ホールディングスの初のテイクアウト店などなど、揚げ物専門店の進出が止まりませんでした。そのほか、今では地方にまで広がった“キッチントラック”、ウーバーイーツや出前館といった“食の宅配代行サービス”、実店舗も自前の配達システムも持たない“ゴーストレストラン”なども、軽減税率導入と翌年の新型コロナウイルス禍を追い風に急拡大したビジネスです。
 食料品の消費税1%が生活者に与える店内飲食の割高感は19年の比ではなく、[外食の中食化]が進むことは確実でしょう。すかいらーくグループなど大手外食企業は、既に中食強化の動きを始めています。因みに19年当時、すかいらーくグループは宅配の新システムを導入。過去の注文履歴をAIで分析し宅配需要を10分単位で予測するほか、配達ルートを最適化して配達時間の短縮化を図りました。過去の経験を踏まえたうえでの先手必勝戦略。メニュー開発も含めた27年の挑戦に今から期待しています。

サプリメント。錠剤ではなく食品から摂りたい日本人

 2015年4月に発売されたUHA味覚糖の「UHAグミサプリ」が10年越しのヒットを遂げているそうです。“美容と健康のサポート”“機能性表示食品”など 3カテゴリーから成り、26年5月時点で上市されている商品は29種類。美容や健康に関心があるものの、サプリメントを手に取るまでには至らない“ズボラ”な若年層に刺さったようです。私が講演でいつもお話しするのは、「日本人は栄養を食品や飲み物から摂りたいという意識が強い」ということ。サプリメント大国、米国のように錠剤で済ましたほうがラクなようにも思えますが、そうはいかないのが日本人です。
 例えば、コーヒーに機能性を付加した商品が多いこともその一例。ダイドードリンコが発売した機能性表示食品のスティック型インスタントコーヒー「スマートブラック」は、腹部の脂肪、食後血糖値、コレステロール対策という3つの効果が特徴。MEJ(東京・港)の機能性表示食品「C COFFEE PREMIUM」は、脂肪の分解を高めて肥満気味な人の体重や腹部脂肪を減らすのを助ける機能と、便通改善効果が報告されています。一方、サプリメントは「続けるのが難しい」「飲み忘れる」といった声があるのも事実。加齢によりぼやけた視界をくっきり改善し、低下する記憶力の精度向上をサポートすると謳う、ユメミル(福岡・福岡)の機能性表示食品「ひろがるコーヒー」は、コーヒーなら毎日欠かさず飲んでいる人が多いことから開発されました。
 今年トレンドキーワードに挙げた、[サプリウオーター]も同様の理由で注目すべきカテゴリーです。中でも、サントリービバレッジ&フードがトクホ茶ブランド「特茶」から発売した機能性表示食品「特水」は、トクホ・機能性表示食品がほとんど存在していない水カテゴリーにおいて、内臓脂肪の低減といった新たな価値を提案。特茶ブランドは40~50代の男性層がメインターゲットですが、特水は若い世代や女性にもよく飲まれているとか。
 ターゲットとニーズを分析するマーケティング力と、機能性成分を付加してもおいしく作り上げる技術力。両輪があってこその成功を象徴する話です。