アリババのコンビニ市場参入は生活者ニーズを掴むため

 米国、ウォルマートの逆襲でも明らかなように、今、小売市場においては、ネットと実店舗の融合が不可欠になっています。ECがあらゆる買い物行動のプラットフォームとして機能するようになるEC3.0時代を迎え、実店舗はモノを売る場所ではなく、商品を知ったり、試したりなど体験する場所、ネットで購入した商品を受け取る場所に変わりつつあります。
 前回のコラムでは、アリババ集団が中国のコンビニ市場に参入したことを話題にしました。急成長する小売り大手の百聯集団と組んでの展開です。ネット市場の覇者が実店舗を構える意味は、顧客データの収集のためです。アリババ集団は、生活者が日々利用するコンビニこそ、真の顧客ニーズが拾える場と考え、即効性の高いデータ収集という観点において、コンビニに大きな魅力を感じているのです。中国において、ネット通販市場は近年鈍化傾向にあるとか。アリババ集団といえども、ネット通販に依存する経営体質に危機感を感じていても不思議ではありません。生活者のニーズを的確に掴むことができれば、さらなる需要の掘り起こしが可能となり、それはネット市場にも活用できます。
 ビックデータという言葉が注目されたのは、2013年。ローソンが「Ponta」を、ファミリーマートが「Tポイント」を導入したことで、コンビニ市場は、年間延べ150億人分の購買履歴が収集可能な「宝の山」に生まれ変わりました。それから6年。EC3.0時代の到来と共に、情報収集の場としても、再びコンビニが大きく貢献することになりそうです。

アリババ集団参入で、コンビニに新たな展開は

 日本では、コンビニ飽和論が再燃していますが、まだまだ出店の余地が多い中国では群雄割拠。そこに、ネット業界の最大手アリババ集団までもが参入。覇権争いに名乗りを上げました。
 小売市場の実店舗の現状は、中国も例外ではありません。先進他国と同様、ネット通販の拡大によって苦戦を強いられています。そんな中、唯一成長しているのがコンビニです。
 米国で生まれたコンビニが日本に上陸したのは、1974年。それから現在に至るまで、日本のコンビニは、固有の進化を続けてきました。最大の特徴が、各社開発に凌ぎを削る弁当・惣菜。中食市場伸長に大きな役割を果たしてきました。中国も同様、弁当・惣菜部門に注力することで、外食市場から客を奪う戦略が奏功しています。
 特に、武漢を拠点にする新興チェーン「Today」はサンドイッチやサラダなどの惣菜開発を、北京に拠点を置く新興チェーン「便利蜂」はレジ横の惣菜や弁当を充実させています。一方アリババ集団は、急成長する小売り大手の百聯集団と組み、3月、上海にコンビニ1号店となる実験店「逸刻EGO」を開業しました。巨大なオープンキッチンとイートインスペースを開設。でき立ての惣菜やパンをウリにしています。
 明らかに中国コンビニの見本となった日本勢も、ここにきて出店を急いでいます。ローソン、ファミリーマート、セブンイレブン3社の18年の純増数は約1100店に達しています。
 アリババ集団は、コンビニ業界にどんな旋風を巻き起こすのでしょう。オムニチャネルやシステムの導入などはお手の物でしょうが、“食の提供”という側面においての覇者にはなれるのでしょうか。従来の弁当・惣菜とは異なるコンビニの新たなウリを創造することはできるのでしょうか。もしそれができれば、即日本に逆輸入されることでしょう。

セブンイレブン、“地元の味”を武器に沖縄県に初上陸

 先週11日、セブンイレブンが満を持して沖縄県に初上陸。14店舗を一斉にオープンさせました。那覇市国際通りなど人が集まる場所に集中的に出店。海外からの観光客も狙っています。迎え討つのは、先に上陸した競合2社。1987年に1号店をオープンさせたファミリーマートと、97年に進出したローソンです。
 沖縄の人たちのセブンイレブンへの期待はかなり大きいようで、ニュース番組のインタビューでは、「セブンイレブンは(弁当・惣菜が)おいしいと聞いているから楽しみ」という声が多く挙がっていました。セブンイレブンもそれに応えるように、県内に製造工場を竣工。「ポーク玉子おむすび」「ゴーヤーチャンプルー丼」「じゅーしーごはん」「TACORICE」、沖縄そばを使った「島ナポリタン」、宮古島市産玄蕎麦を使った「もりそば」など、沖縄らしい商品をラインアップ。地元のお客様に求められる味についても、充分に研究しての始動です。
 一方ファミリーマートには、それを20年以上かけて続けてきた実績があります。加えて、焼き立てパンやピザ、ソフトクリームといったファストフードを充実させるなど、本土より即食ニーズが高いとされる沖縄の人々のニーズをしっかり掴み、売上を伸ばしています。
 ちょっと街中を外れると、今でも万屋のような小さなスーパーが、手作りの“郷土の味”を並べている沖縄。セブンイレブンの弁当・惣菜開発の技術が、そんな沖縄でも高い評価を受けるのか、注目しています。

復活したウェンディーズ。FKとのWブランドに違和感

 先日、かなり久しぶりにウェンディーズに入りました。1980年代、チリが好きでよく行きました。今の店名、正確には“ウェンディーズファーストキッチン”のダブルネームです。
 ウェンディーズ、日本での始まりは1980年。中内功氏の肝入りで、ダイエーが日本上陸を果たしました。その後、2002年にゼンショーに買い取られ、09年には米国本社との契約期間満了を期に全店閉店。撤退しています。その後、11年にヒガ・インダストリーズと米国本社が合弁会社を設立して再開。16年、サントリーホールディングスから買い受けたファーストキッチンの店舗をウェンディーズとのダブルブランド店にすることで、店舗数を増やしています。
 私が行ったのは、渋谷宮益坂店。ランチには早い午前の時間帯だったせいか、客は私一人。店内は薄暗く、スタッフの活気はゼロ。2階の飲食スペースは、古いビルにありがちなトイレの臭い。分別トラッシュボックスの上には片づけられていないゴミが。客がいないから、余計に汚さ、雑さが目立つのです。
 米国からやって来た、マクドナルドよりダイナー感のあるハンバーガー、チリやチリ&チーズがかったフレンチフライが食べられるバーガーショップとして、私には少なからずブランド力が感じられていたのですが。ただでさえ、ファーストキッチンとのダブルブランドで、希薄になる個性。メニューも店内の雰囲気も、大分ファーストキッチンに引っ張られているように感じました。そもそも、ファーストキッチンのターゲットと、本来ウェンディーズが求めるべき顧客とは異なると思うのですが。とにかく、しばらくは行くことはないと思いました。

精肉売り場の品揃えに感動。「明治屋ジャンボ市」

 先週、スーパーマーケットの社長および後継者が集まる勉強会にお呼びいただき、講演をしました。講演会場は、福岡県でスーパーを3店舗経営する明治屋食品さんが展開しているキッチンスタジオ併設の施設で、スーパー「明治屋ジャンボ市」が隣接しています。
 空き時間に店舗を見せていただきました。明治屋食品さんは精肉店をスーパーに転換した歴史があるだけに、精肉売り場の充実度は、完璧です。
 後藤社長がこだわり続けたのが、対面販売。人手がかかるという理由で、何度か止めようという意見も出たとか。それでも続けてきたのは、「お客様と会話をしながら販売する」ことへの社長の信念とか。対面販売というと単価の高い肉の専用コーナーという印象がありますが、ここでは安価な肉も好みの重量、厚さで販売しています。パックコーナーは、冷蔵あり、冷凍あり。ブランド肉から輸入肉まで、塊肉からミンチまで、とにかく幅広い品揃え。カルビだけでも4種類が揃います。
 小規模なスーパーしか近隣にない環境に住む私にとって、パラダイスのように思えました。塊肉はあっても300-400gにカットされているため、それに合わせて料理をするしかありませんし、薄切り肉も“薄切り”と“しゃぶしゃぶ用”の2種。例えば同じ生姜焼きでも、肉の厚みによっておいしさが変わります。“今日はちょっと厚めでいただきたい”などと思っても、かないません。アウトパック主体の店ではなおのことですし、店内カットの店でも、さまざまな理由でカットしてもらえないことが増えました。
 週末、料理に腕を振るいたい生活者にとって、求める素材が求めるカタチで売られていることはとても重要です。素材が料理のやる気を奮い起こしてくれると言っても過言ではありません。恵まれないスーパー環境に住む私は、狭隘な素材範囲の中、料理選びに四苦八苦しています。