人手不足の小売・外食業界に起こる機械化の波

 好景気でもないのに、小売・外食業界では、相変わらず人手不足が深刻な問題になっています。この問題を解決すべく、機械化が進んでいます。
 今、急拡大しているトンカツ・カツ丼市場。松屋フーズが展開する「松乃屋」の伸長を支えているのは、オートフライヤーです。衣を付けた豚肉を油の中に入れると、ベルトコンベヤー式または水車のような回転式で豚肉が自動的に揚げ上がる機械で、注文から5分で提供できます。イオンはショッピングセンターに、自動走行機能付きの業務用ロボット掃除機を400台導入します。夜間の床清掃を無人化することで人手不足を解消。同時に、年間1億5000万円の経費削減が可能と試算します。
 オーダーをタッチパネル式に転換するのは、「鳥貴族」。導入コストは1店当たり200万円程度かかりますが、その分、1~2人店員を減らすことができ、加えて混雑時にもオーダーがしやすくなることで、客単価が上がると見ています。一方、すき家が導入するのは、金庫一体型のレジです。売上金のデータが本部に送られるのはもちろん、売上金は自動で金庫に保管され、保管された売上金は警備会社が集金してくれます。これまで手作業で行っていた売上金のチェックや金融機関への入金作業などが不要になり、人件費の削減に繋がるといいます。
 スーパーやコンビニなどの小売店、ファストフードや居酒屋などの外食店は、経験のない主婦や学生でも入りやすい労働の場として重宝がられ、家庭経済の一端を支えてきました。一億総活躍社会の呼び声とは裏腹に、熟練者しか活躍できない労働市場が着実に広がっています。

ウーバーイーツを試してみました

 米国の配車アプリ大手「ウーバーテクノロジーズ」が港区と渋谷区で始めた、料理宅配の仲介サービス「ウーバーイーツ」。早速、試してみました。
 まずスマホにアプリをダウンロード。名前や住所、クレジットカード番号など基本情報を入力します。いよいよ食べたい料理を検索。インド料理、イギリス料理、カレー、刺身、チョコレート、朝食、ヘルシーとカテゴリー分けもユニーク(?)。ひとつの店舗がいろいろなカテゴリーに属しています。繁忙時やランチとディナーの間の時間など、デリバリーの料理を作れないときは「休業」も可のようで、「次回のご注文開始は午後5時からです」というメッセージが掲載されています。
 私は、イタリアンの中からまったく知らない店舗をチョイスしました。オーダー確認の画面の後、「準備しています」→「配達しています」とメッセージがあり、配達員が今どこにいるのか、地図で確認することができます。オーダーから到着まで約40分。料理はそこそこおいしく、冷めてもいません。キャンペーン中ですから配達料金もなし。プロの味を家で味わえる点はいいと思いますが、包材に盛り付けられた料理の貧弱さは、やはり否めません。店で食べるときと同じ金額に見合うかと言えば、疑問です。配達員は江東区から来ていて、ずっと港区と渋谷区を回っているのだとか。もはや本業です。
 料理宅配で知った店に実際に行ったことのある人は、2-3割と言います。基本的に短時間で配達できる近隣の店しかオーダーできませんから、店の存在を気付かせ、来店に繋げる効果は大きいのかもしれません

米国の料理宅配サービス上陸

 アメリカの配車アプリ大手「ウーバーテクノロジーズ」が、料理宅配の仲介サービス「ウーバーイーツ」を日本で始めました。同社は6月、日本で初めて一般の人が運転手となり、客を有料で同乗させる、いわゆる白タク事業を、京都府京丹後市で始めたばかり。タクシー業界の強い抵抗に遭い、苦しいスタートを強いられています。
 料理宅配エリアは、渋谷区と港区が中心で順次拡大していく予定です。配達員は、こちらも一般の人。審査を受けた個人がドライバーとなり、好きな時間に自転車か125cc以下の原付きバイクで配達をします。すでに、「大戸屋」や「焼肉トラジ」など150以上の飲食店が加盟。1000人以上がドライバーとして登録しているといいます。料理の金額は、来店時とほぼ同じ。配達料は当面無料で、「ウーバーイーツ」が負担。認知と拡散を図ります。
 同様のサービスをすでに展開しているのは、宅配寿司「銀のさら」や宅配御膳「釜寅」を運営しているライドオン・エクスプレス。「ファインダイン」という名称で、最低配達金額を2000円程度に設定、配達手数料として合計金額の15%を申し受けます。こちらの場合、宅配システムをフル活用できる意味では資産の有効利用と言えます。
 2014年、LINEが「LINE WOW」という同様の出前サービスを始めましたが、わずか1年足らずで撤退しています。「ウーバーイーツ」はいかに。現在加盟している外食店の6割が宅配は初めてとか。同じ料理でも、皿に盛り付けるのと使い捨て容器に盛り込むのとでは、商品価値はぐんと変わります。また一般人の配達員に、料理を運んでいるという自覚を徹底させることはできるのでしょうか。とにかく一度、利用してみましょう。

食べログの信頼感が揺らいでいる

 グルメサイト「食べログ」の評価疑惑が、ネットや週刊誌で話題になりました。
 炭火で焼き上げるラムチョップが自慢の外食店「ウルトラチョップ」全4店の‟食べログスコア”が、あるとき一斉に3.0にリセットされたことから話は始まります。オーナーは、その前に食べログの営業担当者から、ネット予約を利用して欲しいなど売り込みを受けていて、それを断ったという経緯があります。3.0にリセットされたとき、営業担当者から連絡が来て「食べログのネット予約を使ってもらわないと検索の優先順位を落とします」と言われたとし、「仮にも飲食業界でビジネスするのならばもう少しお客様やお店や業界全体に資する気概はないのかねぇ…(苦笑)」とブログに綴っています。単なる偶然とも思われますが、4店舗すべてが一斉にという点が、疑惑を呼びます。この話題がネット上で拡散すると、食べログを運営するカカクコムの株価は急落。一時、前日終値比で10.68%安になる場面がありました。
 食べログは、あくまでも一般の生活者が、お店の評価をする仕組み。だから信じられるという人も多いのではないでしょうか。一人の評論家の意見よりも普通の人の多数決。いかにも日本人らしいと思います。でもそれが、運営会社の利益のために改ざんされていたとしたら、点数を付け、口コミを投稿してきた人たちの善意の気持ちを踏み躙り、評価を頼り、口コミを信じて店選びをしてきた人たちを裏切ることになります。
 今回の騒動、真偽のほどは分かりませんが、「然もありなん」と思った生活者は少なくないと思います。食べログにとって、今後、ジャブのように効いてくる打撃であることに違いないでしょう。

フードの充実は必要?  今どきカラオケ事情-2

 前回に引き続き、今回もカラオケについて。
 先日ある会社から、カラオケチェーンの「まねきねこ」について相談を受けました。フードとドリンクに関して、リニューアル提案をしたいとの要望です。都内ではあまり見かけない「まねきねこ」は、北海道から沖縄まで広いエリアに400店舗を展開。今年はいよいよ1都3県に積極的に進出する計画で、300店舗増を目指しています。「まねきねこ」の特徴のひとつは、室料が低価格であること。店舗にもよりますが、平日午前中は1時間20円(ワンドリンクオーダー制)です。もうひとつは、フードもドリンクも持ち込みができること。近くのコンビニやスーパーで、惣菜やビールを買って入店するお客様が多いそうです。これにより、厨房にかける経費や人件費が抑えられ、大変利益率の高い商売をしています。
 一方、全体の約3割の店舗を閉鎖すると発表したシダックス。本業が外食、給食ですから、料理に関しては専門家。ファミリーレストランのような充実した食事メニューを揃えています。過去、節約志向の生活者が、カラオケ1店で食事も飲みも歌も済ませてしまうという使い方をしていたときは、よかったのですが、歌うことが唯一の目的で使われるようになった近年は、メニューの充実が経費を増大させる原因になってしまいました。
 先出の会社は、「まねきねこ」の本格的東京進出に当たり、他カラオケチェーンのようなおしゃれなメニューを揃えた方がいのではないかと思っているようでした。弊社の仕事がひとつなくなるかもしれませんが、私は、「まねきねこ」は、今のままのビジネススタイルをベースに展開した方がよいと答えました。

“歌う”だけじゃない 今どきカラオケ事情-1

 つい最近、カラオケチェーン大手のシダックスが、全体の約3割の店舗を閉鎖すると発表。SNSで人と繋がるイマドキの若者は、カラオケなんて行かないのかも・・・などと思っていたら、大間違い。ここ5年連続で市場はじわりと拡大しているそうです。その原動力となっているのは、なんとその「SNS」と「シニア」、「スターの卵」です。
 第一興商は、カラオケで歌う動画を専用のサイトに公開できるサービスを展開。YouTubeではちょっと恥ずかしいという人も、会員のみの公開だから参加しやすいといいます。「シニア」にも、カラオケ好きが増えています。同世代の仲間と、あるいはひとりだけで楽しむ人が増加。シダックスは、‟ゆったりランチ”と銘打ち、和食や丼メニューをルーム料金込みで安く提供したり、第一興商は、カラオケ機器を使って体操などのプログラムを実施したりと、シニア向けサービスを充実させています。また優勝者がプロデビューを果たした、テレビ東京の「THE カラオケバトル」の盛り上がりを見ていると、カラオケが「スターの卵」の孵卵器になっているのもうなずけます。
 さらに、住宅事情で友だちと騒げる場所がないという学生や、踊りや楽器の練習をしたいという人にも、カラオケ店はうってつけのようです。東京急行電鉄は、カラオケチェーン「パセラ」の個室を仕事場として提供するサービスを開始。カラオケ用のモニター画面をパソコンに接続すれば、会議室やプレゼンテーションルームとしても使えるといいます。
 新曲をいち早く取り入れ、コスプレ衣装もあれば、おひとり様対応も充実しているイマドキのカラオケ。機器メーカーと店側の企業努力が、市場を成長させています。

節約志向の市場にはまる「スパイシー」

私は、今年のトレンドキーワードのひとつに「スパイシー」を挙げています。スパイスが利いた“ピリッと辛い味”も人気ですが、それに加えて、スパイス本来の味や香り、スパイスの持つ美容や健康への効果に注目。“辛さだけじゃない”スパイスの魅力に目覚める生活者が増えているのが今年流です。
 外食市場では、お酒と共にスパイスを使った料理を楽しむ‟スパイスバル”が増えています。いずれの店も、カレーはもちろん、すべての料理にスパイスを使用しているのが特徴。中でも、スパイスとジンの相性のよさに着目して30種類以上のクラフトジンを揃え、それらを使ったスパイスカクテルも提供する店や、黒糖梅酒にクローブやカルダモンを漬け込んだ‟スパイス梅酒”を提供する店などが人気です。
 加工食品では、スパイシーなテイストや多種のスパイスを使用していることをウリにした商品がたくさん出ています。ジンジャーエキスに数種のスパイスをブレンドした“濃縮辛口ジンジャードリンク”が注目されていますし、スパイス料理の代表格「カレー」は、スパイス感をより際立たせる“スパイシー化”が加速していて、本格派を謳う商品が続々発売されました。
 近年日本では、食の多様化に伴い、調味料や香辛料の消費量は確実に増加しています。また米国においても、「スパイシー」は今年の外食トレンド予測のひとつに挙がっていて、特に、コチュジャンや七味唐辛子など、アジアの調味料や香辛料が好まれています。高価な食材を使わなくても、ほんの少量で料理の味わいを劇的に向上させ、ヘルシー感やおしゃれ感までプラスしてくれるスパイスは、まさに、魔法の調味料。節約志向が強い市場に、ビタリとはまる食品です。

“炭水化物の重ね食べは控えるように”大阪府がお達し

 大阪府は8/2、「大阪版健康・栄養調査」の結果を公表。その中で、麺類やお好み焼きなどとご飯類を一緒に食べる炭水化物の重ね食べを「大阪でよくみられる食べ方」とし、肥満体型の人に重ね食べを控えるように呼びかけたことが波紋を呼んでいます。ネット上では、「大きなお世話」「好きなもん食べたらええ」「おいしいからしゃあないだろう」と非難轟轟。コナモン文化を愛する大阪人にとっては、見過ごせないお達しだったようです。
 お好み焼きやたこ焼きをおかずにご飯を食べる――。大阪人ではない私にとって、この食べ合わせにはやや違和感を覚えますが、炭水化物の重ね食べは、何も大阪特有の食文化ではありません。そばにミニ丼や丼にミニそば、うどんにいなり寿司、ラーメンライスやラーメンチャーハン、焼きそば定食にはご飯が付きます。パスタランチにはパンが添えられ、ピザとパスタのハーフ&ハーフのセットも珍しくありません。
 大阪の調査結果によると、BMIの高い“肥満”の男性の約71%、女性の約56%が週1回以上炭水化物の重ね食べをしているそうで、1日1食以上重ね食べをする強者は、なんと男性の26.8%、女性の26.0%。4人に1人です。他自治体の調査結果がないので比較はできませんが、この数字に関しては、おそらく大阪府がダントツでしょう。
 糖質制限ダイエットがブームの今、この数字を叩き出せる大阪ってやっぱりすごいと思います。

生活水準を的確に表せなくなった日本のエンゲル係数

 近年、エンゲル係数が上昇しているのをご存知ですか。エンゲル係数とは、消費支出に占める食費の割合を示したもので、生活水準の目安となる数値です。戦後下がり続けてきた数値は、2005年の22.9%を底に上昇。昨年は25%を超えました。
 なぜ近年、急ピッチで上昇しているのでしょうか。大きな流れとしては、共働き世帯と単身世帯、高齢者世帯の増加があります。食の内製化が減少。代わりに惣菜の購入や外食の利用が増えています。さらに、高くても安全で健康にいいもの、おいしいものを食べたいという安全・健康・グルメ志向もエンゲル係数を押し上げる要因になっています。短期的な理由としては、収入の伸び悩み、消費増税による可処分所得の減少、円安による輸入食品や飼料の価格高騰などが考えられるでしょう。
 ただ、エンゲル係数が生活水準を的確に表すとは言い難い側面もあります。例えば、バブル崩壊後の1993~2004年。生活水準は確実に低下していたのに、エンゲル係数は約3ポイント下がりました。なぜなのか。実はこの時期、パソコンや携帯電話などの情報通信機器の利用が一気に広がったのです。それまで通信機器と言えば、電話とファックス程度だったのが、インターネットやメールで情報のやり取りを行い、外出時でも電話で用件を伝えられるようになりました。
食費に使うはずだった費用が、通信費に回されたのです。今でも家計調査をすると、節約したい支出として食費、外食費が必ず上位に並ぶ一方、節約したいができない支出として通信費が挙がります。
 ところで、今年の調査では、支出を「増やしてもいい項目」でも「抑えたい項目」でも「食品」は3位に入りました。節約志向が続く中、生活者はどんな食を節約し、どんな食にお金を使うのか。まさに二極化する市場において、ポジショニングの見極めがますます重要になっています。

サンマが食べられなくなる前に、積極的な施策を

 関東地方は、39℃を超えそうな連日の猛暑。地球がおかしくなってしまったのではと、とても心配になります。
 そんな心配が悲しみに変わる情報がありました。サンマです。東京・築地市場のサンマの初セリで、1kg当たり2万5000円、1匹当たり3300円という過去最高値が付きました。北海道沖で獲れるサンマの量が大幅に減少しているためです。サンマが大好きな私にとって、こんなに悲しい話はありません。卸売業者は「大型船の漁が解禁される秋以降は値段が安くなる」とみているようですが、近年、日本で獲れるサンマの量は確実に減少し、魚体は小さくなっています。
 原因のひとつが温暖化です。海水温が上がると、冷たい水を好むサンマが日本周辺の海域に来なくなってしまうのです。加えて、海面に近い水が温まると、栄養塩が豊富にある深海水と混合しにくくなり、サンマのエサになる植物プランクトンが減ってしまいます。因みに、海水温が1℃上昇するとサンマ1尾の平均重量が約7%(約10g)減少するという計算も出ています。もちろん、台湾や中国、韓国などでサンマが人気の食材になり、サンマ漁が急増していることも大きく影響しています。今年7月発足した北太平洋公海の漁業資源保護を話し合う「北太平洋漁業委員会」では、日本、カナダ、米国、ロシア、中国、韓国、台湾と7つの国と地域が参加し、話し合いを行っていますが、各国の利益に関わる問題だけにスムーズにはいかないようです。
 海の恵みに助けられてきた日本。魚が自由に食べられない日が来るなんて、思いもしませんでした。海の資源を守るために、温暖化対策と漁場保護に対して、日本がリーダーシップをとって積極的に取り組んで欲しいと思います。