選挙運動と炊き出し

 立候補者を一度も生で見ることなく、主張を聞くこともなく、衆議院選挙が終わりました。夜8時から一斉に始まる選挙結果速報番組。作り置いたチリビーンズをつまみにバーボンを飲みながらずっと見ていました。自分が1票を入れた立候補者は当選したのか、政党は議席を伸ばしたのか。もちろんそれも気になりますが、何より、投票率の高低や票を集めた政党、落選した議員や健闘した立候補者に興味があります。生活者の気持ち、空気感が分かるからです。

 私は、選挙というと炊き出しの光景を思い出します。子どもの頃、政党支援をしている組織に属している夫を持つ妻たちが集まって、おにぎりや煮物などを作っていました。冠婚葬祭や祭りと同じような光景です。昭和時代の女性たちは、炊事で選挙運動を応援していたのです。

 今は、もちろん仕出し弁当。しかも、有名な料理店の弁当を集めたサイトもあり、いろいろなお店の味が楽しめます。ただし公職選挙法で、選挙運動員や労務者への弁当の提供は、1食につき1000円、1日につき3000円が上限になっています。しかも、提供できる弁当の数は候補者1人当たり15人分。掛ける3食で45食に、掛ける告示から投票日までの日数の範囲内と定められています。つまり誰がどの弁当を食べたのか、きちんと管理しなくてはいけないということです。過酷な選挙運動の日々、作り立ての温かい料理で元気付けてあげようという意味では、炊き出しもありなのでしょうが、食材費などの経費を食べた人数で割って、厳密には、誰がどの程度食べたのかを把握する必要もあり、現実的ではありません。活気に溢れた選挙運動と炊き出し。もう見ることのない光景です。