即食フロアを1階に配したダイエー江坂駅前店

 今年5月リニューアルオープンしたダイエー江坂駅前店(大阪)。気になったのは、通常、生鮮と加工食品など調理食材を配する1階を、即食フロアにしたことです。
 そこで販売されているのは、寿司やおにぎり、サンドイッチ、サラダ、煮魚、唐揚げといったパック惣菜と、その場で盛り付けられるカレーやみそ汁、店内で焼き上げた100円パン、冷凍食品やカップ麺などの加工食品です。23席のイートインスペースがあり、電子レンジ10台、湯沸かしポット2台が置かれています。店内で購入した惣菜やカップ麺をその場で食べることができます。冷凍食品が食べたければ、使い捨ての皿やフォーク、割り箸を無料提供してくれます。
 惣菜は、東京に比べると一様に安く、ボリュームもたっぷり。大阪の人をうらやましく思う瞬間です。100円パンはそれなり。女子にとってパンは嗜好品です。“100円だから”を感じさせてしまう商品ってどうなの?と思います。ちょうど昼食時だったので、イートインスペースは8割ほどの混み具合。おにぎりと惣菜、カップ麺とおにぎりなど、組み合わせはコンビニと変わらないようで、即食に力を入れているスーパーとしては、少し物足りなさを感じます。
 “健康のために毎日手軽に野菜を食べる“というコンセプトで、当初は1階に設置されていたスープベジコーナーが2階に移され、規模も商品アイテムもぐっと縮小されていました。せっかくトレンド性のある展開に挑戦したのに、商品力がなかったのか、展開方法を間違えたのか、あきらめの早さにちょっとがっかりです。そうそう、お酒売り場が2階にありました。今流なら、これは即食フロアでしょう。

サイゼリヤが展開する隣同士ワンコインのパスタ店

 サイゼリヤは10/17、茅場町駅近くにスープパスタのファストフード店「ズッパ・ディ・パスタ」をオープンさせました。メニューは、紙カップ入りのスープパスタとパンのセットで500円(税込み)のみです。スープパスタは、トマト系とクリーム系ときまぐれの3種から1種を、パンは、グリッシーニやフォッカチャ、大麦ブレッドなど4種を、小さな袋に自由に詰められます。席は、小さなカウンターと小さなテーブルのみで4人分しかありません。テイクアウトが基本です。サイゼリヤは、スープパスタと称していますが、どう考えても、パスタスープです。パスタ料理としてのボリューム感はなく、量も少なめ。4種のパンもすべてチープな味わいです。
 隣のビルには、やはりサイゼイヤが運営する「スパゲッティ マリアーノ」があります。こちらは7/7にオープンした、スパゲティのファストフード店です。以前は、「ズッパ・ディ・パスタ」の場所にありました。10種類ほどのスパゲッティ料理を470円から楽しめます。オーダーとともに、レジ横のオープンキッチンで調理開始。ソースをフライパンで加熱しながらスパゲッティと絡め、透明のカップに盛り付け。提供までの時間は、1-2分です。ランチは、これにポテトサラダとおかわり自由のドリンクバーサービスが付いて500円(税込み)。味も量も十分なレベルです。
 「ズッパ・ディ・パスタ」と「スパゲッティ マリアーノ」。隣同士、同じワンコインで満足感は雲泥の差。この実験におけるサイゼリヤの狙いは、何なのでしょうか。

火を囲んで和めるレストランが人気です

 今、キャンプのように薪火や炭火で焼き上げる料理を提供する外食店がブームです。7月には、東京・自由が丘に「Campfired Grill & Café THE BANFF」が、永田町に「Anchor Point」がオープンしました。
 私が注目していたのは、5月に代官山にオープンした「ファロ」。アクアパッツァ出身の樫村仁尊シェフが腕を振います。やっと先週末、行ってきました。店の造りはいたってシンプル。カウンターがぐるりと囲むオープンキッチンの中央に炉があり、ねじり鉢巻きにエプロン姿の樫村シェフが肉や魚介、きのこなどを炭火で焼き上げていきます。おすすめは、もちろん炭火焼き。ロースやタンを塊のまま焼き、切り分けて提供します。塊で焼いたポルケッタも外せません。備長炭の輻射熱を利用したローストは、とってもジューシーで、やさしく火を通した肉のうま味を存分に味わえます。
 樫村シェフは、直火でローストするというシンプルな料理がしたくてこの店をオープンさせたと言います。開店直後、前出のような類似の大型店が次々にオープン。正直焦ったそうですが、逆にトレンドに乗ったカタチになってしまったとか。
 先行き不安な今は、まさに癒しの時代。火を囲んで集える外食店に、お客様は温かな和みのひとときを求めているのかもしれません。加えて、分子ガストロノミーなど難しい料理が流行りました。素材の味を生かした焼きっぱなしのシンプルな料理へ、揺れ戻しが起こったのだと思います。

女子栄養大学。香川綾氏から引き継がれるバイタリティ

 先日、女子栄養大学、短期大学等を運営する香川栄養学園の新理事長就任パーティがあり、学校関係者や協力会社など、約350人が参加しました。
 我が母校である、女子栄養大学。創立者の香川綾氏が「すべての人が健康で、そして幸せであるように」という思いから、昭和8年、自宅を改造して作った教室で、約20人の生徒を集めてスタートさせた「家庭食養研究会」が始まりです。綾氏は、ビタミンB1を含む胚芽を残して精米することで、当時流行っていた脚気を予防できることを発見。食事だけで健康を取り戻せるという新事実は、綾氏にふるえるほどの感激を与えたと言います。綾氏は、「いつかは栄養学の大学を」という大きな目標を持ち続け、昭和10年には「栄養と料理」を刊行。戦禍を被りながらも学びを続け、25年には、念願の栄養学に特化した初めての大学「女子栄養短期大学」の設立に至りました。プロの料理を再現できる料理カード、計量カップ、計量スプーン、四群点数法など、綾氏が残した財産は、今も私たちの食と健康を支えています。
 パーティでは、多くの先輩たちが顔を揃えました。皆さん、女子栄養大学が世に送り出した、食と健康の世界における財産です。食事管理がしっかりしているからでしょう。皆さん、とにかく元気。年齢を意識させないのは、張り切った毎日をお過ごしの証拠です。会話に出てくるのは、会社を設立した、新しい本を出版した、子どもの食教育の場を作った、京都に勉強に行くなどなど、チャレンジと研鑽の話しばかり。少しだけ若い私は、そのバイタリティにただただ驚き、自身の怠慢さを恥じるばかりでした。