懐かしくて新しい! アップデートフード

 近頃、卵サンドやソフトクリーム、プリンやコロッケなど、ちょっとノスタルジックなフードが話題になっています。癒しのニーズが高まると、必ず回顧主義が強くなり、分かりやすいもの、よく馴染んでいるものが注目されるようになります。しかも最近は、昔ながらの味だけでなく、魅力を活かしながら時代に合わせてアップデートした、懐かしくて新しい‟新レトロフード”が人気です。
 “アップデートフード“として根強い人気があるのが、ソフトクリームとプリンです。アップデートなソフトクリームは、一時流行った、ジェラートやソルベといった果汁はじけるジューシー系ではなく、牛乳の味が全面に出たミルキーなソフトクリームです。またプリンは、とろけるタイプやフレーバーが豊富に揃うタイプが一時ブームでしたが、今は、ビターなカラメルがアクセントの、昔懐かしい皿の上でも立つほどの固めタイプが主流。苦くて固いプリンは、男性をも虜にしています。
 昔から変わらず親しまれてきたコロッケにも、より自由で個性的なアップデート系が登場しています。世界中からお客様が訪れる人気レストラン、東京・赤坂の「TAKAZAWA」のシェフが監修するコロッケ専門店、銀座の「TAKAZAWA 180(イチハチマル)」では、油で揚げない‟ベイクンコロッケ”を提供。ヘルシーなだけでなく、素材の持ち味や食感を生かした仕上がりが人気です。定番の‟フライコロッケ”も、ティラミスやトムヤムクンなど、個性的な味をラインナップしています。他にも、さまざまに工夫されたコロッケを販売する専門店が増えていて、おしゃれに仕上げられたそれは、まるでスイーツのようです。

昭和より多くの食品を口にしている平成人

 縄文時代、日本人は、1500種のモノを食べていました。それが、農耕が始まると500種に減り、そして今は、数十種しか食べていないといいます。食の供給が安定されたことで、野草やねずみ、水亀など、採取して食べるものは、労力と確率の面から敬遠されたのでしょう。
 そんなに昔ではなく、昭和と今を比べてみましょう。食卓に上る料理の品数は明らかに減っています。一汁三菜の献立はとても無理、という家庭は多いのではないでしょうか。でも食品を作るための原材料まで数えると、今のほうが圧倒的に多いと思います。
 例えば昭和の食卓の場合、ご飯は米と水、みそ汁は野菜や豆腐(大豆とにがり)とみそ(大豆と塩と麹)とかつお節と昆布、焼き魚なら魚と塩、煮物なら野菜としょうゆ(大豆と小麦と塩と麹)と砂糖。こんな程度です。
 が、今は―。家庭の料理においては、簡便調理品や合わせ調味料を使うことが多くなりました。そして、それらには多くの原材料が使われています。発色や食感をよくするため、保存性を高めるため、形状を安定化させるため等々。先出の豆腐にしても、スーパーで買うことが当たり前になった今、原材料は大豆とにがりの他に、硫酸カルシウム、グルコノデルタラクトン、塩化カルシウムなどの凝固剤、油脂系消泡剤、グリセリン脂肪酸エステル、シリコーン樹脂などの消泡材が使われています。コンビニやスーパーの弁当・惣菜の原材料表示は、文字数が多いため文字はどんどん小さくなり、読めません。外食においても、業務用食品を利用している店がほとんどですから、家庭の料理同様、いえそれ以上に口に入る食材の量は多いでしょう。
 ひょっとしたら、平成人は縄文人より多くのモノを食べているのかもしれませんね。

76.4%の有職女性。「家事は仕事よりツラい」

 家事は仕事よりツラい―。オイシックスドット大地が、20〜50代の有職女性を対象に行った調査結果で、そう思う瞬間がある女性が76.4%に上りました。はっきり言って、家事は仕事より大変です。これに子育てが加わると、仕事なんて息抜きです。あくまで私感です。家事がツラい理由は、「同じことが毎日繰り返されるから」「終わりがないから」「休みがないから」など。家事の中で「ツラい」と思うものと「ちゃんとしたい」と思うものは、どちらも「掃除」と「料理」。「料理作り」がツラいと感じる理由は、「作るのが大変だから」「時間がないから」「献立が決まらないから」などです。
 また求人サイト「はたらこねっと」運営のディップがサイト利用者を対象に行ったアンケートによると、夫、妻ともに週5日勤務、1日7時間以上勤務する人は、夫が71%、妻が65%。勤務日数と勤務時間に夫と妻でそれほど差はないのに、夫婦間の家事分担の割合は、妻が67%、夫が9%とその差は大きく、10%は、家事を一緒にすると答えています。男性も家事をやるようになったとは言え、現状はまだまだこんなものです。
 厚生労働省によると、2017年の共働き世帯は、専業主婦世帯の1.85倍にまで増えているといいます。ミール・ソリューション、HMR(ホーム・ミール・リプレイスメント)という言葉が米国から入ってきたのが1990年。そこから30年近く経っても、未だ、家庭の料理は解決されず、妻の負担は軽くはなっていないようです。まずは、夫も家事の主役であることを自認すること。そのうえで、できないことは無理をせずに外部化すること。割り切ることも、生活を楽しむためには必要です。そして、食の提供を生業としている私たちには、多様な解決策を用意することが求められています。

日本人は睡眠難民 !

 日本人の約6割が睡眠に満足できず、85.2%が「睡眠改善に関心がある」と答えています。
 実際、日本人の平均睡眠時間は主要28ヵ国で最短。男性の平均睡眠時間は6時間半、女性は6時間40分で、世界の平均睡眠時間と比べると30分以上短いという調査結果があります。加えて、睡眠中の体の動きや心拍数から分析する睡眠の質に関しては、5段階で世界平均が3.2だったのに対し、日本人平均は3.0。ほぼ真ん中の数値ですが、28ヵ国中25位です。
 理由のひとつが、スマホ。スマホを寝床に持ち込むことがあると答えた人は、30代で男性78.4%、女性82%、40代で男性55.1%、女性57.4%、50代で男性34%、女性43.6%です。入眠前のスマホ利用が睡眠障害に繋がるというのは知られた話。それでも手放せない生活者のなんと多いことか。加えて、NHK放送文化研究所の「国民生活時間調査」によると、最近は早起きの習慣が広がっているとのこと。働き方改革で企業が残業を禁止する中、仕事を終わらせるために出社時間を早める、‟朝型”シフトの生活者が増えているようです。仕事のために早起きし、スマホを見ながら夜更かしをする―。自ずと睡眠時間は短くなります。
 キリンビバレッジは、機能性表示食品飲料「キリンサプリ」シリーズから快眠をサポートする「ヨーグルトテイスト」を発売しました。味の素の睡眠サポートサプリ「グリナ」や、エスエス製薬の睡眠改善薬「ドリエル」も、販売は好調です。生活者の景況感が改善傾向にある昨今。仕事に遊びに疲れている生活者の“睡眠の量と質”へのニーズは、ますます高まっています。

久しぶりに旧知のシェフに逢いに

 久しぶりに旧知のシェフの料理をいただきに、五反田のフレンチレストラン「ヌ・キ・テパ」に行きました。シェフの田辺氏とは、かれこれ30年のお付き合いです。
 「ヌ・キ・テパ」は、ドイツ大使の邸宅として使われていた一軒家を改装したおしゃれな空間ですが、田辺シェフが独立して初めてオープンした恵比寿の「あ・た・ごおる」は、居酒屋の居抜き物件。カウンターと小さなテーブル席が4つくらいの小さな店でした。厨房はカウンターの中だけです。
 毎週、週によっては毎日のように通っていただけに、思い出も数知れず。食通には有名な店だっただけに連日大賑わいで、雨の中、ビールケースを椅子代わりに、ビニール傘をさしながら食べたこともありました。料理本の撮影をしたときのこと、田辺シェフがオーブン焼きをするというので、ちょっと大きめのオーバル型のグラタン皿を用意しました。すると田辺シェフが「これオーブンに入らないよ」と言うのです。オーブンに入らないなんてと思い、カウンターを覗いてみると、小さな家庭用のオーブントースターが。「だって元は居酒屋なんだから、オーブンなんてないよ。いつもこれで焼いてんだから」とあっけらかん。驚くやら、おかしいやら。田辺シェフらしいエピソードとして忘れられません。
 田辺シェフは、肉は料理しません。素材は魚介と野菜のみ。そして土です。指定した場所からおいしそうな(?)土を掘り出し、それをオーブンで焼いて殺菌。水で煮出して土のブイヨンを作ります。これがソースになったりデザートになったり。おいしい土はおいしい水を作り、おいしい野菜を育てます。それが土を料理に使う理由なのだそうです。

この春大阪にオープンした話題の3業態

 先週、大阪の話題の新スポット3か所を見学に行きました。「無印良品・イオンモール堺北花田(堺市北区)」「キッチン&マーケット ルクア大阪店(大阪市北区)」「ミオえきッチン(大阪市天王寺区)」です。グローサラントの風に乗ってか、それぞれが、それぞれのカタチで、物販と外食の融合に挑戦しています。
 「無印良品」は、「無印良品」の世界感で衣食住を提案。それが何の違和感もなく融合しているところが流石です。青果、鮮魚、精肉の生鮮3品が放つ生命力と存在感、美しさが、整然とした空間の中で見事に演出されています。無印良品だからやれること、やるべきことが、まだまだたくさんあると思うと、今後の動向がとても楽しみです。
 「キッチン&マーケット ルクア大阪店」は、その名の通り、路地のマーケットのよう。もちろんおしゃれに演出されてはいるのですが、いい意味での猥雑さに地下の暗さが加わって、一風変わった雰囲気が醸し出されています。平日の昼下がりでもお客様で賑わっているのは、オープン景気もあるのでしょうが、やはり駅隣接という立地の強み。今後、お客様がどのように利用されるかによって、中身も変化するでしょう。それを見たいと思います。
 「ミオえきッチン」は、フードコートに生鮮3品がない食料品店が併設された構成。外食店の料理もパック売りの弁当・惣菜も、飲食スペースでいただけます。こちらも駅ビルという好立地。オープンスペース的な気軽さが、立地に合っていると思います。ただそれだけに、食料品店など物販部門においてどの程度の売上が期待できるのかは、未知数だと感じました。

「働き方改革」で生まれている新たなニーズ

 「一億総活躍社会」の実現を目指し、政府主導で進められている「働き方改革」。「一億総活躍社会」とは、「50年後も人口1億人を維持し、職場・家庭・地域で誰しもが活躍できる社会」のことなのだそう。“50年後も人口1億人”というかなり高い目標に向かって政府がまず進めたのが、労働時間の短縮と働き方の多様化です。実際、退勤時間を早め、在宅勤務を認める企業が増えています。
 早い時間に帰宅すれば子どもが生まれ、男性も育児に参加することで、女性は子どもを生みやすくなる・・・とでも考えているのでしょう。政府の思惑通り、子どもが生まれ、人口が増えるのか定かではありませんが、市場にはすでに変化が生まれています。
 まず、夫婦で働くパワーカップルの世帯年収は、明らかに上がっています。食材は、週末にまとめ買いをするので大型冷蔵庫が売れ、週末まとめ洗いをするので、大型洗濯機が設置されたコインランドリーが人気になり、市場は一気に拡大しました。日々の食事に惣菜を利用する生活者が増えたことは、エンゲル係数上昇の一因になっています。
 早く帰宅するおとうさんに人気なのが、高アルコールのビール系飲料や缶チューハイです。残業代が減って収入は伸び悩み。安くてしっかり酔えるアルコール飲料が、ニーズにぴたりとはまりました。
 在宅勤務の生活者が頼るのは、仕事ができるスペース。星乃珈琲は、落ち着いて仕事ができる場所として利用する来店者が増え、15分100円からと気軽に使えるスペースや保育施設が併設されたスペースなど、さまざまなコワーキングスペースも登場しています。

美腸活。かつてデトックス、今はクレンズ

近年、腸をきれいにする美腸、腸を整える腸活に、老若男女問わず、注目が集まっています。腸内環境の研究が進み、自律神経が腸の動きを制御するだけでなく、腸の状態が脳に影響を及ぼすという双方向の関係が明らかになってきて、それも腸に関心を持つきっかけになっているようです。
 2006年、「デトックス」という言葉が、食市場のトレンドキーワードに挙がりました。日本語では「体内浄化」と訳します。体内に溜まっている重金属やミネラルなどの毒素、広くは小腸や大腸に溜まったカスまで、とにかく体内に溜まっている悪いものをすべて排出して健康になろうという発想です。当時、男女問わず雑誌の「健康になる」「美しくなる」「痩せる」の切り口は、ほとんどこの「デトックス」に集中していました。
 展開としては、サプリメント、腸内洗浄、マクロビオティック、漢方薬膳、週末断食などさまざまで、今も女性を中心に流行っている、ピラティスやホットヨガ、岩盤浴なども、このデトックスの発想から人気になったものです。
 そして今年は、体内浄化が「クレンズ」というキーワードになって登場しています。体に溜まっている不要なものをいかに効率よく排除するかまではデトックスと同じですが、クレンズして体内環境を整えるだけでなく、体をより強く、美しくする成分を同時に摂取する‟クレンズ&エンパワーメント”が今年の特徴。食物繊維と一緒に、健康や美容によいとされる食品を摂取することが勧められています。

コインランドリーと飲食店の意外な親和性

 ファミリーマートがランドリー併設1号店を、千葉県市原市に3/31にオープンさせました。100億円強を投じ、コインランドリー併設店舗を2019年度末までに500店展開する計画で、実現すればコインランドリー業界で最大規模の店舗網になります。ファミリーマートは、洗濯の待ち時間にイートインスペースで淹れ立てコーヒーや弁当、惣菜を利用してもらえればと期待しています。
 コインランドリーは、近隣住民の憩いのスペースにもなっています。東京都墨田区に1月、ランドリーを併設した「喫茶ランドリー」がオープンしました。目的は、街の活性化。ユニークなのは、‟家事室”と名付けたランドリースペースには洗濯機のほか、ミシンやアイロン、裁縫箱や編み物道具なども用意されている点。地元のママ達によるミシンを使った小物作りのワークショップなど、お客様が企画したイベントやワークショップが頻繁に開催されています。またカフェには、コーヒーやビールなどのドリンクに加え、オープンサンドやチョコレートケーキなど、軽食やスイーツを揃えていて、オープンするとすぐに、近隣のお年寄りや主婦、パソコンを持ち込んで仕事をする会社員など、幅広い客層が訪れるといいます。
 井戸端会議という言葉があるように、江戸時代、井戸の周りは洗濯をしながらおしゃべりをする女性たちの社交場でした。洗濯とコミュニティ。親和性の高さは、昔も今も変わらないのですね。

高齢化社会に向けて注目が集まる「ブレインフード」

 高齢者向けに記憶力維持を謳った食品が、相次いで発売され、人気です。弊社は、2016年、脳の活性に役立つ食品を「ブレインフード」というキーワードで紹介しました。ここにきて、いよいよ生活者の認知度が高まってきたと言えます。
 ロッテが発売した「歯につきにくいガム<記憶力を維持するタイプ>」は、脳機能の改善効果があるとされる‟イチョウ葉フラボノイド配糖体”や‟テルペンラクトン”を配合した、中高年層をターゲットにしたガム。認知症予防などの効果を期待して手に取る姿が目立ちます。店頭想定価格は140円前後と標準品に比べて4~5割高いにもかかわらず、発売後2ヵ月で当初の販売目標の1.4倍を売り上げました。
 また日本水産やマルハニチロからは、‟エイコサペンタエン酸(EPA)”や‟ドコサヘキサエン酸(DHA)”を含む冷凍惣菜やレトルトのスープが発売されていますし、不二製油は、記憶力を高めるという‟大豆由来セリルチロシン”をプラスした粉末飲料「ペプチドメンテ」の開発を進めています。今年に入り、ファンケルや森下仁丹も、イチョウ葉の成分を使った商品を機能性表示食品として届け出ています。
 さらには、キリンは3/19、ホップ由来のビールの苦味成分が健常時の記憶力を向上させることを世界で初めて解明。森永乳業は、「ビフィズス菌A1」が軽度の認知障害の疑いがある人の認知機能を改善する可能性があることを確認しました。
 認知症が社会課題となっている中、防止と改善を期待できる成分の発見と開発、効果検証にますます注目が集まっています。