おみやげ選びはご当地名物より無難さを優先

 JR名古屋駅構内の売店で昨年4月から中止されていた浜松名物「うなぎパイ」の販売が、9月から再開されました。8月下旬、「名古屋駅の売店からうなぎパイがなくなっている」という投稿がきっかけでSNS上で話題になり、再開が決まりました。‟おみやげは名古屋のご当地物で揃えたい”という東海キヨスクの熱い思いが否定されたのです。確かに「うなぎパイ」は、浜松の銘菓。ならば伊勢名物の「赤福餅」を売っているのはなぜ?という疑問が残ります。
 改めて考えてみれば、ご当地名物が人気のおみやげだった時代ははるか昔です。川越の芋菓子、信州の栗菓子などは産物を利用したおみやげ、仙台のずんだ餅や新潟の笹だんごなどは当地の食文化から生まれたおみやげです。横浜の焼売や長崎のカステラは歴史的な背景があります。それらのいずれでもなく、おみやげとして開発された商品が、今は圧倒的に多くなっているのです。例えば、東京の「東京ばな奈 見ぃつけたっ」、仙台の「萩の月」、札幌の「ロイズ 生チョコレート」、博多の「博多通りもん」などは、おみやげとしての認知度がかなり高い商品ですが、ご当地ならではの特徴があるかと問われれば、首を傾げざるを得ません。さらに言えば、静岡駅の1番人気は、「安倍川もち」ではなく「うなぎパイ」。名古屋駅の一番人気は「赤福餅」、新大阪駅の一番人気は「豚まん」で2位は「赤福餅」です。京都駅でも「赤福餅」は2位に入ります。因みに1位は、「八つ橋」ではありません。抹茶生地のバウムクーヘン「京バウム」です。3位以下も抹茶入り菓子が並びます。京都らしいと言えばそうですが。
 ご当地色より、おいしさと珍しさ、そして何より無難さが、おみやげ選びには優先されるようです。

他業界からの外食市場に参入。目的は収入源やファン獲得

 紳士服大手が相次いで外食市場に参入しています。人手不足、材料費の高騰、衛生管理にクレーム対応などなど、決して楽な商売ではない外食業。アパレル各社が参入する理由は何でしょうか。
 唐揚げ専門店「からやま」やトンカツ店「かつや」をFC展開するコナカ、「焼肉きんぐ」などを同じくFC展開する青山商事。両社とも、今後を見据えた新たな収入源として外食業を選び、その理由として、郊外への出店ノウハウを生かせること、紳士服店と併設することによって空き駐車場を有効利用できることなどを挙げています。
 アパレル会社が外食市場に進出する例で古いのは、「コムサ・デ・モード」の系列の「カフェ・コムサ」でしょう。現在約30店舗を展開。全国に広く散らした出店は、ブランド訴求の役割が強いことを意味しています。ユナイテッドアローズも原宿本店にカフェを併設。今はバーにリニューアルして営業を続けています。自動車会社も飲食店を展開しています。メルセデス・ベンツは東京・六本木の「メルセデス・ベンツ コネクション」において期間限定で1200円のこだわりラーメンを販売、トヨタは安息と上質をテーマにしたスタイリッシュなビストロ「インターセレクトバイレクサス」を青山で展開しています。前者は若者の注目を集めるため、後者はブランドイメージの構築とファン獲得が目的でしょう。
 他業種が、目的こそ違えど外食市場の利用価値が高いと見ている理由は、食が最も生活者との接点が密な必需品だから。加えて、縦横の幅が広く表現方法が無限にあること、またFCという参入しやすく拡散しやすいシステムが構築されているからです。外食市場の活性は望ましいこと。他業界からの参入も新たな刺激剤になります。

最近、恵比寿で人気です。“天ぷらバル”

 東京恵比寿では今、カジュアルな天ぷらバルが人気です。いずれの店も、定番の素材から創作的なネタまで、揚げ立てがリーズナブルにいただける、新種の天ぷら屋さんです。
 その中の1店が、「喜久や」。カウンターが板場を囲む立ち飲みスタイルですが、雰囲気は女性向き。飲み物は、スパークリングから日本酒、焼酎と揃い、この時期うれしいヒレ酒もあります。人気のネタは、大根、エビ、イカ、カキ、万願寺。エビ以外はふたりでシェアできる大きさで、200円から300円台。大根には、おでんだしが浸みています。タラ白子、辛子明太、ウニも天ぷらになり、パクチーはかき揚げになって提供されます。
 カウンター越しの板場では、天ぷら職人が、オーダーが入ったネタを次々に揚げていきます。江戸時代の寿司が“つまみもの“だったように、揚げ立ての天ぷらを立ち飲みでいただく。長っ尻はいけません。さっと頼んでとっとと飲んで食べて出る。そんな使い方がぴったりの店です。因みに、13坪で月商630万円。2020年までに首都圏を中心に22店の出店を目標にしているそうです。
 他にも、創作系のネタをカリフォルニアワインと楽しむ「EBISU FRY BAR」や、イタリアンやスパニッシュをベースにした料理が揃う「テンプラ ワバル」など、ユニークな天ぷら屋さんが続々オープンしています。
 家庭で揚げ物をしなくなり、トンカツやから揚げのFFが急増しています。天ぷらも同様。食材が多い、カラッと揚がらない、揚げている間に食欲がなくなる、揚げている人は揚げ立てが食べられない。揚げ物の中でも天ぷらは難度が高い料理。吟味されたネタを揚げ立てで、しかも手頃な値段で食べられるのなら、ウケないはずがありません。

健康志向のスーパー「ビオラル」。メッセージ力のある売り場作りを

 ライフコーポレーションが6月、大阪・西区にオープンさせたBIO-RAL(ビオラル)。“心も身体も健康で美しく豊かな毎日を過ごしてもらいたいと願うスーパーマーケット”をコンセプトにした新業態です。「オーガニック、ローカル、ヘルシー」と「安心、トレンド、高質」をテーマに、通常取り扱う商品を最低限にし、その分、自然派や健康志向の商品を増やしているのが特徴です。
 この種の業態の難しさを見事に表しているのが、野菜コーナー。「通常の野菜」「オーガニック」「農家さん直送」  
「特別栽培・エコファーマー」と4つの種類で展開されています。「農家さん直送」はほぼ和歌山県の農家から直送されていて、栽培者の顔写真がパッケージに貼られています。そこになぜか群馬県産のよく見るパッケージのほうれん草が。価格は、198円。近くにもう1種、「飛騨ほうれんそう」と書かれたものが258円で売られています。POPに小さく「エコ農産物」とあるだけ。「野菜でエコってどういう意味?」そう思う生活者は多いでしょうね。「農家さん直送」コーナーに、フツーのほうれん草があるのは、その時期、契約農家で収穫できなかったものに関しては信用できる地域の農協から仕入れているからだそう。それなら、「通常の野菜」コーナーに並べたほうが、お客様が混乱しないと思うのですが。
 お客様に、商品を通して安全安心と健康を届けたいという気持ちはあっても、それを的確に伝えるのはとても難しいことですし、商品を安定的に供給することも同様に簡単ではありません。モノは調達できても、伝える力がないと売れないのが、この手の商品。売り手の思い込みが強いほど、お客様との温度差が生まれがちです。もう一度スタートラインに戻り、商品自信が強いメッセージを放つような売り場作りを再検討すべきでしょう。

フランスの冷凍食品専門店 Picard 日本1号店がオープン

 フランスの冷凍食品専門店「Picard(ピカール)」の日本1号店が、11/23に東京・青山の骨董通りにオープン。早速、行ってみました。
 店内は、壁際に縦型、中央に置き型の冷凍ショーケースを配しただけのいたってシンプルな造り。装飾類は一切ありません。パッケージングされた冷凍食品がショーケースに並べられているだけです。ショーケースのガラス越し、しかも曇っているので、魅力的なはずのフランスブランドの商品パッケージがよく見えず、発せられるアピール力は強くありません。
 商品は、アペリティフからメインディッシュになる肉や魚の料理、パスタやラザニア、パン、デザート、冷凍野菜などの素材系まで約200種。ひとりのランチ、家族との夕食、友達を招いてのパーティ。どんなシチュエーションにも対応できるバラエティ豊かな品揃え。しかもすべてが凝った料理で、見た目も美しく、オシャレ感満載です。実際、ランチ時には近隣のOLたちがパスタなどを求めていました。
 私もランチ用に“白トリュフとシャンピニオンのタリアテッレ”と“クロワッサン(10個入り)”を買いました。前者は500Wの電子レンジで7分加熱、後者は180度のオーブンで25分焼きます。価格は、両方とも780円。お気付きの通り、毎朝焼き立てのクロワッサンを食べたければ、30分早く起きてオーブンを温める習慣を身に付けなくてはなりません。ラザニアやグラタンなど、電子レンジでも加熱できますが、やはりオーブンで焼いた方がおいしく仕上がります。
 冷凍食品はレンチンか自然解凍。それが当たり前の日本において、オーブンで焼くという作業を、面倒と思うのか、優雅な過程と思うのか。食の付加価値がまたひとつ試されます。

野菜価格高騰で有り難味が増すカット野菜と冷凍野菜

 秋の台風、長雨、日照不足が原因で、野菜価格が高騰。11月には落ち着くと言われていましたが、なかなか下がりません。
 よく行くスーパーの場合、未だに、大根や人参、ねぎ、ピーマン、じゃが芋などは割高感を感じますし、レタスは1人1個までなど、個数制限が付くこともあります。一時期よりは下がってきましたが、白菜も例年より高く、ねぎの高値も手伝って鍋料理の選択にも知恵を要します。ニラともやし、キャベツで作るモツ鍋とか、野菜は大根のみのおでんとか。葉野菜が高いとき、子どもがいる家庭の強い味方が、カレー鍋やトマト鍋やシチュー鍋。でも、じゃが芋や人参がなかなか安くならず、今のところ、貢献度はあまり期待できません。
 こんなとき有り難いのが、カット野菜や冷凍野菜です。ちょっとした付け合わせや副菜の一品として、またラーメンのトッピングなど、用途は多岐に渡ります。冷凍のほうれん草やブロッコリーは、どうしても水っぽくなり、軟らか過ぎるのですが、それをどう料理すればおいしく食べられるのか。生の野菜を使っているときには考えもしなかった発想が生まれます。
 そうそう、ピーマンが高かったので、味の素のCook Do青椒肉絲用のカット野菜を購入しました。が、中国産筍水煮の量が茨城県産ピーマンを凌駕していて「竹笋(中国語で筍)肉絲」に。カット野菜会社もピーマン価格の高騰に頭を痛めているのでしょうね。

即食フロアを1階に配したダイエー江坂駅前店

 今年5月リニューアルオープンしたダイエー江坂駅前店(大阪)。気になったのは、通常、生鮮と加工食品など調理食材を配する1階を、即食フロアにしたことです。
 そこで販売されているのは、寿司やおにぎり、サンドイッチ、サラダ、煮魚、唐揚げといったパック惣菜と、その場で盛り付けられるカレーやみそ汁、店内で焼き上げた100円パン、冷凍食品やカップ麺などの加工食品です。23席のイートインスペースがあり、電子レンジ10台、湯沸かしポット2台が置かれています。店内で購入した惣菜やカップ麺をその場で食べることができます。冷凍食品が食べたければ、使い捨ての皿やフォーク、割り箸を無料提供してくれます。
 惣菜は、東京に比べると一様に安く、ボリュームもたっぷり。大阪の人をうらやましく思う瞬間です。100円パンはそれなり。女子にとってパンは嗜好品です。“100円だから”を感じさせてしまう商品ってどうなの?と思います。ちょうど昼食時だったので、イートインスペースは8割ほどの混み具合。おにぎりと惣菜、カップ麺とおにぎりなど、組み合わせはコンビニと変わらないようで、即食に力を入れているスーパーとしては、少し物足りなさを感じます。
 “健康のために毎日手軽に野菜を食べる“というコンセプトで、当初は1階に設置されていたスープベジコーナーが2階に移され、規模も商品アイテムもぐっと縮小されていました。せっかくトレンド性のある展開に挑戦したのに、商品力がなかったのか、展開方法を間違えたのか、あきらめの早さにちょっとがっかりです。そうそう、お酒売り場が2階にありました。今流なら、これは即食フロアでしょう。

サイゼリヤが展開する隣同士ワンコインのパスタ店

 サイゼリヤは10/17、茅場町駅近くにスープパスタのファストフード店「ズッパ・ディ・パスタ」をオープンさせました。メニューは、紙カップ入りのスープパスタとパンのセットで500円(税込み)のみです。スープパスタは、トマト系とクリーム系ときまぐれの3種から1種を、パンは、グリッシーニやフォッカチャ、大麦ブレッドなど4種を、小さな袋に自由に詰められます。席は、小さなカウンターと小さなテーブルのみで4人分しかありません。テイクアウトが基本です。サイゼリヤは、スープパスタと称していますが、どう考えても、パスタスープです。パスタ料理としてのボリューム感はなく、量も少なめ。4種のパンもすべてチープな味わいです。
 隣のビルには、やはりサイゼイヤが運営する「スパゲッティ マリアーノ」があります。こちらは7/7にオープンした、スパゲティのファストフード店です。以前は、「ズッパ・ディ・パスタ」の場所にありました。10種類ほどのスパゲッティ料理を470円から楽しめます。オーダーとともに、レジ横のオープンキッチンで調理開始。ソースをフライパンで加熱しながらスパゲッティと絡め、透明のカップに盛り付け。提供までの時間は、1-2分です。ランチは、これにポテトサラダとおかわり自由のドリンクバーサービスが付いて500円(税込み)。味も量も十分なレベルです。
 「ズッパ・ディ・パスタ」と「スパゲッティ マリアーノ」。隣同士、同じワンコインで満足感は雲泥の差。この実験におけるサイゼリヤの狙いは、何なのでしょうか。

火を囲んで和めるレストランが人気です

 今、キャンプのように薪火や炭火で焼き上げる料理を提供する外食店がブームです。7月には、東京・自由が丘に「Campfired Grill & Café THE BANFF」が、永田町に「Anchor Point」がオープンしました。
 私が注目していたのは、5月に代官山にオープンした「ファロ」。アクアパッツァ出身の樫村仁尊シェフが腕を振います。やっと先週末、行ってきました。店の造りはいたってシンプル。カウンターがぐるりと囲むオープンキッチンの中央に炉があり、ねじり鉢巻きにエプロン姿の樫村シェフが肉や魚介、きのこなどを炭火で焼き上げていきます。おすすめは、もちろん炭火焼き。ロースやタンを塊のまま焼き、切り分けて提供します。塊で焼いたポルケッタも外せません。備長炭の輻射熱を利用したローストは、とってもジューシーで、やさしく火を通した肉のうま味を存分に味わえます。
 樫村シェフは、直火でローストするというシンプルな料理がしたくてこの店をオープンさせたと言います。開店直後、前出のような類似の大型店が次々にオープン。正直焦ったそうですが、逆にトレンドに乗ったカタチになってしまったとか。
 先行き不安な今は、まさに癒しの時代。火を囲んで集える外食店に、お客様は温かな和みのひとときを求めているのかもしれません。加えて、分子ガストロノミーなど難しい料理が流行りました。素材の味を生かした焼きっぱなしのシンプルな料理へ、揺れ戻しが起こったのだと思います。

女子栄養大学。香川綾氏から引き継がれるバイタリティ

 先日、女子栄養大学、短期大学等を運営する香川栄養学園の新理事長就任パーティがあり、学校関係者や協力会社など、約350人が参加しました。
 我が母校である、女子栄養大学。創立者の香川綾氏が「すべての人が健康で、そして幸せであるように」という思いから、昭和8年、自宅を改造して作った教室で、約20人の生徒を集めてスタートさせた「家庭食養研究会」が始まりです。綾氏は、ビタミンB1を含む胚芽を残して精米することで、当時流行っていた脚気を予防できることを発見。食事だけで健康を取り戻せるという新事実は、綾氏にふるえるほどの感激を与えたと言います。綾氏は、「いつかは栄養学の大学を」という大きな目標を持ち続け、昭和10年には「栄養と料理」を刊行。戦禍を被りながらも学びを続け、25年には、念願の栄養学に特化した初めての大学「女子栄養短期大学」の設立に至りました。プロの料理を再現できる料理カード、計量カップ、計量スプーン、四群点数法など、綾氏が残した財産は、今も私たちの食と健康を支えています。
 パーティでは、多くの先輩たちが顔を揃えました。皆さん、女子栄養大学が世に送り出した、食と健康の世界における財産です。食事管理がしっかりしているからでしょう。皆さん、とにかく元気。年齢を意識させないのは、張り切った毎日をお過ごしの証拠です。会話に出てくるのは、会社を設立した、新しい本を出版した、子どもの食教育の場を作った、京都に勉強に行くなどなど、チャレンジと研鑽の話しばかり。少しだけ若い私は、そのバイタリティにただただ驚き、自身の怠慢さを恥じるばかりでした。