増加する単身者。強まる“共食”ニーズ

 2035年、日本の15歳以上全人口の5割が独身者になると予想されています。死別、離婚による高齢の単身者、未婚による単身者を合わせると、独身者は約4800万人。高齢者の人口は約3740万人と予想されていますから、独身者の人口が高齢者のそれを上回ることになります。
 そんな日本において確実に進んでいるのが、一人で食事をする“孤食化”です。65歳以上を対象にした調査によると、孤食の死亡リスクは、誰かと一緒に食べるのに比べ、男性で1.5倍、女性で1.2倍になったといいます。一緒に食べる人がいればいいのですが、ひとり暮らしではままなりません。そんな中、誰かと一緒に食卓を囲みたいというニーズがますます高まっています。
 地域の空きスペースなどを使い、シニア層ら住民同士が食卓を囲む「共食」が広がっています。東京都大田区の商店街では毎週金曜日、「元気かあさんのミマモリ食堂」がオープン。500円程度で食事を提供しています。管理栄養士の指導の下、地元に暮らす70歳前後の女性たちが食事を作ります。この食堂に集まる高齢者の中には、ほぼ毎回通う人もいて、この食堂をきっかけに住民同士の関係性が深まっています。
 一方、ネットを使いこなす中高年の間では、見知らぬ人と食事する動きもみられます。「キッチハイク」は、共食を希望する人同士を繋ぐネットサービス。自宅のキッチンと食卓を提供する人、料理をする人、食べる人がネットで繋がり、一緒に食卓を囲みます。集う人は、「どうせ食べるなら誰かと一緒の方がおいしい」「知らない人の方が気を遣わずに話せる」といいます。
 食事を共にすることには、栄養バランスを改善する効果もあるといわれ、政府や自治体も「共食」を推奨しています。