“なくてもいいですか”と、ザワつくコメント

 情報提供番組で料理を紹介する場面がよくあります。見ていて気になるのは、出演者の“なくてもいいですか”発言。先日も、ペルー料理店のシェフがスタジオで調理を披露。オレガノを使うシーンでオレガノが家にあるかないかの話題になり、“なくてもいいですか”がまたも飛び出したのです。南米料理でハーブやスパイスを省くなんてありえません。
 学生の時、女子栄養大学主催の「子ども料理教室」でお手伝いをしていました。揚げ物の衣で薄力粉に片栗粉を合わせる段になったとき、保護者から“片栗粉なくてもいいですか”の質問が。先生はきっぱりと“高いものではありません。買ってください”とおっしゃいました。その通りだと思います。せっかく子どもに、安全で、失敗しない、おいしい料理の作り方を教えているのに、なぜそんなところではしょるのでしょうか。
 NHKエデュケーショナルの「みんなのきょうの料理」。作った人のコメント欄を読むと頻繁にザワッとします。“○○がなかったので、××を使いました”“△△がなかったので入れませんでした”“麺つゆで味付けしました”などなど。実に自由奔放。もはや別の料理でしょと突っ込みたくなる投稿も少なくありません。“おいしかったから今回はちょっとアレンジを加えてみました”とか、“塩味が我が家にはやや強かったので塩を減らしました”とかなら理解できるのですが、端から前向きとは言い難いアレンジを加えるのはいかがなものか。せっかくプロが研究を重ねたレシピを伝授してくれているのです。できるだけその通りに作って、思いがけない食材の組み合わせに驚いたり、味わったことのないおいしさを体験したりしたほうが得です。調理の世界が拡がる機会を無にしているようで、もったいないと思うのです。