福岡で偶然の出会い

 緊急事態宣言の規制が解除され、久しぶりに福岡へ講演に行きました。帰途、福岡空港で、一緒に登壇した静鉄ストアの元専務取締役、中山直人氏と会いました。傍らには、男性がずっと付いていらっしゃいます。話は、自然と私の出身地でもある静岡県のことに。

 「私は磐田出身なんです」。すると傍らの方は「僕は今は磐田に住んでいるんですが、出身は森です」「母が森の出です」「どちらですか」「下宿です」「僕も下宿です」。そういえば、この方、こんにゃく屋さんをやっているとか??? で、はっとしました。よく祖母と母の会話にでてきた名前「こんにゃくやのおこうちゃ」。祖母の家のお隣りか、お隣りのお隣りか、記憶は定かではありませんが、「おこうちゃ」さんは確かに祖母の家の隣人で、祖母のお友達で、おそらく嫁同士で。で、その方は、「おこうちゃ」さんのお孫さんだったのです。お名前は、倉島正三さん。現在は、遠州森町の小国神社に向かう街道筋で「久米吉」という立派なこんにゃく屋さんを経営していらっしゃいます。

 私の家は商売をしていたので両親はいつも忙しく、兄と二人でバスに揺られ、よく祖母の家に泊まりに行きました。近くに太田川が流れていて、夏休みは毎日川遊びです。遠くに見える鉄橋には、時々、煙を吐きながら蒸気機関車が走っていました。祖父は大工の棟梁だったので、家には常時10人くらいの弟子が寝泊まりしていて、夕食時などはそれは賑やかでした。私はいつも、横に長く並べられたテーブルの真ん中にどんと座わる祖父の膝に乗って、得意満面でした。

 そんなことを思い出しながら、祖母や母が生きていたら、この偶然の出会いを、きっと驚いて、そして喜んでくれたに違いないと思いました。

2年ぶりの展示会

 11月10日、業務用食材卸、株式会社久世の展示会に伺いました。昨年は新型コロナウイルス禍で中止したため、2年ぶりの開催です。展示会のテーマは「外食新時代~原点回帰+α~」。FLコスト低減を可能にする食材、汎用性の高い商品・メニューの提案、コロナ収束後を見据えてのサポート提案をメインに展開されていました。 

 SDGsの施策として、入り口で紙製のトレーと箸が渡されます。トレーはほどよい大きさがあり、ヘリが高いので、試食品を載せて持ち歩いても落とす心配がありません。いろいろな試食品を盛り合わせてビュッフェの皿のようにしている来場者もいました。会場の所々に試食テーブルがあり、各ブースで受け取った試食品はそこでいただきます。人気のブースの前に密を作らない工夫です。

 年に1度、展示会でしか会わない食品会社の担当者さんたちがたくさんいます。皆さん、飲食店や宿泊施設などをお客様にする業務用担当ですから、コロナ禍で大変な思いをしていらっしゃいます。2年ぶりにお会いして近況を伺って歩きました。皆さん、売り上げはまだまだ戻らずと困り顔でしたが、一様に、これからに向かって“やるぞ”という思いが伝わってきました。提案している商品も、例年より力が入っているような。

 飲食店の時間制限、人数制限が撤廃され、Go To イートは2022年のゴールデンウイークごろまでの延長が決まりました。ここにいる皆さんの提案力と営業力で、沈んだ外食市場を盛り上げていただきたいと強く願った次第です。

ソースやつゆの濃さと麺の太さ

 今年は濃い系の味がトレンドです。インスタントラーメンも売れている商品は「日清食品 日清これ絶対うまいやつ!」や「明星食品 麺神」など、濃い味、そして濃い味にしっかり馴染む極太もちもち麺がウリです。

 麺の太さや歯応え、のど越しと、ソースやつゆの味や濃度のバランスは、とても大切です。例えばパスタは、ソースによって太さを変えるのは常識。ボロネーゼやカニ風味のトマトクリームなどうま味の強い、濃い味のソースには、しっかりとした歯応えの太めのパスタを合わせますし、生ハムやトマト、レモンを使ったすっきりとした味付けには細いパスタを合わせるのが一般的です。うどんも同様。ずんぐりもっちりとした伊勢うどんには、たまりじょうゆの濃厚なたれがよく合いますし、細くてなめらかな口当たり、のど越しのよい稲庭うどんは、だしが利いた麺つゆでいただくのがおいしいと思います。

 なのに、です。飲食店には、オペレーション優先で、短時間でゆで上がる細めの麺を使っている店が多いのです。ランチメニューでカルボナーラやアマトリチャーナをオーダーしたとき、細いパスタが使われていると本当にがっかりします。中華料理店でも、広東麺の麺が細いと、とっても損した気持ちになります。具材にボリュームがあればあるほど、残念な気持ちは大きくなります。もちろん、ソースや具材、あんにかかわらず、細いパスタや麺が好きな人もいるでしょう。でも私は、うま味の強い濃い味には、それに適した麺を合わせたいのです。

 ご飯や麺の「大盛り」、ラーメンの「油多め」や「麺硬め」と同じように、「麺太め」をオーダーできたらいいのにといつも思います。

意外とストレス!? ゆで卵

 キユーピーが今年4月から全国販売を始めた袋入りの殻なしゆで卵「そのままパクっと食べられる ゆでたまご」(実勢価格88円)が売れ続けています。卵は、アミノ酸スコア100の良質なタンパク質源。しかもリノール酸や数々のビタミン、ミネラルも含まれています。新型コロナウイルス禍で、手軽にタンパク質を摂りたい生活者にとって最適な商品であることは分かります。

 が、しかし。10個220円程度で買える卵を、ただゆでてあるだけなのに、4倍のお金を払って買うのはなぜでしょう。答えは、“ゆで卵“という料理のハードルが高いからです。「ゆでるだけじゃない」と言う人が圧倒的だと思いますが、そうは思わない人もたくさんいるのです。私の周りにもいます。

 鍋に卵と水を入れて火にかける、タイマーをセットする、水で軽く冷やして殻をむく。たったこれだけの作業の中に、ストレスがいくつも潜んでいます。まず1個の卵をゆでるのにちょうどよい大きさの鍋がない。だから、卵がかぶる量の水とそれを沸かすためのガス代がもったいない。タイマーをかけるのが面倒、鳴ったらキッチンに戻らなくてはいけない、ツルンとむけないとイライラする、結果、殻には白身がいっぱいくっ付き、肝心のゆで卵はでこぼこ。こうなったら悲劇。というのが、“ゆで卵買う派”の主張です。

 鍋で湯を沸かし、時間を計ることに、ストレスを感じる人は多いのかもしれません。アピックスインターナショナルが開発した、レトルト食品を温めるだけの専用調理家電「レトルト亭 」。Makuakeで 20%オフの6140円~で先行販売したところ、用意していた1200台が27時間で完売したと言います。

 因みに私は、バーボンのつまみとして毎日ゆで卵を2個食べます。もちろん、自分でゆでます。

選挙運動と炊き出し

 立候補者を一度も生で見ることなく、主張を聞くこともなく、衆議院選挙が終わりました。夜8時から一斉に始まる選挙結果速報番組。作り置いたチリビーンズをつまみにバーボンを飲みながらずっと見ていました。自分が1票を入れた立候補者は当選したのか、政党は議席を伸ばしたのか。もちろんそれも気になりますが、何より、投票率の高低や票を集めた政党、落選した議員や健闘した立候補者に興味があります。生活者の気持ち、空気感が分かるからです。

 私は、選挙というと炊き出しの光景を思い出します。子どもの頃、政党支援をしている組織に属している夫を持つ妻たちが集まって、おにぎりや煮物などを作っていました。冠婚葬祭や祭りと同じような光景です。昭和時代の女性たちは、炊事で選挙運動を応援していたのです。

 今は、もちろん仕出し弁当。しかも、有名な料理店の弁当を集めたサイトもあり、いろいろなお店の味が楽しめます。ただし公職選挙法で、選挙運動員や労務者への弁当の提供は、1食につき1000円、1日につき3000円が上限になっています。しかも、提供できる弁当の数は候補者1人当たり15人分。掛ける3食で45食に、掛ける告示から投票日までの日数の範囲内と定められています。つまり誰がどの弁当を食べたのか、きちんと管理しなくてはいけないということです。過酷な選挙運動の日々、作り立ての温かい料理で元気付けてあげようという意味では、炊き出しもありなのでしょうが、食材費などの経費を食べた人数で割って、厳密には、誰がどの程度食べたのかを把握する必要もあり、現実的ではありません。活気に溢れた選挙運動と炊き出し。もう見ることのない光景です。

飲食店の制限解除を前に食材費が高騰

 ランチの常連店が、11月1日からランチの価格を10~15%値上げすると言います。食材費の高騰が理由なのだそうです。非常事態宣言が解除され、飲食店に対する制限も緩和から解除に進もうとしている今。“さあ、これからだ”と勢いづく飲食店経営者に、食材費の高騰と人手不足という大きな壁が立ちはだかります。

 食材費の高騰には、大きくふたつの原因があります。ひとつは、世界的規模で起こっている異常気象による農作物の不作です。今年だけでも、北米、シベリア、トルコ、ギリシャなど世界各地で大規模な山火事や森林火災がいくつも発生し、農作物に甚大な被害をもたらしました。北半球の各地では、干ばつにより小麦などの作物が生育せず、家畜に与える餌に窮する国もあります。一方、南半球では、異常低温でとうもろこしやコーヒーの収穫に影響が出ています。

 もうひとつは、ワクチン接種による経済復活の動きと急激な消費量の拡大です。中国は牛肉を輸入したく、米国は、巣ごもり生活と住宅バブルで中国製の家電や家具、自動車部品が欲しい。頻繁な往復に船賃が上がり、“日本行き”は割の合わない航路になっているとか。希少な農産物を高騰した船賃で運ぶのですから、食材費が値上がるのは当然です。

 異常気象と新型コロナウイルス。地球の主人公は決して人間ではないこと、日本は自給率の向上を含め、持続可能な循環型食生活への取り組みを真剣に考えなくてはいけないことを、痛感しています。

料理レシピを愛読します

 料理を作るとき、私はよくレシピを見ます。手慣れた料理でもたまにはレシピを検索して、もっとおいしくなるレシピはないか、おもしろいアレンジをしているレシピはないかと探すのです。

 よく見るのは、「みんなのきょうの料理」(NHKエデュケーショナル)。Webに掲載されているレシピは、今は亡き料理研究家、新鋭の料理研究家、お世話になった料理研究家の息子や娘、親しいシェフたちのオリジナル。どのレシピも、読んでいるだけで楽しく、作りたい欲求が高まってきます。

 料理番組では、昼時間に放映される「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」(朝日放送テレビ)をよく見ます。大阪あべの辻調理師専門学校の、西洋料理、日本料理、中華料理の3人の教授が講師です。司会の上沼氏がひと口食べて感想を話すのですが、その表現がお上手で。今すぐに味見をしたい欲求に駆られます。しかも番組HPに掲載されているレシピもシンプルで、よく考えられているのです。これは、前出のシェフのレシピにも言えることですが、プロの技術とセンスが家庭料理に溶け込んでいて、その点がとても魅力的です。

 私は料理編集者をしていたので、レシピを読むと、料理のポイントと段取りがすっと頭に入ってきます。作りづらい書き方には、ケチをつけることも。“料理記者”の草分け的存在だった岸朝子先生は、「レシピを書く時は、左手に鍋、右手に菜箸を持ちなさい」とおっしゃっていました。順序だけではなく、流れを大切にすることを教えていただきました。

昭和ノスタルジーを満喫。万平ホテル

 緊急事態宣言が解除され、所用で軽井沢に行きました。久しぶりに、万平ホテルでランチをいただきました。

 軽井沢は、本通りも銀座通りも万平ホテルも観光客でいっぱい。規制緩和を受けて関東地区から観光客がどっと押し寄せたのでしょう。10月にしては暑い日でしたから、“夏休みの軽井沢?”と錯覚してしまうほどの混み具合でした。

 万平ホテルのメインダイニングのメニューは、コース料理とアラカルトで構成されています。押しは、コース料理。牛肉のグリルや鶏肉の赤ワイン煮、舌平目のムニエルや真鯛のポワレ、ビーフコンソメスープ、野菜にはヴィネグレットソースがかけられます。何もかもが懐かしい名前の料理。昭和のまま時間が止まっています。

 アラカルトは、名物のカレー。これは正確には、カツレツや魚介、野菜のソテーなどにライスが添えられていてカレーソースをかける提供スタイルなので、料理名は「○○とライス カレーソースと共に」と記されています。ほかには、ハンバーグにビーフストロガノフとこれまた昭和を代表する洋食がずらり。デザートに至ってはそのものずばり、「昭和50年代のレシピで作った カスタードプリン」「昭和50年代のレシピで作った ババロア アプリコットソース」など。本格的なスイーツのおいしさに日本人が驚いた半世紀近く昔の味が楽しめます。給仕人の、黒いスーツに蝶ネクタイの装いも昭和のまま。敢えて時代を追わないのは1936年に建てられた館との調和を考えてのことでしょうし、軽井沢で最初の洋式ホテルという伝統と誇りを守るという目的もあるのでしょう。

 おしゃれなカフェやブーランジェリー、大きなアウトレットモール、風格のある別荘群に加え、そこかしこに漂う昭和の趣が、若者たちを軽井沢に惹き付けているのかもしれません。

何かに模られる砂糖。昭和は鯛でした

 可愛いお土産をいただきました。白色や薄茶色のねこの顔を模った砂糖です。私は、コーヒーも紅茶もストレート派なので、飲み物に砂糖を使うことはほぼありませんが、余りに可愛いのでホットコーヒーに1個。ねこの顔が溶ける様を見ていたら、なんて残酷なことをしているのだろうという気分になり、思わず砂糖に詫びていました。

 製造は、老舗砂糖商の駒屋(愛知・名古屋)。それをヴィレッジヴァンガードがオンラインで販売しています。シリーズ名は「物語のある砂糖」。パステルカラーのハート形、花と蝶形、貝殻形のほか、ジグソーパズルのピース形、食パン形、手紙形などもあり、どれも砂糖菓子と呼びたくなるような、やさしいメルヘンの世界感に溢れています。

 昭和の時代、戦後しばらく砂糖は貴重な食品でした。結婚式などの祝い事の引き出物には、お赤飯の折と鯛の形をした砂糖の塊りが一緒に包まれていました。そう言えば、砂糖の四角い塊り、角砂糖も見なくなりました。街から喫茶店が消えて、角砂糖も出番がなくなったようです。

 初めてデートをする二人が喫茶店のテーブルをはさんで座っています。女性は男性のコーヒーに角砂糖を入れてあげるために「いくつ?」と聞きます。男性は「23」と年齢を答えてしまう。昭和のドラマでよく見たシーンです。固まる性質を生かし、何かに模れた砂糖。白雪糕(はくせっこう)と共に、懐かしく思う昭和のカタチです。

私のツボは、“言葉使い”と“外食店で見かける他人の行動”

 人にはそれぞれ“ツボ”というものがあります。“笑いのツボ”、“怒りのツボ”、“泣きのツボ”などなど。そこにはまると抜けられなくなってしまうのが“ツボ”です。私の場合、“どうしても気になってしまうツボ”があり、それは“言葉使い”と“外食店で見かける他人の行動”です。

 言葉使いでは「違(ちが)くて)」「難(むず)い」「こちらでよろしかったですか」など。また可愛い女性が「デカイ」「腹減った」などと言うのも気になります。かなり気になっているくせに、“言葉は生き物、変化するのが自然”“男女平等、女らしさの押し付け”と即、自身を戒めようとするところも我ながら鬱陶しい。

 外食店ではやたら他人の行動が気になります。帽子やバッグをテーブルの上に置くな、肘をついて食べるな、器はきちんと持て、箸を振り回すな、器を重ねるな、口を閉じて噛め、洋皿は持ち上げるな、スマホを見ながら食べるな、横柄な態度を取るな、残すなら最初に減らしてもらえ、ナプキンをくしゃくしゃにするな、・・・。心の中でまくしたてます。気にしなければいい、見なければいいと自分でも分かっているのですが、そこが“ツボ”だから仕方がない。その人が若い女性の場合、「この女性が息子が連れて来たお嫁さん候補だったらどうしよう」「息子が良ければそれが一番、何も言うまい」「顔に出たらどうしよう」「なるべく一緒に食事をしないようにしよう」「すごくいい娘(こ)なら気にならなくなるかも」と一連の瞬間空想が始まります。こちらも我ながら鬱陶しい。

 そして空想の後は決まって、駆け出しの料理編集者だった頃、“ばぁば”の愛称で親しまれた料理研究家の故鈴木登紀子先生宅のダイニングテーブルの上に、スーパーの袋を何も考えずに置いてしまい、先生に注意されたことを思い出すのです。