拡がる外食店のおひとりさま戦略

 外食各社が、‟おひとりさま”の取り込みに本腰を入れています。
 「ガスト」は2018年から、席の両側についたてを配置し、電源を備えた1人席を拡大。作業や休憩といった食事以外にも使いやすい空間にすることで、来店機会を増やしてもらう狙いです。「大戸屋ごはん処」は昨年6月、1人用席を約2倍に増やした新型店を開業。ロングテーブルは座る位置や高さをずらし、正面に座っても視線が合わないよう工夫しています。結果、女性などの1人客が増え、客数は1割超伸びたといいます。ひとり焼肉が楽しめる「焼肉ライク」も人気で、1号店オープンからわずか1年余りで25店舗に拡大。「松屋フーズホールディングス」も昨年3月、店内の23席がすべてカウンター席のステーキ店「ステーキ屋」をオープンさせました。また「エー・ピーカンパニー」が渋谷スクランブルスクエアに昨年11月オープンさせた新業態、一人一鍋スタイルの「しゃぶしゃぶ つかだ」が、早くも人気店になっています。滞在時間はランチが30分、ディナーでも60分と回転率がよく、客単価は4500円と高めにもかかわらず、1日の客数が300人に及ぶこともあるといいます。今年2月からは、すき焼きをしゃぶしゃぶ風にアレンジしたメニューの提供も始めています。
 単身世帯の増加が続く中、従来はファミリー層の利用が多かった外食店でも、‟おひとりさま”の取り込みが急務になっています。単身世帯は、中食や外食を利用する機会が多く、その1人当たりの支出は2人以上の世帯の1.5倍になるといいます。ファミリー客やグループ客と比べて注文数は少なく、その分を回転率で補うためには、おひとりさま席の拡充は当然の戦略です。因みに、私の行きつけ「やよい軒青山オーバルビル店」も、例に漏れずおひとりさま仕様にリニューアルされました。私もおひとりさまなのに、なぜか居心地が悪くなって足は遠のいています。