米国の肥満と食糧問題の矛盾

 この夏、久しぶりに米国に行きました。今回は、車で田舎町を周りました。そのためか、強烈に心に残ったことがあります。それは、米国人の肥満です。いつもは、ニューヨークやロスアンゼルスなど都会を中心に滞在していたので、それほど気にならなかったのです。もちろん、都会にも肥満体形の人はいますが、地方の方が圧倒的に多いと思います。
 女性の場合はまずお尻。丸いクッションを二つつなげたような大きなお尻は、日本では見たことがありません。男性はすべてに大きく、まさに大樽。そんな体形の人たちが珍しくないのです。面白いことに、グループ、カップル、家族、皆同じような体形です。やはり食生活が共通だからでしょう。
 レスラントで提供されるメニューは、相変わらずのボリュームです。私には多くても、米国の大きな体の人には適量なのだろうと思いきや、料理を残しパックに詰めて持ち帰る地元の人の多いこと。店側も慣れたもので、食事が終盤に近付いたテーブルには、持ち帰り用の包材がいるか聞いて回ります。冷めたパスタや具があらかたなくなったタイカレーを、彼らは家で食べるのでしょうか。間食として食べるのなら肥満の原因になるし、捨てるのならもったいない話しです。
 肥満が原因の疾患が医療費を増幅させ、国の経済を圧迫している米国。地球人口の増加で近い将来食料不足になると、人造肉やタンパク質代替食品の開発に余念のない米国。この矛盾を、レストランでの光景が端的に物語っています

米国で拡がる植物性ミートが日本でも

 食糧不足や地球環境への懸念、動物愛護、ベジタリアンの増加、ヘルシー志向の広がりを受け、肉や魚以外のタンパク源への関心が、世界的に高まっています。中でも米国では、植物性ミートの開発が盛んで、普通の肉と遜色のない味わいのレベルにまで達している商品が、既に一般に販売されています。
 近年米国で開発されている植物性ミートは、従来の大豆で作られたベジタリアン向けパティとは異なり、味や食感、香りなどをできる限り本物の牛肉に近付けているのが特徴。食品ベンチャーの「インポッシブル・フーズ社」が開発した植物性ミートのパティは、現在、全米50店以上のレストランで提供され、昨年夏にはロサンゼルス発の高級バーガーチェーン「ウマミ・バーガー」のメニューにも加わりました。また、同様の植物性ミートを開発した「ビヨンド・ミート社」は、ホールフーズなど小売店を通じた販売経路に注力していて、同社のバーガー用パティ“ビヨンド・ミート”は全米3000以上の小売店で扱われています。またこのパティを使用するビーガン向けの新しいハンバーガーチェーン「ネクスト・レベル・バーガー」は、西海岸で急速に拡大中です。実は数年前、三井物産は「ビヨンド・ミート社」に出資をしていて、今年、日本に輸入。高級外食店を中心に売り込みを開始します。
 日本の食市場においては3月、オランダの最高級フェイクミート‟ベジタリアンブッチャー”を使ったメニューを提供する豚焼肉専門店「BUTAMAJIN池袋店」がオープンしています。‟ベジタリアンブッチャー”は、国内で流通する大豆ミートとは一線を画すクオリティで、見た目、味、食感などすべてが本物の肉と遜色がないといいます。ベジタリアンやビーガンが多いインバウンドが続々と来日する2020年に向けて、日本においても植物性ミートのニーズはどんどん高まっていくことでしょう。

“一汁一菜”という考え方

 料理研究家の土井善晴氏が上梓した「一汁一菜でよいという提案」をきっかけに、”一汁一菜”が話題になっています。
 “一汁一菜”とは、ごはんを中心として、汁(みそ汁)と菜(おかず)それぞれ一品を合わせた食事のスタイル。毎日献立を考え、料理を作るのが苦痛だという生活者に対して、土井氏は、「おかずをわざわざ考えなくても、みそ汁を具だくさんにすればそれで充分」と提案しています。
 もともと日本人の食事は、”一汁一菜”でした。ご飯にみそ汁、お漬物(一菜)だけ。よく言われる「一汁三菜」は、料亭で提供される懐石料理を家庭向けに簡略化したカタチです。土井氏は、このままでは家庭の和食がなくなってしまうと危機感を持ち、”一汁一菜”なら実践しやすいのではないかとの思いから提案したといいます。
 確かに、豚汁のように肉も野菜も入った具だくさんのみそ汁は、おかずになります。冷蔵庫の余り野菜で作れ、そうすることで、みそ汁の具について新たな発見もあるでしょう。何より、生活者は肩の荷を下ろせます。
 ただ、問題もあります。具だくさんと言えども、摂れる食品の数が限られること。特に、タンパク質は摂りずらいと思います。また野菜をたくさん摂ろうとすると塩分の摂取量が増えてしまうことも心配です。
 献立が思いつかない、料理の時間がない、料理をしたくないなど、そんなときのたまの避難措置として”一汁一菜”の発想を取り入れるのがいいと思います。
 このブームに早速乗ったのは、日清食品。8/6、和食の新しい形“ファストフード和食”を提案するカップ入り創作雑炊シリーズ「日清 日本めし」から、“一汁一菜”を採り入れた「鶏つくね豚汁めし」を発売しました。

夏休み。大変なのは、子どもの昼食

 「夏休みは、大変!」。お母さんたちの声です。学校が休みになり、子どもの昼食問題が始まります。
 オイシックス・ラ・大地が、首都圏在住の幼児または小学生の子どもを持つ女性を対象に実施した調査では、「子どもが夏休みの時期は普段の生活より“大変”“疲れる”“憂鬱”と感じる」人が75.2%いました。理由は「家族に食事を作る回数が増えるから」がトップで、「普段の生活に比較して、特に負担がかかる家事」は「昼食の調理」が最多。「お弁当作り」と合わせると、67.6%が該当すると答えています。
 まさにその通り。私の場合、息子は保育園に通っていました。朝早くから、夜遅くまで預かってくれる保育園に頼り切っていましたから、小学校に上がった瞬間から、まさに育児が一変したような気がしました。1年生は帰宅時間が早く、土曜日はお休み、もちろん夏休み期間は学校がありません。放課後や夏休みは学童保育に行かせ、お弁当を持たせました。学童保育がお休みの日は、昼食をどうしようかと悩んだものです。
 私は、スーパーやコンビニの弁当・惣菜開発の7、8月のテーマに「子どもの昼食」を必ず挙げます。なかなか採用していただけませんが、自分が困っていたので、身につまされるのです。成長期に必要な栄養素がバランスよく整えられた子どもが好きな料理が詰まったお弁当なら、購入する価値があります。そしてそれが、“手作りしていない”“手抜きでは”と考えてしまいがちなお母さんの“後ろめたさ”を払拭する理由になります。楽しい夏休みを家族みんなが楽しめるよう、家庭の食をサポートする商品がもっともっと必要です。