商品を買いたいだけなのに。CFの不都合さ

新型コロナウイルス下で大活躍している、クラウドファンディング(CF)。購入型CFを運営するマクアケは、2020年9月期の購入総額が前期比で2.7倍増えたといいます。
製品を開発したり活動を始めたりした経緯、そこへの熱い思いなどを伝え、共感した生活者から資金を集め、のちに製品や活動報告を送るなどの循環が生まれるのが一般的なCFの仕組みです。アイデアはあっても開発する資金がない個人や中小企業が利用するケースが多いのですが、最近は大手企業も、生活者の反応が分かる、共感を得やすい、ファン作りができるなどの理由で、新商品の試験販売にCFを利用しています。
私も大手食品会社の“ある商品”が欲しくて、CAMPFIREというCFサイトを利用しました。最初にアクセスしたときは限定数に達していないのに“0ut of stock”。暫くすると第二弾のお知らせが入り、即支援(購入)しました。その後の報告では、第二弾は1日を経たずして完売したそう。そして第三弾があるかもと思わせぶりな言葉も。後日やはり、第三弾のお知らせが入りました。
私は、この商品に興味を持っただけで、食べてもいないのに共感はできません。もちろん会社を応援する気持ちも今はありません。ただ商品を試してみたいだけです。普通にECサイトで販売してくれれば、もっとラクに買えるのにと正直、思います。CFを利用する側の思惑がちらついて、素直に買いたい生活者をイラッとさせるのはいかがなものかと。その後、CAMPFIRE経由で食品会社からメッセージが数回届き、CAMPFIREのネット広告がポンポン。「廃棄せざるを得ない肉」から「難病を患った犬」まで、支援を求める声声声。それを無視し続けているうちに、自分が人非人に思えてくるのもいかがなものかと。

新商品を試食するときの心得

 新しい商品を試すとき、その食品に何を期待するかによって、評価が大きく変わります。
 mizkanグループの「ZENB(ゼンブ)」ブランドから、黄エンドウ豆のヌードルが発売されました。パスタやうどんに比べて食物繊維とタンパク質が多く、糖質が少ないのが特徴です。
 私の勝手な思い込みは、「うどんやパスタのように食べられるヘルシー麺」。しかも米国で代替肉の素材として利用されているアレルギーの心配が少ないエンドウ豆が使われていることに、余計な好意が生まれました。
 添付のレシピブックでまず勧められた食べ方は、「たまごかけヌードル」。ゆでたZENBヌードルに生卵をのせてしょうゆをかけるだけのシンプルな食べ方です。「まずはこれで、素のおいしさに感動して欲しい」というMizkanからのメッセージを強く感じ取り、その通りにいたしました。これがいけなかった。粉っぽくて豆臭い。「(ゆで湯に)塩を入れなくてもおいしく食べられます。」とあるので、そろそろ血圧が気になる私は、このメッセージも有り難く受け取り、その通りにいたしました。これもいけなかった。濃い味のソースをかけたり、焼きそば風に料理したりするのならいいのですが、「たまごかけヌードル」や、同梱されていたやさしい味わいの「きのこベジクリームソース」をかけると、味がぼけるのです。“釜玉うどん”や“クリーム仕立てのパスタ”を期待した時点で齟齬が生じているのです。
 知人は、豆の香りが拡がっておいしかったと。因みに、塩を入れてゆでたそうです。私も豆は大好きです。でも頭の中は、うどんやパスタ。だから「粉っぽくて豆臭い」と感じてしまうのです。「エンドウ豆の加工食品」と思って食べれば、「豆の味がしっかり出ていておいしかった」と、感想も違っていたことでしょう。

売上確保の手段 “ゴーストFC”。慎重な選択を

 青山骨董通りのニッカウヰスキー本社ビル地下1階に「パブレストラン うすけぼー」があります。オープンは1982年。レンガの壁、Nikkaの文字が彫られた椅子、帆船の模型、ウイスキーが並ぶバーカウンターなど、昭和のモダンな面影が店内の至る所に感じられるなかなか趣のある空間です。
 たまにランチに行くのですが、先週月曜日に行ってびっくり。表に、「旭川味噌ばんから」の看板と開店祝いの花が。どうやら、株式会社花研が展開する「ばんから派出所」、つまり、ばんからラーメンのゴーストフランチャイズに加盟したようです。ラーメン待ちの客にラーメンが一斉にサービスされると、私の周りは一気にトンコツ背脂の匂いに包まれました。食べていたカキフライの味も変わりそうな強さです。
 ランチタイムとはいえ、香りにこだわるウイスキーをウリにしている「うすけぼー」が、トンコツ背脂の匂いを充満させていいものなのか、厨房に匂いと脂がこびりつくのではないかと、何だか心配になりました。
 金曜日、もう一度行ってみると落ち着いた雰囲気に戻っていました。店員によれば、ラーメンとランチメニューのオーダー比率は6対4。ラーメン導入でランチメニューを大幅に削ってのこの比率。ランチメニュー、かなり健闘しています。時短営業要請解除後もラーメンを続けるのかと聞くと、“しばらくは。ただランチメニューは元に戻していく”とのこと。
 パブレストランなのに夜の営業が充分にできない大変さはよく分かります。売上確保のためにいろいろな手段を講じることも大切です。でもその手段が、自店の魅力を損なわないとも限りません。知り合いの年嵩の男性は、「キープしているボトル、返してもらおうかな」と冗談とも本気ともつかぬことを。気持ちは分かります。

カジュアルイタリアンのチャレンジメニュー、餃子を堪能

 会社の近くにカジュアルなイタリアンレストランがあります。週に1、2回ランチに行きます。ランチも人気ですが、ディナーも貸し切りや近隣のお客様のちょい飲みで賑わっています。
 1/8に発出された夜8時までの営業自粛要請。どう対応しているのか聞くと、客数が予想しづらいためディナー用のメニューは休止してランチメニューの延長で対応。加えて、カレーと餃子をディナー向けに開発したとのこと。
 カレーは分かりますが、餃子???。聞けば、豚肉とラム肉の2種を用意しているそう。どんな餃子なのか、興味津々。先週、店が空いている夕方を狙って食べに行きました。
 豚肉は焼き餃子が、ラム肉は水餃子がおすすめとか。ならばと、その通りに3個ずつオーダーしました。ラム肉の水餃子には、ローストしたナッツ、ごま、スパイスをブレンドした中東発祥のデュカがかけられていて、スパイスの香りがラム肉にぴったりでした。中東では、肉と言えばラムが一般的。合うワケです。肉汁がジュワーッと溢れ出し、そのままでとてもおいしくいただきました。豚肉の焼き餃子も、肉々しくて具のボリュームたっぷり。皮が重たくないので、炭水化物ではなくタンパク質を摂っていると感じられます。
 聞けば、お土産に生餃子を求めるお客様もいらっしゃるとか。“餃子がおいしいイタリアン”が近くにあるのはうれしいこと。飲食店の試行錯誤やチャレンジが、新しい魅力を作り出しています。
 どうしても確かめたくて、ラム肉の焼き餃子と豚肉の水餃子も3個ずついただきましたが、やはり、おすすめが正解でした。