フードの充実は必要?  今どきカラオケ事情-2

 前回に引き続き、今回もカラオケについて。
 先日ある会社から、カラオケチェーンの「まねきねこ」について相談を受けました。フードとドリンクに関して、リニューアル提案をしたいとの要望です。都内ではあまり見かけない「まねきねこ」は、北海道から沖縄まで広いエリアに400店舗を展開。今年はいよいよ1都3県に積極的に進出する計画で、300店舗増を目指しています。「まねきねこ」の特徴のひとつは、室料が低価格であること。店舗にもよりますが、平日午前中は1時間20円(ワンドリンクオーダー制)です。もうひとつは、フードもドリンクも持ち込みができること。近くのコンビニやスーパーで、惣菜やビールを買って入店するお客様が多いそうです。これにより、厨房にかける経費や人件費が抑えられ、大変利益率の高い商売をしています。
 一方、全体の約3割の店舗を閉鎖すると発表したシダックス。本業が外食、給食ですから、料理に関しては専門家。ファミリーレストランのような充実した食事メニューを揃えています。過去、節約志向の生活者が、カラオケ1店で食事も飲みも歌も済ませてしまうという使い方をしていたときは、よかったのですが、歌うことが唯一の目的で使われるようになった近年は、メニューの充実が経費を増大させる原因になってしまいました。
 先出の会社は、「まねきねこ」の本格的東京進出に当たり、他カラオケチェーンのようなおしゃれなメニューを揃えた方がいのではないかと思っているようでした。弊社の仕事がひとつなくなるかもしれませんが、私は、「まねきねこ」は、今のままのビジネススタイルをベースに展開した方がよいと答えました。

“歌う”だけじゃない 今どきカラオケ事情-1

 つい最近、カラオケチェーン大手のシダックスが、全体の約3割の店舗を閉鎖すると発表。SNSで人と繋がるイマドキの若者は、カラオケなんて行かないのかも・・・などと思っていたら、大間違い。ここ5年連続で市場はじわりと拡大しているそうです。その原動力となっているのは、なんとその「SNS」と「シニア」、「スターの卵」です。
 第一興商は、カラオケで歌う動画を専用のサイトに公開できるサービスを展開。YouTubeではちょっと恥ずかしいという人も、会員のみの公開だから参加しやすいといいます。「シニア」にも、カラオケ好きが増えています。同世代の仲間と、あるいはひとりだけで楽しむ人が増加。シダックスは、‟ゆったりランチ”と銘打ち、和食や丼メニューをルーム料金込みで安く提供したり、第一興商は、カラオケ機器を使って体操などのプログラムを実施したりと、シニア向けサービスを充実させています。また優勝者がプロデビューを果たした、テレビ東京の「THE カラオケバトル」の盛り上がりを見ていると、カラオケが「スターの卵」の孵卵器になっているのもうなずけます。
 さらに、住宅事情で友だちと騒げる場所がないという学生や、踊りや楽器の練習をしたいという人にも、カラオケ店はうってつけのようです。東京急行電鉄は、カラオケチェーン「パセラ」の個室を仕事場として提供するサービスを開始。カラオケ用のモニター画面をパソコンに接続すれば、会議室やプレゼンテーションルームとしても使えるといいます。
 新曲をいち早く取り入れ、コスプレ衣装もあれば、おひとり様対応も充実しているイマドキのカラオケ。機器メーカーと店側の企業努力が、市場を成長させています。

節約志向の市場にはまる「スパイシー」

私は、今年のトレンドキーワードのひとつに「スパイシー」を挙げています。スパイスが利いた“ピリッと辛い味”も人気ですが、それに加えて、スパイス本来の味や香り、スパイスの持つ美容や健康への効果に注目。“辛さだけじゃない”スパイスの魅力に目覚める生活者が増えているのが今年流です。
 外食市場では、お酒と共にスパイスを使った料理を楽しむ‟スパイスバル”が増えています。いずれの店も、カレーはもちろん、すべての料理にスパイスを使用しているのが特徴。中でも、スパイスとジンの相性のよさに着目して30種類以上のクラフトジンを揃え、それらを使ったスパイスカクテルも提供する店や、黒糖梅酒にクローブやカルダモンを漬け込んだ‟スパイス梅酒”を提供する店などが人気です。
 加工食品では、スパイシーなテイストや多種のスパイスを使用していることをウリにした商品がたくさん出ています。ジンジャーエキスに数種のスパイスをブレンドした“濃縮辛口ジンジャードリンク”が注目されていますし、スパイス料理の代表格「カレー」は、スパイス感をより際立たせる“スパイシー化”が加速していて、本格派を謳う商品が続々発売されました。
 近年日本では、食の多様化に伴い、調味料や香辛料の消費量は確実に増加しています。また米国においても、「スパイシー」は今年の外食トレンド予測のひとつに挙がっていて、特に、コチュジャンや七味唐辛子など、アジアの調味料や香辛料が好まれています。高価な食材を使わなくても、ほんの少量で料理の味わいを劇的に向上させ、ヘルシー感やおしゃれ感までプラスしてくれるスパイスは、まさに、魔法の調味料。節約志向が強い市場に、ビタリとはまる食品です。