「生娘をシャブ漬け」。発言内容よりも気になること

 吉野家の常務取締役企画本部長の「生娘をシャブ漬け戦略」の発言。驚きと共に、さもありなんとも思いました。
 ネットの報道では、“シャブ”という反社に繋がる名称を使ったこと、女性に対する人権侵害と性差別的な発言に当たること、牛丼を中毒性のある食べ物のように表現したことなど、さまざまな批判の声が挙がっていますし、吉野家も発言内容について謝罪をしています。お客様に対してはそれでいいでしょう。でも、この問題で私が最も気になったことは、発言内容そのものではなく、そのような発言が飛び出した理由です。
 私は長らく、食品会社や外食会社など食関連企業の方と一緒に仕事をしてきました。ときどきその中に、食に興味がない、食の仕事が好きではない、食をモノとして扱う、人(顧客)を愛していないと感じる方がいます。あくまで私感ですが、そのような方は、市場や人を見るより、数字のマーケティングがお好きな傾向にあるような。
 私は、「食」と「人(顧客)」に対して愛情を持つことが、食に携わる人間に求められる最低限の条件だと思っています。食は人を健康にし、笑顔にし、心を満たし、育てます。加えて、地球環境や人権、経済、文化、歴史、宗教などとも深く関わっています。そのぐらい広く深い存在です。愛情がなくてはできません。
 マーケティングの現場では、顧客の「囲い込み」という言葉が頻繁に発せられます。この時点で既に、人(顧客)に対する強制が肯定されているような気がして仕方ありません。