サンマの不漁と遅れる日本の認証取得

 今秋も、とっても悲しいことに、サンマが不漁です。実際、近くのスーパーで求めたサンマは、小さくて痩せていて。いつもはワタを粗塩に埋めて塩辛を作るのですが、ワタも小さくて作る気が萎えてしまいました。スルメイカも同じく不漁です。小さくて身は薄々。里芋と煮たらもっと小さくなって。味も見た目も寂しい煮物になってしまいました。
 サンマの漁獲量は、ここ数年で最も豊漁だった2014年の同時期の半分にも及ばないとか。各地で計画されていたサンマを味わうイベントも、主役のサンマ不足で取り止める自治体も出ています。海水温の変化や他国の漁獲量の増加などが原因ですが、先週号の“himeko’s VIEW”で取り上げたように、そもそも水産資源は、地球的規模で枯渇化が進んでいるです。
 そんな実状に対し、欧米では、サスティナビリティ(持続可能性)の機運が盛り上がっています。海に囲まれ、海の恵みをどの国よりも享受してきた日本人は、誰よりも先に取り組まなくてはいけない課題だったはずです。が、日本は、持続可能で適切に管理され、環境に配慮した漁業を認証するMSC認証など、世界的認証を外国に比べるとまだまだ取れていないのが現状。日本での認証は、京都のアカガレイ、北海道のホタテ、宮城のカツオ、ビンナガマグロの4つしかありません。
 取得に必要な事務作業やコストが膨大なこと、日本は欧米に比べて普段食べる魚の種類が多いことが理由になっています。加えて、手間とコストをかけても生活者や流通業者の認知度が低く、高い価格で売れるとは限らないことも積極的取得に水を差します。東京オリンピックに向けて、生活者への啓発を含めた、水産業者から小売りまで一体となった取り組みが必要です。

産業という側面だけでは測れない食の世界

  玩具販売大手の米国トイザラスが経営破綻しました(日本トイザらスは100%子会社ですが、今回の案件の対象には含まれていません)。ショッピングモールでよく見かける大型店には、子どものおもちゃからベビー用品、ランドセルや自転車、クリスマスの電飾まで、何から何まで揃っています。昭和の時代、街角には個人経営のおもちゃ屋さんがたくさんありました。それがトイザラスの上陸で、あっという間になくなってしまいました。そのトイザラスが今、ネットショップに押されているのです。
 ファストファッションのブランドとしていち早く日本に上陸したGAPも、経営不振に喘いでいます。ユニクロやしまむらといった和製ファストファッションからの圧力に加え、デザインが平凡過ぎるという批判もあります。誰でも着られる無難さがウケた時代もあったのですが。確かに、ZARA 、forever 21、 H&Mなど後発のブランドは、デザイン性を重視しています。ファストファッションの隆盛によって、街の洋品店は姿を消し、百貨店は集客に苦しんでいます。そして今、服にお金をかけたくない若者たちは、メルカリなどのフリマアプリで服を売ったり買ったりする時代。ファストファッションにも終焉説が流れています。
 食はどうでしょう。日本に初めてファミリーレストランとファストフードが登場したのが1970年。ブランドアピールとチェーン展開を武器に、外食市場という大きなマーケットを生み出しました。では今、おもちゃ屋や洋品店のように個人経営の店は消えたのかと言われれば、そうではありません。個人経営の喫茶店は減少しましたが、今また、店主のこだわりに惹かれて通うお客様が増えています。
 成長と拡大が常に求められ、効率化を図って生産性を上げなくてはならない産業としての外食。そこにはないもの、それと相反するものも同時に求められるのが、食の世界です。

店舗から玄関先へ。宅配に乗り出す小売各社

 商圏人口が細る中、小売各社は、生き残りのカギを握るのは“お客様の玄関先まで商品を届ける物流”だといいます。特に過疎化が進む地方では、自前で物流を手掛けてドライバーが接客にあたったり、物流業者を活用したりする取り組みが始まっています。
 北海道の「コープさっぽろ」は、宅配の小型拠点を道内各地に増やしています。商品の鮮度を守るだけでなく、配送時間を短縮する分、利用者とのコミュニケーションをより密にするためです。過疎化が進み独居老人が急増する中、生協の宅配は重要な社会インフラになっていて、配達員との会話を楽しみにしている高齢の利用者も多いといいます。
 一方ダイエーは、お客様の代わりに店内で買い物をし、それをお宅へ配送することを専門に担当する‟コンシェルジュ”を配置する新サービス「お買物らくらく便」の試験運用を始めています。利用対象者を60歳以上に限定。カタログによる受注は、ネットではなく、電話かFAXだけで。受注から梱包、配送までを同じ担当者が行うことで、利用者との個人的な関係を構築し、顧客の囲い込みに繋げるのが狙いです。
 買い物代行サービスとしては、シンガポールのベンチャー企業「オネストビー」が日本での展開を本格的に始めました。スマホを使ってスーパーや専門店の商品を注文すると、買い物コンシェルジュが商品を厳選し、それを配達員が最短で1時間以内に届けてくれます。アマゾンフレッシュなど、ネット展開の食品販売とは異なり、地域の店舗で購入する商品を届けるシステムなので、小売店と競合することはなく、むしろ販売量を上げてくれる存在と言えます。

ウェザーマーチャンダイジングは体感温度で

 先週後半、東京は10月並みの気温になりました。朝の空気はしっかり冷えていて布団を引っ張り出したぐらいです。
 気温を商品戦略に生かす手法が、ウェザーマーチャンダイジングです。冬から夏に向けて温度が高くなるにつれて売れるものを「昇温商品」、反対に夏から冬に向けて気温が下がるにつれて売れるものを「降温商品」といいます。例えば「昇温商品」には、カレー、炊き込みご飯、梅のおにぎり、和風きのこスパゲティ、冷やし中華、豆腐サラダ、酢の物、トマトのサンドイッチ、ビール、アイスなどが、「降温商品」には、天丼、のり弁当、ツナのおにぎり、ミートソース、カルボナーラ、煮物、おでん、カレーパン、肉まん、日本酒などがあります。暑くなると、冷たいもの、辛いもの、フレッシュ感があるもの、さっぱりとした味のものを求め、反対に寒くなると、温かいもの、コクがあるもの、食べごたえのあるものが欲しくなるようです。冬に備えて脂肪を蓄えようとしているかのようで、ヒトも自然の摂理の中に居ることを感じます。
 18度を切るとおでんが売れ始めるのは有名な話です。でも大事なことは、気温そのものではなく、体感温度です。35度近くの気温を度々体験している私の体は、30度を涼しいと感じ、20度は肌寒いと認識します。気温差があればあるほど体感は強くなります。この夏、豪雨の日が何日かありました。豪雨の前には、必ず急激に気温が下がります。天候不順な日が増える一方の日本。気温の変化を、季節や月で区切るのではなく、日々、そして1日の中で把握することが求められています。