料理SNS「Snapdish」を運営するスナップディッシュは、ユーザーの投稿を基に2024年の「料理SNSトレンド大賞」を3つ選出。そのひとつに「電鍋」を挙げました。「電鍋」とは、台湾の総合電機メーカー、大同公司が販売している、“炊く”“煮る”“蒸す”などの調理を一台で行える炊飯器兼鍋製品。ここ数年、自主的に「電鍋」の投稿を行いコメントのやり取りをする動きが活発に行われているとか。
「電鍋」は、「2020年 食市場のトレンド」講演でも取り上げています。忙しい生活者のニーズは、時間を節約する「時短」という考え方から、もっとほかの大切なことをするための時間を作り出す「時産」という価値観に変わっていると予測。「時産ニーズ」に繋がるキーワードのひとつとして「時産家電」を挙げました。この年、子育て世帯や共働き世帯に売れたのが、“ほったらかし家電”です。自動調理メニューを65種類搭載した電気圧力鍋や、新メニューをどんどん覚えてくれる無線LAN搭載の自動調理鍋などと一緒に紹介したのが、「大同電鍋」です。台湾では嫁入り道具の一品として選ばれたり一家に一台あるといわれたりするほど普及している国民的家電は、当時、どこか懐かしくレトロなデザインが注目され、シンプルな仕組みで使い勝手がいいと口コミで広がりました。
「時産ニーズ」に派生するもうひとつのキーワードは「進化系料理キット」。料理の時間を節約したいと思う反面、「“料理をしている実感”をもっと持ちたい」という生活者のニーズに応え、新たなコンセプトの商品が登場。料理経験や技術がそれほどなくても、短時間で手作りの楽しさ、充実感を味わうことができる料理キットが、Oisixブランドから発売されました。
24、25年連続して弊社が取り上げたトレンドキーワードに、「プロパ(=プロセスパフォーマンス)志向」があります。「時短」を求めることと、じっくり時間をかけたいことの二極化が鮮明になっていて、中でもプロセスを楽しみたいという欲求は大きくなっているというキーワードです。20年の「時産ニーズ」と同じです。
月: 2025年1月
感謝!「食のトレンド情報」vol.1000
「食のトレンド情報」Excel版は、配信1000回を迎えました。これもひとえに会員の皆さまのご厚情の賜物と心より感謝申し上げます。
スタートは1999年。ある食品会社の依頼で始まりました。新聞や雑誌から食の情報を集めてほしいという内容です。当時、HanakoやDIMEのほか、現在は休刊しているChouChou、Olive、東京ウォーカーやTOKYO★1週間といったさまざまな雑誌が、街と食の情報を頻繁に掲載。食品商業や月刊コンビニなどの業界誌も多数出版されていました。テレビのワイドショーや情報番組は、毎日のように食の情報を取り上げていて、その内容もまとめてほしいと要望されました。ある特定の食品と健康効果を関連付けた内容が放送されると、その食品があっという間に売り場から消えるという現象が起こるほど、影響力が大きかったからです。特に、「午後は○○おもいッきりテレビ」(日本テレビ)と「ためしてガッテン」(NHK)は食業界に注目されていました。とにかく、誌(紙)面と画面に食の情報が溢れていた時代です。
2003年からは、それらの情報を基に食市場のトレンドをキーワードで表現。食市場を俯瞰で考察した「食市場のトレンド相関図」を作成し、講演を始めました。初回の講演は、「FOODEX JAPAN 2003(第28回国際食品・飲料展)」です。04年から現在の「食のトレンド情報」Excel版とほぼ同じ構成になり、同年12/6に配信したvol.1から数えて今回が1000回になります。22年1/1、もっと手軽に読みたいとのご要望にお応えして内容をコンパクトにした「食のトレンド情報」Web版をローンチしています。
今回、1000回を記念して【食市場のトレンド相関図/2003-2024年】、毎年年末配信分に掲載される、その年のトレンドを振り返るhimeko’s VIEW【HITキーワードBEST10】を初回の13年から24年の12年分を添付いたしました。トレンドの流れを再確認していただければ幸いです。
今後も、ひめこカンパニー並びに「食のトレンド情報」をよろしくお願い申し上げます。
海外で抹茶はスーパーフード?
海外で、抹茶が大人気のよう。京都の日本茶専門店には、オープン前から外国人旅行者が並び、抹茶を何缶も買っていくとか。30g入り1缶、1万2000円、8000円などの高級な抹茶は、ほとんどが売り切れ状態。生産が追い付かない状況です。
抹茶人気の理由は、健康と美容。日本人が長寿で女性が年齢よりも若く見え、肌がきれいなのは、抹茶を飲んでいるからと思っているよう。抹茶を常飲している日本人は茶道関係者以外ごく稀だし、日本茶を淹れる人もどんどん減少しているのだから、この説は間違っていると思いますが、日本茶が健康にも美容にもいいことは確かです。
茶の木に直射日光が当たらないように覆いをかけ、甘みとうま味を十分に溜め込んだ新芽だけを摘み、蒸気で蒸した後、乾燥させ、茎や葉脈などを除いて軟らかな茶葉のみを選別。これを石臼で挽いたものが抹茶になります。機械で粉砕する方法もありますが、機械自体が熱くなり、茶葉が変質して色や香りが落ちるといいます。24時間石臼を回し続けてもできる量はほんのひと山。高級抹茶は量産できるものではありません。海外では転売も行われているようで、価格は高騰。円安が追い風になり、外国人旅行者には安く手に入れられるスーパーフードになっているのかもしれません。できれば、茶道という日本固有の文化に興味を持ったり、ヒーリングなど精神的な効果を期待したりなどの理由で、深く長く愛していただけるとうれしいのですが。
昨年末、高校の同級生が自宅の茶室で茶会を開いてくれました。母の遺品となった茶道具をもらっていただいたのはずっと前のこと。その道具を使って私にお茶を点ててあげたかったという涙が出るほどありがたいお誘いです。が、私はまったくの不調法。足が攣って正座すらできぬ有様。目の前に置かれたお菓子を取ったら「まだ早い!」と一喝。お点前をいただくあいさつすらままならない。外国人に、文化だ精神だなどと宣う資格などない日本人です。
2025年、不安感が広がる食市場のキーワード
2025年が始まりました。例年以上に不安な気持ちでお正月を迎えました。不安感は年々強くなっています。
今年は、トランプ氏が再び米国の大統領に。世界中が彼の手腕(?)に戦々恐々としています。日本においては、円安がますます進んで食料品が値上がりするのではないか、米国への輸出品の税率が上がり産業が衰退するのではないか、増税路線が加速するのではないか。ますます激しくなる気候変動による農産物への影響も懸念され、私たち生活者にとって、心落ち着く1年にはなりそうもありません。
そんな状況を鑑み、私は、“2025年のトレンドキーワード”の決定に当たり、「身体と心の健康」と「癒やしニーズ」を柱にしました。先行き不安を感じる生活者が食に求めるものは、「健康に寄与し、心の安定をもたらすもの」。そして「無理のない楽しさ」です。
前者を反映するキーワードとして「骨活」「美活腸育」「エビデンス重視」「ウェルパ志向」「チューニングフード&ドリンク」などを、後者のそれとして「プロパ志向」「五感消費」「エモ消費」「背徳ウェルビーイング」「利他消費」などを挙げました。過去にも経済が低迷し、先行き不安感が広がり、節約志向が高まった年には、ちょっとした驚きや楽しさが得られる「五感消費」や、ヘルシー志向に疲れ、敢えて健康的ではないものを求める「アンチヘルシー」、心が動くか否かを消費行動の基準に置いた「マインド重視」、自他共に満足したい「共感消費」などのキーワードが挙がっています。
2/12の“スーパーマーケットトレードショー”を皮切りに2/14には日本惣菜協会主催の“フォローアップセミナー”など、今年もさまざまな会場で「2025年食市場のトレンド」講演をいたします。もちろん、「食のトレンド情報Excel版」法人会員の皆様には、貴社に伺って講演をさせていただきます。是非、最新の情報をお聞きください。