学校再開。でもにぎやかな給食時間は戻らず

 小学校が再開され、給食も元に戻りつつあります。休校中、給食が食べられなくなった子どもたちの栄養格差が心配されていましたから、給食の再開は喜ばしいことですが、それでもまだ地域格差があるようです。
 例えば、兵庫県淡路市は7月から月に1度、ハモや淡路ビーフなど地元産の高級食材を使った「夢と希望のふるさと給食」を、全小中学校で提供すると発表しました。地場産業を支援するとともに、子どもたちが故郷に目を向ける機会にしたいといいます。1食分500円を想定していて、給食費との差額は国が新型コロナ対策のために成立させた第2次補正予算などで賄います。
 一方、新型コロナウイルス感染拡大を懸念して、おにぎり、パンとジャム、デザート、牛乳などパッケージされた食品のみを毎日提供している地域もあります。保護者からは、高学年の子どもたちには量が少ない、栄養が足りないといったクレームも出ているようです。給食風景も様変わりしています。以前は机を向かい合わせにしておしゃべりしながら食べていたのが、今は全員が前を向き、静かにいただきます。
 好きな献立、嫌いな料理、おいしいおいしくないは人それぞれですが、多くの人が懐かしく思うのが、友だちと一緒に食べた給食です。1日も早く、学校ににぎやかな給食時間が戻ってくることを願ってやみません。

解除後の飲食店。選択と責任は客側に

 緊急事態宣言全面解除で県をまたぐ移動も自由になり、自粛要請がすべてなくなったという点では、社会環境は新型コロナウイルス発生前に戻ったと言えます。
 飲食店も営業時間を元に戻し、さあここからというところでしょうが、3密を避けて、消毒して、マスクをして、換気をしてと、感染予防対策を前提に営業するとなると前途多難というほかありません。
 ご存知の通り、飲食店の売り上げは、客の数×客単価。40席の店が3密を避けるために20席にしたら、客単価を倍にするか、回転数を上げるしか売り上げを回復させる手段はありません。これはかなり困難なことです。もしそんなことが簡単にできるのなら、コロナ以前にやっているでしょう。
 はっきり言って、新橋のガード下や恵比寿横丁など猥雑さが魅力の場所には、ソーシャルディスタンスもパーテーションも似合いません。客も望まないでしょうし、感染が怖ければ寄り付かなくなるでしょう。結局は、店側の判断というより、客の気持ちによって感染予防対策はなし崩しになるのではないかと思います。
 人は、そんなに長く我慢はできません。私はマスクを着ける度に、ウイルスという見えない存在をいつまで意識して暮らさなくてはいけないのかと心が暗くなります。生活が変わっただけでもストレスなのに、経済が落ち込み、再びデフレに突入し、これから徐々に生活者一人ひとりに影響が出始めます。そんな先行き不安な中、飲食店に求める楽しさの種類は人それぞれです。その選択における権利と責任は客側にあることを考えてもいいのではないでしょうか。

癒しニーズの市場で流行る“手作り発酵食品”

 家ナカ活動が盛んな今、“ぬか漬け”に挑戦する生活者が増えています。腸活、免疫力アップ、美容&健康と、新型コロナウイルス発生後、さまざまなキーワードでもてはやされている発酵食品。それに加え、先行きに不安があり癒しのニーズが高まるとき、安心感とぬくもりを求める生活者の気持ちは“手作り”に向かい、発酵食品作りがブームになります。
 東日本大震災が起こった2011年、“塩麹”がブームになりました。震災後の安全で安心な食品を口にしたいというニーズと、震災直後のモノ不足の経験が加わり、手作り発酵食品がブームになりました。塩麹ブームが一巡した翌12年は、ヨーグルトに調味料を混ぜ合わせて漬け床として利用する“ヨーグルト漬け”が流行りました。14年はレモンを塩に漬ける“塩レモン”が、翌年に消費税10%と軽減税率の導入が予定されていた16年には、ぬか漬けやみそといった伝統的な発酵食品作りに挑む「仕込み女子」が増えました。女性だけではありません。盆栽のように楽しむ定年後の男性や、 ぬかの配合、発酵状態、漬ける素材に徹底的にこだわる「ぬか漬け男子」も登場。ネット上では、SNSにぬか漬け生活をアップし、「ぬか友」同士の情報交換が活発に行われていました。
 今回のぬか漬けブームでは、ぬか床に名前を付けてペット感覚で大事にしたり、自分好みの味わいに育てるのを楽しんだり、トマトやエリンギ、アボカドなど意外な素材に挑戦したり。何度かのブームを重ねて、ぬか漬けの楽しみ方も多様化しています。

農産物の輸出制限。日本の食糧不足が心配

 新型コロナウイルス拡散防止のため、さまざまな国と地域で移動制限措置がとられました。人の行き来ができなければ、農業従事者も農産物を加工する人も不足します。既に一部の農業大国で、農産物の輸出を制限する動きが出ています。
 例えば、世界最大の小麦の輸出国であるロシアは4/26、予定していた輸出業者への割り当てが終了したとして、小麦の輸出の停止を発表。これに合わせるように、ウクライナやカザフスタンも、小麦の輸出制限をかけました。また米の世界最大の輸出国インドは米と小麦の輸出を停止していますし、第3位のベトナムも一時、輸出を取り止めました。
 一方、米国では、密閉が原因で新型コロナウイルスの集団感染が発生。豚肉加工場が次々と閉鎖に追い込まれました。全米食品・商業労働組合によると、5月上旬までの2ヵ月間に全米で30の加工施設が閉鎖され、食肉加工能力が豚肉で40%、牛肉で25%減少したといいます。これを受けてか、米国産豚肉の最大輸入国である日本では、既に豚肉の価格が高騰しています。
 日本の食料自給率は2018年時点でカロリーベースで37%。米はほぼ100%時給できますが、小麦は9割近くを米国、カナダからの輸入に頼っていますし、豚肉の自給率は50%を切ります。食糧は国防。“自国ファースト”が、米国の専売特許ではないことを痛感する日が来ないことを願います。

移動制限で人手不足に。農業に大きな影響

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、世界中で人の行き来が禁止されています。そのしわ寄せが、農業に影を落とし始めています。
 ウイルス発生以降、中国からの野菜の輸入が急減しています。ウイルスが中国で猛威を振るった2月。中国野菜の輸入量は、前年同期比で6割も減少しました。中国国内での移動制限で農業従事者が不足し、出荷が減少したからです。
 欧米では、人手不足はもっと深刻です。米国の場合、人手を南米からの移民に頼る農家が多く、外国との渡航禁止措置が長期化すれば、収穫に大きな影響を及ぼすことは避けられません。農作業だけではありません。農産物を箱に入れる人、それを運ぶ人も、多くは移民です。
 欧州も同様です。フランスの農業は、東欧やモロッコなどからの出稼ぎ労働者によって支えられています。3月下旬、営業中止で働き口がなくなったレストラン従事者に対し、フランスのギヨーム農相が「農業を守る戦いに参加してほしい」と呼びかけたほど。ドイツ政府は、農作物が収穫できなくなると訴える農業団体の求めに応じ、早々に農業に従事する季節労働者の入国禁止を一部解除すると発表しました。
 日本でも、外国人技能実習生の労働力を期待していた農家は、大変な思いをしているとか。
 中国と米国はアグリテックによる、人手に頼らない農業を進めています。そのスピードが今回の移動制限でさらに加速するのは間違いありません。