雛祭りにちらし寿司。“木の芽”の高さに翻弄されます

 今年も雛祭りにちらし寿司を作りました。以前に、このコラムで書きましたが、ちゃんと料理に向き合う気持ちを、年に1度自分で確認するかのように、ちらし寿司を作ります。母校の女子栄養大学に伝わる、故上田フサ先生によるレシピです。具材は、かんぴょう、れんこん、しいたけ、人参、エビ、穴子、でんぶなど、そのすべてを別々に調理し、最後に合わせます。その丁寧な作業が、気持ちを正してくれると共に、煮物や焼き物、炒り物の基本を思い出させてくれます。
 今年は都合で、1週間遅れの雛祭りでした。遅れた分、食材集めには苦労しないだろうと思っていたのですが、さにあらず。やはり今年も“木の芽”がなかなか手に入りません。近くのスーパーに問い合わせると、まだ入荷していない店も。春の節句が過ぎても入荷していないとは、はなから入荷する気はあるかしらと思います。仕方なく、渋谷の東急フードショーへ。か弱き木の芽が数枚張ったパックが238円。1枚40円と思うと、なかなか手が出ず。しかも数枚では意味がなく、いっそ今年は木の芽は諦めようと売り場を離れ、でもやはり、春の節句のちらし寿司に木の芽は欠かせないだろうと思い、売り場を行きつ戻りつ。結局、「この贅沢には意味がある」と自分に言い聞かせ、2つだけカゴに入れました。
 南天の葉、菊花、花穂じそ、防風など、日本料理につきものの“あしらい”は、家庭での需要が少ない分、価格は高めです。私は、よく使う南天は、鉢植えで育てています。でも山椒は2度失敗しました。木の芽を買う度に、今年こそ栽培を成功させようと思うのです。夢は、木の芽を贅沢に使う“木の芽和え”を作ることです。