ファミリーマートにバーが出現!

 渋谷警察署の近くにあるファミリーマート渋谷明治通り店内にバーができました。大きめの店内の入り口付近に簡単なパーテーションと透明なカーテンで仕切られた一角。L字型のカウンターに7~8席のバースツール、歩道に面した正面棚には洋酒のボトルが並び、カウンターの中には白シャツに黒ベストと黒のチョータイ姿のバーテンダー。背後にある売り場とコンビニ特有の照明を気にしなければ、フツーのバーです。
 バーの名前は「お酒の美術館 渋谷明治通り店」。全国に「お酒の美術館」を展開する「のぶちゃんマン」とファミリーマートがコラボし、8/29にオープンしました。「お酒の美術館」のこだわりは、希少なウイスキーやブランデーの品揃え。オールドボトルの品揃えは業界随一とか。価格設定がカジュアルなことも、ウリです。
 おつまみは、ファミリーマートでの調達が前提。カウンターには「ファミチキ専用」と書かれたブレンデッドウイスキーの小さな樽が置いてあり、ファミチキ購入を前提にしたオリジナルのハイボールを500円でいただけます。クセのないすっきり系の味わいは、ちょっと油っぽくて軟らかな肉質のファミチキによく合います。
 訪れたのは、金曜日の夜。渋谷ならではでしょう。旅行客ではない外国人のグループとビジネスマンの二人連れ。この二人の内のひとりは、すっかり常連客のよう。ここの雰囲気が面白いと、遠くに住む友人を呼び寄せたと言います。確かに、テーブルチャージがなく、1杯500円~の価格設定、明るい店内は、バーに慣れていない人には敷居が低く、そうでない人には面白く映るのでしょう。ただひとつ気になるのは、お酒の品揃え。ブランデーやウイスキーは充実しているのに、ラムやジンといったスピリッツ系は弱い。ファミリーマートが、集客と売り上げアップという相乗効果を狙っているとしたら、ポイントがずれていると思います。

天候不良と野菜調味加工食品

 夏に予想外に気温が上がらなかったり、今年のように酷暑になったり、降雨が少なかったりすると、決まって農作物の価格は上がります。そこに、食品価格の値上げや先行き不安などの消費者心理が働くと、必ず救世主のような調味加工食品が登場します。
 「茅乃舎」ブランドを展開する久原醤油が9/1に発売したのは、「小松菜のだし卵あんかけ炒めキット」。小松菜と豚バラ肉を炒めて卵でとじたあんかけ料理が作れる商品で、価格が安定している小松菜に着目して開発されました。
 久原醤油は昨年も9/1に秋冬商品としてもやしを主役にする「塩とんこつ もやしのうま鍋」を発売しています。“もやし2袋で美味しい”と謳う鍋つゆで、濃厚でまろやかなトンコツスープと塩をベースにペッパーの爽やかな辛味を利かせてあり、もやしを際立たせる味はもちろん、ざるに高々と盛り付けたもやしのイラストを配したパッケージのインパクト、コストパフォーマンスの良さなどが評価され、2月を待たずして売り切れてしまいました。
 小松菜ももやしも、一年を通して価格が安定している野菜。スーパーの店頭では、小松菜はほうれん草の倍近い量で価格は半分。小松菜が比較的暑さに強い野菜だからです。でも小松菜は意外と応用できる料理が少なく、小松菜をメイン素材として利用する商品はなかったような。一方、味の素は8/19、「Cook Do(クックドゥ) きょうの大皿 <豚バラほうれん草用>」を発売しました。栄養価が高いほうれん草を子どもに食べさせたいと考える生活者に向けて開発。ほうれん草を使った主菜用調味料が市場にないと考えた点も開発のきっかけになっているようです。
 天候不良による野菜の不作や高騰が加工食品の売り上げに直結する昨今。一時は、運を天(候)に任せることになってしまうのも、無理からぬことかもしれません。

求ム!豆腐をヘルシーな副菜にする加工食品

 植物性のタンパク質源として重宝される豆腐。でも食べ方がワンパターンになりがちな食品でもあります。冬は、鍋料理の素材として楽しむ機会も増えますが、ひとり暮らしではなかなか。
 豆腐を利用する加工食品の筆頭は「麻婆豆腐」でしょう。ほかにも、「スンドゥブチゲの素」「肉豆腐の素」などの商品がありますが、いずれもちょっと重めの主菜系。副菜、箸休めとして手軽に楽しめる加工食品は意外と少ないのです。
 そう思っていたところ、Mizkanが9/1、豆腐を加えて作るスープの素を発売しました。「札幌味噌豆腐スープ」と「濃厚豚骨魚介豆腐スープ」で、いずれも有名ラーメン店が監修しています。開発に関しては、“豆腐でヘルシーに食事を済ませたいけど物足りない、といったジレンマがある。一品料理として満足感を感じてもらえる味わいに仕上げた”とのこと。この加工食品で仕上げた豆腐のスープが“豆腐をヘルシーにいただきたい”生活者のニーズにマッチしているのかはいささか疑問ですし、豆腐一丁(300g)と豚バラ肉、キャベツを用意するのは、やはりひとり暮らしには負担が大きい。
 私が、今でもいい商品だなと思っているのは、アスザックフーズが通信販売限定で2020年から順次展開した商品、「ふわとろあんかけ豆富の素」「豆腐と和える 白和えの素」「肉豆富の素」です。ひとり暮らしの味方“三連パックの豆腐”を1個ずつ使え、フリーズドライなので保存性が高く具材感があり、「豆腐と和える 白和えの素」なら3個入りで税込540円。三連豆腐が1個120円として220円で手軽に豆腐の副菜ができ上がります。この商品、ブラッシュアップしたらもっと面白い商品になると思います。

日本の「アニマルウェルフェア」

 アニマルウェルフェア。2019年、翌年に開催される予定だった東京オリンピック・パラリンピックを控え、世界標準の資材調達が求められ、機運が一気に高まりました。
 アニマルウェルフェアのひとつに、鶏を狭いケージに入れず、自由に動き回れる状態で飼育する方法(国によって規定は異なります)があります。そうして育てられた鶏が生んだ卵は、「平飼い卵」と呼ばれます。19年当時、欧米では動物愛護の観点から、多くの外食チェーン、スーパーマーケットで切り替えが進んでいて、米国内では平飼い卵への移行を発表した企業は300社以上。英国では、既に平飼い卵の量がケージ飼い卵の数を上回っていました。一方、日本では97%以上の養鶏場がケージ飼いの状態でした。
 それから4年、今はどうなっているのでしょうか。イケアやスターバックスなど海外に本社を置く企業の動き出しは早く、イケアはすでに100%平飼い卵に移行済み、スターバックスは米国では20年に完了し、日本においては移行中とのこと。外資のホテルや外食企業は25年を目標に進めていますし、個人経営の外食店では平飼い卵に切り替え、それをアピールしている店も増えてきました。ただ大手のスーパーマーケット、外食企業、食品会社においては、移行中という話も聞こえてはきません。一方、キユーピーは8/17、平飼い卵を使用したマヨネーズを販売ルートを限定して発売しました。平飼い卵を求める生活者向けの商品で、キユーピーは“多様な食のニーズに応えた商品・サービスを開発し、新たな食の選択肢を提案する”ためと言います。平飼い卵は、安全安心や環境保護、機能性を目的として啓蒙される食品ではありません。あくまでも動物愛護の観点から賛同されるべき食品です。なんとなくミスマッチを感じるのは、私だけでしょうか。
 新型コロナウイルスの世界的感染拡大により東京オリンピック・パラリンピックが1年延期され、同時にインバウンドへの対応もなかなか進みませんでした。日本のアニマルウェルフェアは今後どのように進むのか。その根源にある思いはどこに落ち着くのか。気になります。