シングルモルトのアイラ島。クラフトジンでも注目

 シングルモルトウイスキーにハマった時期がありました。シングルモルトとは、ひとつの蒸溜所で造られたモルトウイスキーだけを瓶詰めしたもの。さまざまな特徴を持つウイスキーをブレンドし、バランスのとれた味や香りを追求しているブレンデッドに対し、蒸溜所の個性やこだわりがそのまま反映されている点が、シングルモルトの唯一無二の魅力です。
 産地は、スコットランド。中でもアイラ島に関しては、行ったこともないのに痩せた泥炭地と暗い海の情景が脳裏に焼き付いていて、それが私の中で、「ボウモア」や「ラフロイグ」といったシングルモルトウイスキーの強烈な個性を増幅させていました。
 そのアイラ島、最近はクラフトジンで注目されています。ジンの名前は、「ザ・ボタニスト(植物学者の意味)」。数あるジンのなかでも、スーパープレミアムジンと称されています。
 ジンの主原料は、大麦、ライ麦、とうもろこしなど。そこにジュニパーベリー(ネズの実)やボタニカルと呼ばれる薬草やハーブを加えて蒸溜するのが特徴です。一般的なジンのボタニカル使用数が5~10種のところ、「ザ・ボタニスト」はそれに加え、アイラ島に自生している野生のボタニカルを22種も使用しています。しかも植物の採取はすべて手で行うというこだわりぶり。
 ピート(泥炭)で燻される無骨なシングルモルトと、ボタニカルで風味が付けられる洗練されたジン。豊かな自然が手つかずで残るアイラ島は、“スコットランドで最も美しい島”と考える人も多く、「ヘブリディーズ諸島の女王」と讃えられているとか。私の寂しく暗いアイラ島のイメージを、クラフトジンが一変させました。