「食のトレンド情報」Excel版は、配信1000回を迎えました。これもひとえに会員の皆さまのご厚情の賜物と心より感謝申し上げます。
スタートは1999年。ある食品会社の依頼で始まりました。新聞や雑誌から食の情報を集めてほしいという内容です。当時、HanakoやDIMEのほか、現在は休刊しているChouChou、Olive、東京ウォーカーやTOKYO★1週間といったさまざまな雑誌が、街と食の情報を頻繁に掲載。食品商業や月刊コンビニなどの業界誌も多数出版されていました。テレビのワイドショーや情報番組は、毎日のように食の情報を取り上げていて、その内容もまとめてほしいと要望されました。ある特定の食品と健康効果を関連付けた内容が放送されると、その食品があっという間に売り場から消えるという現象が起こるほど、影響力が大きかったからです。特に、「午後は○○おもいッきりテレビ」(日本テレビ)と「ためしてガッテン」(NHK)は食業界に注目されていました。とにかく、誌(紙)面と画面に食の情報が溢れていた時代です。
2003年からは、それらの情報を基に食市場のトレンドをキーワードで表現。食市場を俯瞰で考察した「食市場のトレンド相関図」を作成し、講演を始めました。初回の講演は、「FOODEX JAPAN 2003(第28回国際食品・飲料展)」です。04年から現在の「食のトレンド情報」Excel版とほぼ同じ構成になり、同年12/6に配信したvol.1から数えて今回が1000回になります。22年1/1、もっと手軽に読みたいとのご要望にお応えして内容をコンパクトにした「食のトレンド情報」Web版をローンチしています。
今回、1000回を記念して【食市場のトレンド相関図/2003-2024年】、毎年年末配信分に掲載される、その年のトレンドを振り返るhimeko’s VIEW【HITキーワードBEST10】を初回の13年から24年の12年分を添付いたしました。トレンドの流れを再確認していただければ幸いです。
今後も、ひめこカンパニー並びに「食のトレンド情報」をよろしくお願い申し上げます。
カテゴリー: 食のトレンド
海外で抹茶はスーパーフード?
海外で、抹茶が大人気のよう。京都の日本茶専門店には、オープン前から外国人旅行者が並び、抹茶を何缶も買っていくとか。30g入り1缶、1万2000円、8000円などの高級な抹茶は、ほとんどが売り切れ状態。生産が追い付かない状況です。
抹茶人気の理由は、健康と美容。日本人が長寿で女性が年齢よりも若く見え、肌がきれいなのは、抹茶を飲んでいるからと思っているよう。抹茶を常飲している日本人は茶道関係者以外ごく稀だし、日本茶を淹れる人もどんどん減少しているのだから、この説は間違っていると思いますが、日本茶が健康にも美容にもいいことは確かです。
茶の木に直射日光が当たらないように覆いをかけ、甘みとうま味を十分に溜め込んだ新芽だけを摘み、蒸気で蒸した後、乾燥させ、茎や葉脈などを除いて軟らかな茶葉のみを選別。これを石臼で挽いたものが抹茶になります。機械で粉砕する方法もありますが、機械自体が熱くなり、茶葉が変質して色や香りが落ちるといいます。24時間石臼を回し続けてもできる量はほんのひと山。高級抹茶は量産できるものではありません。海外では転売も行われているようで、価格は高騰。円安が追い風になり、外国人旅行者には安く手に入れられるスーパーフードになっているのかもしれません。できれば、茶道という日本固有の文化に興味を持ったり、ヒーリングなど精神的な効果を期待したりなどの理由で、深く長く愛していただけるとうれしいのですが。
昨年末、高校の同級生が自宅の茶室で茶会を開いてくれました。母の遺品となった茶道具をもらっていただいたのはずっと前のこと。その道具を使って私にお茶を点ててあげたかったという涙が出るほどありがたいお誘いです。が、私はまったくの不調法。足が攣って正座すらできぬ有様。目の前に置かれたお菓子を取ったら「まだ早い!」と一喝。お点前をいただくあいさつすらままならない。外国人に、文化だ精神だなどと宣う資格などない日本人です。
2025年、不安感が広がる食市場のキーワード
2025年が始まりました。例年以上に不安な気持ちでお正月を迎えました。不安感は年々強くなっています。
今年は、トランプ氏が再び米国の大統領に。世界中が彼の手腕(?)に戦々恐々としています。日本においては、円安がますます進んで食料品が値上がりするのではないか、米国への輸出品の税率が上がり産業が衰退するのではないか、増税路線が加速するのではないか。ますます激しくなる気候変動による農産物への影響も懸念され、私たち生活者にとって、心落ち着く1年にはなりそうもありません。
そんな状況を鑑み、私は、“2025年のトレンドキーワード”の決定に当たり、「身体と心の健康」と「癒やしニーズ」を柱にしました。先行き不安を感じる生活者が食に求めるものは、「健康に寄与し、心の安定をもたらすもの」。そして「無理のない楽しさ」です。
前者を反映するキーワードとして「骨活」「美活腸育」「エビデンス重視」「ウェルパ志向」「チューニングフード&ドリンク」などを、後者のそれとして「プロパ志向」「五感消費」「エモ消費」「背徳ウェルビーイング」「利他消費」などを挙げました。過去にも経済が低迷し、先行き不安感が広がり、節約志向が高まった年には、ちょっとした驚きや楽しさが得られる「五感消費」や、ヘルシー志向に疲れ、敢えて健康的ではないものを求める「アンチヘルシー」、心が動くか否かを消費行動の基準に置いた「マインド重視」、自他共に満足したい「共感消費」などのキーワードが挙がっています。
2/12の“スーパーマーケットトレードショー”を皮切りに2/14には日本惣菜協会主催の“フォローアップセミナー”など、今年もさまざまな会場で「2025年食市場のトレンド」講演をいたします。もちろん、「食のトレンド情報Excel版」法人会員の皆様には、貴社に伺って講演をさせていただきます。是非、最新の情報をお聞きください。
素敵なご夫妻とおしゃれなキッチン
料理が好きで、料理が上手な人のキッチンはすぐに分かります。20代前半、駆け出しの料理編集者だった私にとって、撮影で伺う料理研究家のおしゃれなキッチンは憧れでした。週末、そんな時代を彷彿とさせる素敵な出会いがありました。避暑地の築48年の家にお住まいの齢80を超えたご夫妻です。
迎えてくださったご主人はデニムにギンガム柄のフランネルのシャツをアンダーに合わせ、首にはラフなスカーフ。マダムは真っ赤なカーディガンにパンツ、胸元には金のブローチ。カーディガンと色を合わせたかのようなルージュを、白い肌と軽くアップにしたグレイヘアが引き立たせ、まさにマダムの貫禄です。
白いタイル貼りのキッチンカウンターは南側のテラスに向けて広がり、四季折々変化する雑木林の彩色を楽しみながら料理ができます。シンクは、理科室で使われる深めの実験用。陶器製の大きなシンクを探し求めた結果とか。古い食器棚には、ご両親から受け継いだ古伊万里の赤絵と染付の皿、イタリアで求めたというベッキオジノリホワイトの洋食器が並びます。
室内には、美しくないものは何ひとつありません。もちろん、キッチンにも。炊飯器や電子レンジなどの調理機器は一切見当たりません。その代わり、木製のスパチュラやターナーがアンティークなジャーに。水を張ったボウルにはユーカリが、小さな花器には野ばらの実がさりげなく飾られています。小粒のじゃが芋は鉄製のアンティークなカゴに入れた厚手のクラフト紙の袋に、白いタイルに映える緑色の野菜もシンプルなざるに載せられています。壁掛けのコーヒーミルで豆を挽き、ドリップしたコーヒーの香りが、暖炉ではぜる薪のにおいと混ざり合い、冬の避暑地ならではの静かな時間を演出します。
ロジェールのガスコンロの種火が点かないからマッチで火を点けるのとマダム。マッチより着火ライターのほうが安全では・・・と言い掛けましたが、マダムのキッチンには似合いませんよね。
おいしいものへの執着
先日、再び「銀座 慈生」に伺いました。おみやげに、“明石の鯛のかぶと”をいただきました。この日、“お向こう”に刺身として出された魚です。早速、焼き物に。かぶとのほかにも身が付いた部位がいろいろ。箸でほじくりほじくりいただきました。身を食べ尽くした後は、迷わずだし取りです。ていねいにアクをすくいながらコトコト。部屋中に香ばしい焼き魚の風味が広がります。
ひと口いただくと、そのまま飲み干してしまいたくなります。この時、思い浮かべたのが、エースコックが11/4に発売した、手間のかかる魚を手軽に味わうことができる新感覚のカップスープ「飲む焼き魚 濃厚魚介醤油スープ」。“焼アジパウダー”をふんだんに加えた、苦味やうま味をしっかりと感じられる魚介しょうゆスープで、まるで焼き魚を食べているような香ばしい風味が広がるといいます。既に試したスタッフによると生臭さもなく、コンビニの塩むすびとの合わせ買いにぴったりだとか。
さて、このおいしいだしをどうしよう。「銀座 慈生」の献立は、ご飯ものから始まります。先のコラムにも書きましたが、春にいただいた“たけのこご飯”のそれはそれはおいしかったこと。今回は、しじみのうま味を十分に引き出したお粥をいただきました。そのうま味が舌に残っていたのか、迷いなくお粥に。だしにご飯を入れて塩を少し。長ねぎのせん切りを添えていただきます。こんなとき思うのです。おいしいものへの執着があってよかったと。素材を前にしてまだ味わえるまだ楽しめると思うだけでうれしくなります。誰でも、おいしいものは大好きです。でも、それを堪能できる幅は、人それぞれです。
そんなことを考えていたら、翌日のSNSに某テレビタレントが発した「生臭いからあら汁が嫌い」という記事。もちろん、鮮度や下処理の如何でいただけないあら汁もあるのでしょう。が、おいしいものには、特有のにおいがあり、それが独特のうま味に繋がっていることもまた事実。それを“臭み”と片づけてしまうのももったいない話だと思うのです。
ワタミが手掛ける新生サブウェイに期待
10/25、ワタミは日本サブウェイを完全子会社化しました。グローバル本部であるオランダのSubway International B.V.(サブウェイインターナショナルビーブイ)と日本におけるサブウェイのマスターFC契約を締結。今後は、ワタミが国内のサブウェイ事業を展開します。
ワタミは居酒屋業態で発展しましたが、近年は宅配食事サービスや介護事業、唐揚げ店、焼肉店やインバウンド向け串焼き肉店など、脱居酒屋依存を目指してさまざまな展開を試みています。特に創業者の渡邉美樹氏が議員を辞めて会長兼社長に復帰してからのワタミは話題が豊富で、私にとって目が離せない会社のひとつになっています。ワタミの素晴らしさは、真面目なところ。立場によってとらえ方はいろいろでしょうが、少なくとも私が見聞き体験してきたワタミ本部の皆さんの商品に対する姿勢は、とても真摯です。
セントラルキッチンでは加工食品はほとんど使わず、基礎調味料からオリジナルの混合調味料を作り、野菜や肉を手切りし、それをキットにして各店に配送しています。そんなワタミが2002年に「日本に有機農業を広げていくこと」を目的に設立したワタミファーム。それを生かし切れる業態として最適と思われたのが、日本サブウェイだったのでしょう。
一方、日本サブウェイは、サンドイッチ業態。とはいえ、日本人にはサンドイッチとして認識されているのかは疑問に思うところ。日本サブウェイは、「野菜のサブウェイ」をアピールしたかったようなのですが、その野菜が魅力的だったかと言えばそうでもなく。加えて、パンを選び、トッピングを選びと面倒なオーダーシステム。プレゼンテーションは頑張っているのに、なぜか満足感が得られない原因はいろいろあります。
さて、日本サブウェイでワタミは何をするのか。おそらく、モスフードサービスのような野菜の押し出し方に加えて、さらに魅力的な野菜の展開を図るのではないかと予想します。渡邉氏のもとには、ハンバーガーのチェーンをやらないかという話が多数持ち込まれていたとか。ハンバーガーでもサンドイッチでもない、おそらくは広角的概念を持ち込んだ新業態になるであろう舞台で、“オリジナル野菜で勝負をかける!”。やっぱり、渡邉氏は飲食業界で活躍すべき逸材です。
米国の「調理医学」と日本の栄養学
米国では近年、医療分野において「調理医学(Culinary Medicine)」が注目されています。調理医学とは、非感染症疾患の予防・治療・予後の心身機能回復を、投薬のみに頼らず、食を通して実現させることを目的にした、米医学界で体系化がスタートして20年足らずの新分野。エビデンスに基づき、症状に応じた食材選び、調理法、食べ方まで、患者の文化的背景も考慮し多角的に探求する学問です。2014年に開発されたハーバード大学医学部監修の指導者養成プログラム「CHEF(Culinary Health Education Fundamentals)」は、教える人も学ぶ人も同時に調理を実践しながらスキルアップを図るレッスン法で、“癒やしの自炊”を提唱しています。
調理医学。まさに、女子栄養大学の創立者・香川綾氏が目指したものです。医学博士である氏は、予防医学の観点から栄養学の重要性を説き、健康的な食事に必要なことは実践力であると調理技術の向上を重んじ、料理の正確な伝承を目的に計量カップ・スプーンを開発しました。例を挙げるまでもないことですが、対象者は一人ひとり、生活環境も嗜好も異なります。病気にならない、病気を快復するための食事を提案するためには、対象者が実行しやすいカタチに合わせることが大切で、そのために求められるのが、栄養学の知識と調理による実践力、分かりやすく伝え、やる気にさせるコミュニケーション力です。しかし、未だかつて栄養士の国家試験に調理技術や伝える力が求められたことはありません。一方、日本の医学部で医師を養成する教育カリキュラムに、栄養学に関する内容は含まれていません。因みに、米国で「CHEF」を開発したのはシェフの経験がある医学博士、日本で1972年「医食同源」を提唱した新居裕久氏も医師であり、中国料理の陳建民先生に師事し、新宿クッキングアカデミーの校長も務めていました。
非感染症疾患の減少がSDGs指標のひとつであることを考えると、栄養学を学び、調理技術を身につけた“シェフドクター”は、世界的に必要とされる存在になるかもしれないといいます。栄養士よ、実践力を身に付けよ!
栄養バランスが取れていた昭和後期の家庭料理
来年2025年(令和7年)は、昭和100年。弊社が毎年作成する「食市場のトレンド2025年」相関図のトレンドキーワードに「昭和100年レトロ」を挙げました。最近は、昭和平成令和と時代を超えてヒットした曲のランキングをしたり、昭和レトロな喫茶店や食堂を紹介したり、テレビ番組でも昭和が多く取り上げられています。
家庭の食の世界でも、今後、昭和の食がいろいろなカタチで注目されるかもしれません。例えば、昭和55(1980)年頃の食事が日本人にとって最も理想に近い栄養バランスだったのではないかと思います。昭和48年高度経済成長が終わり、昭和61年バブル景気が始まるまでの落ち着いた期間。まだ日本の家庭料理の伝統や風習が残っていて、献立は、米を主食にみそ汁、肉や魚の主菜、野菜や豆類の副菜が複数付いた一汁三菜が基本。常備菜や漬物を用意する習慣も残っていました。洋食が家庭にも定着し始め、朝食はパン食という家庭が増えた時期。目玉焼きに付け合わせはキャベツのせん切り、季節の果物に牛乳などの献立。夕食にはハンバーグやポークソテーにサラダといったメニューも珍しくありませんでした。子どもの好みが食事に反映され始めたことも家庭料理の洋食化を後押し。圧倒的に多かった専業主婦は、子どものためにと料理本や料理番組を手本にせっせと洋食にチャレンジ。主婦向けの料理教室も賑わっていました。
昭和の始め。日本の食卓は栄養学的には決して豊かとは言えず、塩気の強い漬物や塩辛などで白飯を何杯もお替わり。エネルギーの主体は炭水化物でした。適度な洋食化は、肉からタンパク質を果菜や葉野菜からビタミンやミネラルを摂取。使用食材も増え、バランスが取れていたと思います。家電進化と核家族化が進んだ家庭で、主婦の牙城となった台所。主は、新しい料理作りを楽しんだことでしょう。ただ、味わったことがない料理も多く、これでいいのかしら?のトライアンドエラーの日々だったことは、想像に難くありません。
プラスチック削減に向けて広がる無料給水所
$1=\160台という円安絶好調の中で米国旅行をした今夏。宿泊したホテルで水道水を沸かし、マイボトルに入れて持ち歩くだけでもかなりの節約になりました。因みに、空港の自販機で売られていたペットボトルの水は500mlで$3.5(560円)。その代わり(?) 搭乗階には、マイボトルに水が入れられる給水機や直接飲める給水機がたくさん設置されています。
世界各地でプラスチック利用の削減への取り組みが積極的に行われている中、米国では多くの州で、ペットボトル入り飲料水の公費での調達を廃止しています。加えて民間も含め、新設のビルには誰でも利用できる給水設備の設置を義務付けています。地方自治体では、市が所有する施設や敷地内でのペットボトル飲料水の販売を禁止する条例を施行。“水道水推進キャンペーン”を展開し、おいしい水道水を提供していることを市民に知ってもらう活動もしています。グランドキャニオンなどの国立公園や大学などでも、ペットボトル飲料水の販売は禁止されていて、代わりに水飲み場や給水機はとても増えています。
この流れは日本にも。東京都水道局は、都内で冷たい水道水がいただける給水ポイント約900ヵ所を地図にまとめてホームページに掲載しています。が、悲しいかな使いづらい。同様のサービスに、REFILL JAPAN(リフィルジャパン)が展開している「リフィルスポットマップ」や、一般社団法人Social Innovation Japan(ソーシャルイノベーションジャパン)が運営するアプリ「mymizu(マイミズ)」などがあり、近くにある給水機や無料でマイボトルに水を入れてくれる飲食店、雑貨店などがすぐに探せます。
今後も、今年のような、いえそれ以上の酷暑の夏が繰り返されるのは確実のよう。ペットボトルの飲料水をできるだけ避け、マイボトルに給水して持ち歩くことは、熱中症予防に役立つと同時に、酷暑の原因でもある地球沸騰化を防ぐことにも貢献します。
近年おせちのキーワード[SDGs・フードロス削減・アップサイクル]
おせち商戦が只中です。今年のおせちトレンドは、「和洋・和中を組み合わせたおせち」「伝統的な和風おせち」「有名料亭・レストランのおせち」「オードブル付きおせち」などだとか。他方この数年、トレンド情報で取り上げたおせちのキーワードには、[SDGs・フードロス削減・アップサイクル]があります。“年の初めは贅沢を味わいたい”というニーズは変わらないものの、“食材をムダにしてはいけない、したくない”という時代の空気感を反映したおせち商品もいろいろ登場していました。
[SDGs]をテーマにしたのが2022年の高島屋のおせちです。ジュースを作る際に残る伊予柑の皮を活用したエサで育てた“真鯛の西京焼き”、商業施設の余剰食品を用いた飼料で肥育した豚を使った“焼き豚”、山の生態系を守るため処分されたジビエの“ソーセージ”や“ハンバーグ”、規格外の野菜を使用した“筑前煮”などが詰め合わされています。[フードロス削減]に動いたのが、ロスゼロ。おせちは販売数をある程度予測して製造しますが、まだ作れるとしても締め切り後に販売することができず、予約数が少ないとそのまま余ってしまいます。23年12月ロスゼロは、それらを「おそち」として会員への販売を始めました。
[アップサイクル]なおせちを23年向けに販売したのは、ローソンです。おせちの製造過程で出る規格外品や端材だけで作ったアップサイクルな「もったいないおせち」を販売しました。“規格外の蟹爪”や“折れ数の子”、“字がズレた寿高野豆腐”や“伊達巻の切れ端”など13品目です。また大阪・泉大津のグローフーズは23年、おせちの「端材の有効利用アイデアコンクール」を開催しました。“伊達巻”“牛すじ”“牛赤身”“鶏のチーズピカタ焼”“合鴨スモーク”の端材を活用するためのアイデアを募集。一般の人のアイデアと自社開発力の協業により端材の商品化を図りました。