繰り返すトレンドキーワード「漢方・薬膳」

 漢方を利用する若者が増えているようです。売れているのは、ストレス対策や免疫力アップが期待できる漢方薬。ドラッグストアを中心に販売するブランド「漢方セラピー」では、ストレスカテゴリーの売り上げが2017年から5年間で2倍以上に拡大したといいます。
 トレンドキーワードの相関図に初めて「薬膳」が登場したのは、03年。05年には「漢方・薬膳」がキーワードに挙がり、東京・青山にあった人気の中華カフェ「糖朝」では、白きくらげやナツメが入った薬膳デザートスープが人気に。「御茶ノ水 小川軒」や「日比谷松本楼」も薬膳カレーを提供しました。
 再び、「漢方・薬膳」が登場するのは、13年。“どうせ飲むなら、体によいほうがいい”と、アルコールにもヘルシー感を求める若者が増加。雑誌「Hanako」は、クコや桂皮などの生薬にりんごやオレンジなどのフルーツ、ワインや紹興酒を加えて作る“薬膳サングリア”を紹介しています。ロート製薬は同年4/26に開業した複合施設「グランフロント大阪 ナレッジキャピタル」内に、フランス料理と薬膳を組み合わせたレストラン「旬穀旬菜」を開店させました。東京では、若者に人気の街、三軒茶屋や吉祥寺に、漢方を使った薬膳酒を提供する“漢方バー”も出現。クックパッドは、漢方・薬膳の総合ポータルサイト「漢方デスク」を本格稼働。家庭の食事に取り入れやすい漢方・薬膳レシピや体質改善アドバイスの提供を始めました。
 次は、新型コロナウイルス発生後の21年。日々の食事で身体の内側から改善して真の健康を手に入れたいと考える生活者が注目したのが、漢方・薬膳でした。ドラッグストアで買える市販の漢方薬の売り上げは2桁以上伸長。ホテルのレストランは漢方・薬膳メニューを打ち出して集客を図り、薬膳料理専門の飲食店やテイクアウト・デリバリーに特化した薬膳スープ専門店がオープンしました。

徹底的に地産地消。高松の「おきる」

 仕事のため、高松市に宿泊。夕食を「おきる」でいただきました。仕事とはいえ、せっかく彼の地に行くのですから、話題のお店に行きたいし、その土地ならではのおいしさに出合いたいと思うもの。
 「おきる」は、地産地消をほぼすべてのメニューで体現している飲食店。店主の小島氏による創作料理がコースで提供されます。例えば1品めは「いりこだし」が利いた「食べて菜」のお浸し。「食べて菜」は、「野沢菜」と「広島菜」を親に持つ「さぬき菜」と「小松菜」のいいとこ取りをした青菜。アクが少なく歯切れのよい食感が特徴です。次は香川県産の「オリーブぶり」の刺身、しょうゆは香川の「かめびし」のものです。3品めは、香川県産のアスパラガス「さぬきのめざめ」を香川の海の塩でいただきます。4品めは、「オリーブ豚」のローストと香川の野菜を盛り合わせたサラダ。「オリーブ地鶏」「オリーブ牛」と、地元の食材が次々と。〆はもちろん、小豆島の素麺で作った「にゅうめん」です。日本酒は、香川の地酒が楽しめます。
 地のものを使うことをウリにしている飲食店は少なくありませんが、ここまで徹底しているのは珍しいと思います。しかも、どの料理もおいしくてボリューム満点。因みに「おきる」は香川県の方言で、「満腹になる」という意味なのだそう。コース料金は、4,400円。原価率はかなり高いのではないかと推測します。
 店主曰く「地元の人は“観光客のための店”と思っている」。行政や農業団体は、地元の産物を拡げたいと尽力しますが、住民でさえ知らないという現実は、至る所で見られます。「おきる」のような飲食店は、いろいろな意味で貴重な存在なのではないでしょうか。

町中華とSCの中華チェーン店

 “町中華”。いい響きです。かつては、商店街には必ずと言っていいほど存在していた庶民派の中華料理店。看板に「ラーメン」と大きく書かれていても、一通りの中華料理が楽しめる店が多かったと思います。
 私も町中華が大好きです。町中華といえば冷えた瓶ビール。餃子は必ず、次に炒め物。もしくは、ご飯ものか麺。本当は両方行きたいのですが、さすがにお腹が付いて来ません。ひとりでさっと飲んで食べるもいいし、複数人でちょっとした飲み会もできる。そんな使い勝手がいいところも、町中華の魅力です。
 商店街が寂れてしまうと、町中華も存在しづらくなります。その代わりのように、大きなショッピングセンター(以下SC)のレストラン街に中華料理のチェーン店があります。久しぶりにその1店に入りました。東京でも名が知れた大きなチェーン店。まだ店舗数が少ない頃、都心の店に入ったことがあります。本場感を演出した店内の雰囲気が楽しく、料理もおいしかったと記憶しています。が、SCのテナント店は、その印象を大きく覆しました。
 収益の上げ方が特殊な地方のSCのテナント店。それなりの苦労は分かりますが、料理の味が記憶と大きく違うのです。食材をケチっているわけではありません。味の落としどころを間違えていると感じるのです。大手チェーンですから、セントラルキッチンで合わせ調味料を作ったり、食品会社にOEMを委託したりしているでしょう。ならば、落としどころさえ間違わなければ、店舗の人員に頼らなくても安定したおいしさを提供できるはずです。
 当初は顧客の期待にはまっていた味が、また魅力と受け取られていた特徴が、立地や店舗の雰囲気、時の流れで異なるものに感じられることがあります。ズレが生じるのです。確認・検討・修正の繰り返しが、メニュー開発にも商品開発にも欠かせないのです。

餅菜(正月菜)と小松菜

 令和5年が始まりました。新型コロナウイルス発生後、初めての行動制限がないお正月。久しぶりに帰省した人も多かったと思います。
 食の産業化とともに地方色が薄まったといわれる故郷の料理。でもお雑煮は、その土地その土地、その家その家ならではの味が残っているのではないでしょうか。かつて女性は婚家の風習に倣い、その家のお雑煮に慣れていくのが当たり前でしたが、最近は、夫の実家では婚家の味で、自宅では妻が慣れ親しんだ味で、お雑煮を楽しむ家庭も多いとか。
 我が家の場合、私は静岡県西部(遠江国)、夫は愛知県東三河(三河国)。県は違えど、このふたつの地域は徳川家康で繋がっていて、食文化はかなり似ています。お雑煮は至ってシンプル。角餅に、カツオだしのすまし汁、具は、小松菜が基本。夫の実家が鶏を飼っていたので、鶏肉も入れます。違いは、東三河では小松菜が餅菜(正月菜)になること。
 年の暮れになると、スーパーには餅菜(正月菜)が並びます。結婚して20年以上。私は、お正月限定で、小松菜の呼び名を変えて販売促進しているのだと思い込んでいました。ところが夫曰く「餅菜と小松菜は違う。餅菜を育てている人から聞いたから確かだ」。そう言われてみると、小松菜に比べて火の通りが早く、今年初めて「あれぇ?小松菜じゃないぞ」と気付いたのです。調べてみると、古くから尾張地域で栽培されてきた小松菜に近い在来の菜っ葉で、小松菜よりも葉の色が淡く軟らかいのが特徴だとか。ただし、小松菜を餅菜(正月菜)として販売している場合もあるとのこと。
 思い込みは禁物。でも逆パターンで騙されることも間々あり。そんなときは、「1本取られました!」と笑い飛ばすことにして、もう少し素直な気持ちで物事に接しようと今年の誓いを立てました。