小売りから外食までセルフレジ化が進んでいます

 米国のスーパーマーケット業界では、セルフレジを撤去する動きが活発化しています。約2230店を展開するアルバートソンズは、ほとんどの店舗からセルフレジを撤去する予定です。理由は、買い物客と面と向かって対話する形が好ましいから。急ぎのお客様や買い上げ点数が少ないお客様には、エキスプレスレーンを増やすことで対応します。
 一方日本では、すかいらーくが、東京都心にある「ジョナサン」「ガスト」「バーミヤン」で1/17から、試験的にセルフレジの導入を始めています。ランチ時にレジが混んでお客様に迷惑をかけている、レジで不要になった人手をフロアに回し、接客や片付けなどのサービス向上に繋げられる、というのが理由です。
 セルフレジは、既に導入が進んでいる食品スーパーや量販店に加え、マクドナルドやアパレルのジーユー、無印良品、CD販売のHMVなど、FF業界や小売業界にも広がっています。人件費の節約と釣り銭の間違いをなくすことが目的です。
 あるスーパーで聞きました。長年レジ打ちをしている女性がいて、お客様とはすっかり顔馴染みだそうです。おばあさんが安売りに気付かず割高な商品をカゴに入れていたら、「今日はもっと安いのがあるわよ」と教え、いつも夫婦で来るおじいさんが一人で来店したら「奥さんは?」と聞き、病気だと知るといたわりの言葉をかける。だから、高齢のお客様の多くがレジの女性に会うことを目的に来店するのだそうです。そんなことされたらレジが混んで仕様がない、とお思いになる方も多いでしょうね。
 高齢者がセルフレジに戸惑えば、セルフレジとてスムーズには捌けないでしょう。やはりコミュニケーション重視とスピード重視の両方のレジがあるといいですね。

おみやげ選びはご当地名物より無難さを優先

 JR名古屋駅構内の売店で昨年4月から中止されていた浜松名物「うなぎパイ」の販売が、9月から再開されました。8月下旬、「名古屋駅の売店からうなぎパイがなくなっている」という投稿がきっかけでSNS上で話題になり、再開が決まりました。‟おみやげは名古屋のご当地物で揃えたい”という東海キヨスクの熱い思いが否定されたのです。確かに「うなぎパイ」は、浜松の銘菓。ならば伊勢名物の「赤福餅」を売っているのはなぜ?という疑問が残ります。
 改めて考えてみれば、ご当地名物が人気のおみやげだった時代ははるか昔です。川越の芋菓子、信州の栗菓子などは産物を利用したおみやげ、仙台のずんだ餅や新潟の笹だんごなどは当地の食文化から生まれたおみやげです。横浜の焼売や長崎のカステラは歴史的な背景があります。それらのいずれでもなく、おみやげとして開発された商品が、今は圧倒的に多くなっているのです。例えば、東京の「東京ばな奈 見ぃつけたっ」、仙台の「萩の月」、札幌の「ロイズ 生チョコレート」、博多の「博多通りもん」などは、おみやげとしての認知度がかなり高い商品ですが、ご当地ならではの特徴があるかと問われれば、首を傾げざるを得ません。さらに言えば、静岡駅の1番人気は、「安倍川もち」ではなく「うなぎパイ」。名古屋駅の一番人気は「赤福餅」、新大阪駅の一番人気は「豚まん」で2位は「赤福餅」です。京都駅でも「赤福餅」は2位に入ります。因みに1位は、「八つ橋」ではありません。抹茶生地のバウムクーヘン「京バウム」です。3位以下も抹茶入り菓子が並びます。京都らしいと言えばそうですが。
 ご当地色より、おいしさと珍しさ、そして何より無難さが、おみやげ選びには優先されるようです。

他業界からの外食市場に参入。目的は収入源やファン獲得

 紳士服大手が相次いで外食市場に参入しています。人手不足、材料費の高騰、衛生管理にクレーム対応などなど、決して楽な商売ではない外食業。アパレル各社が参入する理由は何でしょうか。
 唐揚げ専門店「からやま」やトンカツ店「かつや」をFC展開するコナカ、「焼肉きんぐ」などを同じくFC展開する青山商事。両社とも、今後を見据えた新たな収入源として外食業を選び、その理由として、郊外への出店ノウハウを生かせること、紳士服店と併設することによって空き駐車場を有効利用できることなどを挙げています。
 アパレル会社が外食市場に進出する例で古いのは、「コムサ・デ・モード」の系列の「カフェ・コムサ」でしょう。現在約30店舗を展開。全国に広く散らした出店は、ブランド訴求の役割が強いことを意味しています。ユナイテッドアローズも原宿本店にカフェを併設。今はバーにリニューアルして営業を続けています。自動車会社も飲食店を展開しています。メルセデス・ベンツは東京・六本木の「メルセデス・ベンツ コネクション」において期間限定で1200円のこだわりラーメンを販売、トヨタは安息と上質をテーマにしたスタイリッシュなビストロ「インターセレクトバイレクサス」を青山で展開しています。前者は若者の注目を集めるため、後者はブランドイメージの構築とファン獲得が目的でしょう。
 他業種が、目的こそ違えど外食市場の利用価値が高いと見ている理由は、食が最も生活者との接点が密な必需品だから。加えて、縦横の幅が広く表現方法が無限にあること、またFCという参入しやすく拡散しやすいシステムが構築されているからです。外食市場の活性は望ましいこと。他業界からの参入も新たな刺激剤になります。