コロナで変わった2020年の食市場

 2020年は、新型コロナウイルス(以下コロナ)に翻弄された1年でした。今年1月、現在の状況を予想できた人は誰もいないでしょう。
 コロナによって食を取り巻く環境は大きく変わりました。生活者は家で食事をする回数が多くなり、時間に余裕ができたことも手伝って、手作り派が増えました。週末にはちょっと手をかけたこだわりの料理にチャレンジしたり、子どもと料理を楽しんだり、節約を兼ねて野菜作りに挑戦したり。「食」と向き合う生活者が増え、信頼できる生産者から直接野菜を購入するなど、D2Cが農家にまで拡がりました。
 一方、1日3度の食事作りを負担に思う生活者も多く、レンジで加熱してそのまま食べられる簡便食品も売れています。昼はどうしてもご飯や麺料理に偏るため、夕食には野菜を摂りたいというニーズと保存性が高いという点から根菜類が見直され、中でも、何にでも使え、ヘルシー感のある玉ねぎは人気の野菜になっています。免疫力を高めるため腸活に励む生活者が増え、発酵食品、乳酸菌や食物繊維が摂れる食品に再び注目が集まり、ぬか漬けがブームになりました。
 軽減税率導入で、昨年から活発化していた外食の中食化が、コロナによって加速度的に進みました。テイクアウトやデリバリーだけでなく、客席がないゴーストレストラン、シェフが家に来て料理を作ってくれる出張シェフ、厨房に改造したキッチンカーが自宅の駐車場に停車してその場で料理を作ってくれる移動レストラン、レストランから食材が届き、シェフがオンラインで料理を教えてくれるリモートレストランなどなど。一方、冷凍した料理をネットで直接販売する飲食店も登場していて、外食中食内食の垣根が完全に崩壊しました。