近場で楽しむ旅の食体験

 東京都を除外して“go to トラベル”キャンペーンが始まりました。4連休初日の23日、東京だけでなく、大阪、愛知でも、感染者がかなり増えましたから、首長から言われるまでもなく、「家から出ないようにしよう」と思っている人は多かったのではないかと思います。
 新型コロナウイルスの感染防止で自粛要請が出て以来、遠出をしていない生活者に向けて、“食”で旅行気分が味わえる商品や飲食店が登場しています。
 ファミリーマートは東京都と神奈川県の約1000店舗で7/21から期間限定で、“身近なコンビニで気軽に旅気分”をコンセプトに、「気軽に旅気分!北海道&沖縄」フェアを開催しています。普段は地区限定で販売されている売れ筋商品やみやげ商品25品をラインアップしていて、特に沖縄カテゴリーでは、「ファミリーマートコレクション 沖縄風じゅーしぃの素」や「ぬちまーすランチョンミート」など、全国発売の要望もある沖縄ファミマ限定のPB商品を取り揃えています。
 一方、外食市場では、ダイヤモンドダイニングが7/9、東京・上野に、47都道府県を代表する郷土料理や食材を使った料理を取り揃えたビュッフェレストラン「大地の贈り物」をオープンさせました。
 楽天市場では、日本各地の特産品を詰め合わせた「ふっこう復袋」が人気ですし、観光地の高級旅館ならではの名物食品を直販するECサイトは、自宅でちょっと贅沢な旅気分味わいたいというニーズをとらえています。
 旅の楽しみに食体験は欠かせません。このまま感染者が増え続ければ、夏休みも我慢が必要になるかもしれません。近場で旅気分。ニーズはまだまだ続きそうです。

盛り上がるポテトサラダ論争。作れば分かる面倒臭さ

  “ポテトサラダ論争”が、 SNSやテレビのワイドショーを賑わせています。発端は、スーパーの惣菜売り場でポテトサラダを買おうとした子ども連れの女性が、高齢の男性に「母親ならポテトサラダぐらい作ったらどうだ」と言われ、うつむいてしまったという出来事を綴ったツイッター。これに対し、「料理をしたことがないから言える言葉」「自分で作ってみたら分かる」「簡単そうな料理こそ手間がかかる」という反論の声が上がり、ついには、「どんな料理が面倒だと思うか」など、論点の裾野が拡がっています。
 料理というものは押し並べてそうですが、少しでもおいしさの高みを目指そうとすると手間が増えるし、面倒なことが多くなります。ポテトサラダも同様。じゃが芋を皮ごとゆでて熱いうちに潰して下味を付けるから、じゃが芋のコクと甘味、ホクホクのおいしさが味わえるのです。でも、丸ごとのじゃが芋をちょうどよいゆで加減で火を通すには経験が必要ですし、ゆで立ての熱々のじゃが芋の皮を手でむくのは大変です。簡単に作ろうと思えば、皮をむいてカットしたじゃが芋をゆでればいいのですが、それではどうしても水っぽくなります。
 メインディッシュに添えられたり、居酒屋でお通しとして出てきたり、外食市場においてポテトサラダの地位は決して高いものではありません。ポテトサラダとはそういうものだと思っている方は、「ポテトサラダぐらい・・・」という言葉がついて出るのだと思います。
 この夏、在宅勤務で1日3回食事を作っているパートナーに、「そうめん“で”いいよ」「冷やし中華“で”いいよ」などとは決して言いませんように。両方とも、面倒な料理に挙がっていますから。

改めて認識させられたセブンイレブンの技術力の高さ

 7/11、TBSのジョブチューン「セブン-イレブンの中華メニューを超一流中華料理人がジャッジ!」を見ました。セブン-イレブン開発担当者50名が選ぶイチ押し中華メニュー TOP10を、7人の有名中華料理店のシェフが合格、不合格をジャッジするというもの。7人の内4人が合格札を出せば、その商品は合格となります。
 満場一致で合格したのが、「Wガラスープが自慢!6種具材のタンメン(398円)」と「1/2日分の野菜!9種具材の海鮮中華丼(460円)」の2点。両方に共通する評価は、野菜のシャキシャキとした歯応えと、前者はスープの、後者はあんのうま味の奥深さ。満場一致ではありませんが、過半数のシェフが合格を出したのが、「6種具材のこだわり夏の冷やし中華(460円)」「大盛ご飯 5種唐辛子!四川風麻婆丼(460円)」「春巻き/豚肉と筍(88円)」「7プレミアム極上炒飯(298円)」の4点。10点中6点合格で、なんとか面目を保つことができました。(すべて税抜き価格)
 私の想像ですが、シェフたちはおそらく、コンビニ商品としてではなく、料理としての評価をして欲しいと制作サイドから言われていたと思います。もしそうであれば、この評価は素晴らしい結果だと思います。セブンイレブンの技術力の高さを改めて認識させられました。
 番外編としてジャッジされたのが、私のお気に入り「お肉の旨味!ジューシー焼き餃子(230円)」。開発者は皮のもちもち感を最も重視したそうですが、これに対しシェフは「焼きのカリッと感があってのもちもち」と評価は全員不合格。確かにそうなのですが、電子レンジで温め直す商品には難しく、だから敢えてそこは狙わずもちもち感で勝負した商品なのになあ・・・。とついつい開発者に感情移入してしまうのです。

飲食店に今必要なのは食品会社と卸会社の積極的な支援

 自粛解除後、普通営業に戻った飲食店に、客足は戻っていません。店内での新型コロナウイルスの感染を恐れている生活者は多く、飲食店にとってはまだまだ苦悩の日々が続きます。
 そんな飲食店をこれまで助けてきたのは、料金前払い予約アプリだったり、飲食店の売れ残りを安く買い取る‟フードシェア”サービスだったり。居酒屋で余った生ビールを無償でクラフトジンに加工して返してくれる酒造メーカーや、近隣の飲食店が作った弁当を販売してくれるスーパーやコンビニもありました。とにかく飲食店の経営維持を最優先させた支援でした。
 思いも寄らない環境の中で再スタートをしなくてはならない飲食店に今必要なのは、ウイズコロナ下でも持続可能な営業形態への転換です。それを支援するために、食品会社や卸会社の積極的なアプローチが求められています。
 外食の頻度を減らした生活者に選ばれるために、飲食店には今まで以上に差別化が求められるでしょう。驚きや楽しさ、トレンド感や珍しさが大切な要素になります。その意味では、営業活動の中でもメニュー提案の重要性は一段と増すものと思われます。また中食と外食の違いをしっかりと伝え、中食に合った料理の作り方、料理の構成、業務用食材の選び方などのレクチャーも今なら積極的に受け入れてくれるでしょう。
 ほとんどの飲食店が、市場情報と具体的な手法を求めています。この苦境を、“飲食店と共に外食市場を再び盛り上げるチャンスが来た”ととらえ、会社の財産とも言える、技術と経験、情報を総動員して、情熱を持って取り組んでいただきたいと思います。応援しています。