害獣も食材になれば一転“ジビエ”。オルタナフードとして流行の予感

 2019年のトレンドキーワードのひとつに、「オルタナフード」を挙げています。「オルタナフード」とは、食糧問題、環境問題など食に関わる問題の解決や、食の伝統の保護に繋がる食材のことを言います。代表的なのは、飼料効率がよいダチョウや、害獣とされるイノシシや鹿などを使った料理、流通に乗らない未利用魚などを活用した食べ物も含まれます。
 害獣と嫌われるイノシシや鹿。食材になれば一転“ジビエ”と呼ばれ、重宝がられる存在に変わります。東京・池尻大橋のフレンチレストラン「Lien」には、“女性ハンター吉井さんの京都丹波産仔鹿モモ肉のロースト”というメニューがあります。吉井あゆみ氏が“仕留めた”という意味で、吉井氏は、狩猟を生業とするプロの猟師です。
 ちょっと前までジビエと言えば、フレンチレストランで山鳩や山鶉、野うさぎなどの輸入品が提供され、時々、北海道の蝦夷鹿が登場する程度でした。山間の村落では、イノシシを食する習慣はありましたが、牡丹鍋が一般に食べられることはありませんでした。それが昨今、一流の猟師による処理の良さ、販売ルートが確保されたことで鮮度がいいまま料理されるなど、新鮮でおいしいイノシシや鹿を食することができるようになり、そのうまさに魅了される人も増えています。
 とはいえ、害獣として捕獲されたイノシシや鹿のジビエとしての利用率は全国で約7%に留まっています。また、ロース肉は豚肉の3倍の価格なのに、スネ肉やモモ肉などの多くは廃棄されています。今後、国産ジビエに対する生活者の認識が変われば、使用部位の選択肢が増え、平均価格も下がり、ジビエ料理は外食市場で加速度的に拡がる可能性があります。