自社の強みを生かした、良品計画の食品スーパー

 生活雑貨を手掛ける良品計画が、「無印良品 イオンモール堺北花田」(大阪府堺市)をリニューアル。同社初の「食」をテーマとした店舗として、3/20にオープンさせました。
 店舗面積は、4300㎡と従来店の10倍。無印良品の店舗としては、世界最大で、その半分を食品売り場に充てています。中でも注力しているのは、生鮮食品。野菜は産地にこだわり、鮮魚は産地直送、マグロの解体ショーも行います。精肉は、平積みのパック商品と対面販売のブランド肉の両方を販売。注目のグローサラント機能としては、季節の野菜を使った惣菜やサラダ、焼き立てのパン、デザートなど約30種類を、90分1300円の食べ放題スタイルで提供する「Cafe & Meal MUJI」と、ローストビーフ丼やジビエカレー、海鮮丼、店内で製造したヨーグルトやミックスジュースなどが楽しめる48席のフードコートを用意。対面販売型のカウンターも導入し、担当者が店内で販売している食材のアレンジ調理法なども教えています。
 良品生活が食品スーパー、特にハードルの高い、生鮮食品分野に積極的に乗り出しているのは、顧客の固定化と来店頻度の停滞という課題があるためです。現状、無印良品の雑貨やファッションが好きな層しか来店しないし、しかも来店頻度は月に1、2度が限界です。でも食品を販売すれば、客層は拡がり、生鮮食品や惣菜を強化すれば毎日でも来店してもらえます。
 残念ながら私はまだ行ってはいませんが、ネットの写真を見る限りでは、店内は無印良品らしいシンプルなおしゃれ感で統一されているようようです。ブランド構築の上手さと、無駄を省くことで商品の価値を上げた手法が、今のところ、食品販売にも生かされているのだと思います。

日本人が朝型に。24時間営業に転機が

日本人が‟早寝早起き”になっています。
NHK放送文化研究所の「国民生活時間調査」によると、1970年から一貫して減少傾向だった平日の睡眠時間は、2015年に下げ止まり、10年との比較では、平日の午前5時~7時15分に寝ている人が減った一方、午後10時~午前0時に寝ている人は増加しています。
 2008年、「朝市場」というキーワードが初めて登場しました。朝、出勤前の時間を利用してスポーツジムや英会話教室に通ったり、異業種交流会などに参加して人脈づくりに役立てたり、朝活に励む生活者が増えました。今後、働き方改革で残業がなくなり、かつ、個々の能力が問われる評価体系が推進されれば、‟朝型”へのシフトはさらに強まるかもしれません。
 人手不足や人件費の高騰から、コンビニエンスストアや外食店は、24時間営業を見直しています。生活者が朝型になっているのですから、当然です。すかいらーくは、24時間営業を中止しても売り上げが落ち込まなかったといいます。この結果を受けて、今まで、なんとムダなことをしていたのかと思ったのではないでしょうか。一方、急激に市場を拡大させている小規模のフィットネスジムは、24時間営業が基本です。深夜、起きている人の夜の過ごし方が、明らかに変わっています。それに気が付かず、チャンスロスばかりを恐れていたとしたら、失策といわれても仕方ありません。

天候不順で拡大する冷凍野菜市場

 少しずつ寒さも緩み、暖かい日が増えてきました。が、白菜やキャベツなど野菜の高値はまだまだ続きそうです。それに対応すべく、食品スーパーは、冷凍野菜の調達先や売り場を広げています。
 「いなげや」が新たに仕入れたのは、ペルー産のグリーンアスパラガスや中国産のほうれん草といった海外産の冷凍野菜。「サミット」も、国産の冷凍野菜が品不足になっているため、中国産のほうれん草と小松菜の冷凍品販売に着手しました。「ライフコーポレーション」は、ほうれん草や人参、キャベツなど約20品を冷凍ケースに入れて販売。「いなげや」も改装店2店舗で、青果売り場に平台の冷凍ケースを設置しました。冷凍野菜、特にほうれん草やブロッコリーなどは、柔らか過ぎて水っぽいと敬遠されることも多かったのですが、ここにきて、野菜の高値をきっかけに利用を始め、利便性や保存性に惹き付けられている生活者は少なくないでしょう。
 一方、野菜の種も改良が進んでいます。種苗大手サカタが開発したのは、葉が厚く寒さに強い白菜「冬月90」。カネコ種苗の白菜「おもむき」も、温度変化に対応しやすく、低温でも葉が枯れにくいという特性を持ちます。このほか、根が太く強風でも倒れにくいとうもろこし「ゴールドラッシュ90」や、暑さに強いトマト「麗月」、高温でもきれいな球体になるレタス「タフV」など、天候不順に対抗できる品種が相次いで登場しています。
 天候に関係なく野菜が安価に入手できる環境が整った時、生活者は冷凍野菜を選ばなくなるのでしょうか。

集客効果を狙って食市場でも広がる定額制

 スマホや音楽配信では当たり前になっている定額制。それが最近、食の分野にも広がっています。
 ガッツリ系ラーメンで若者に人気の「野郎ラーメン」。18~38歳の“野郎”世代限定という年齢制限はありますが、月額8,600円で3種類のラーメンから好みのものを1日1杯食べられます。月12杯で元が取れるので、3日に1度以上行けばお得です。西新宿のカフェ「コーヒーマフィア」は月額3,000円で、通常1杯300円のラージサイズコーヒーを無料で楽しめます、1日何杯オーダーしてもいいので、コーヒー好きの人なら、あっという間に元が取れます。フレンチレストランで定額制を導入しているのが、六本木の「プロヴィジョン」です。1名利用なら月額15,000円で、料理とワインなどのお酒を好きなだけ楽しめます。月に何度でも利用可能です。4名まで利用可能な月額30,000円コースもあります。利用回数が多ければかなりお得ですし、毎回会計をする手間が省けるので、接待が多い営業マンや部下とのコミュニケーションを大切にする経営者などには、人気のようです。月額性のフードシェアリングサービスも登場しています。「Reduce Go」は、月額1,980円で1日2回まで飲食店や小売店の余った食品を処分価格で購入することが可能です。
 客は、元が取れると思っているから定額制を選択します。一件、店側に損のように思われますが、一度来るか来ないかの客が、何度も足を運んでくれるようになるのですから、決して損だけではありません。客がいない店ほど寂しいものはありません。客が客を呼び、集客に弾みが付くこともあるでしょう。定額制は、生き残りをかけた外食店の集客の手段。それがファン化に繋がればという切望が、導入に向けて背中を押します。