価格の優等生も値上げ。PBは6月末まで価格据え置き

 食品や外食の価格が次々に高騰する中、年内に値上げが予定されている食品の数が、1万品目を突破することが分かりました。
 物価の優等生と言われている卵も然り。鶏のエサは、とうもろこしや大豆の搾りかすなどで、そのほとんどを輸入に頼っていますから、円安が直撃します。卵の包材は石油から作られるプラスチック製品。輸送にも石油が使われていますから、値上がりするのも当然です。
 同じく価格が余り変動しないバナナ。6/8に駐日フィリピン大使が緊急記者会見を開き、「バナナを値上げして適切な価格で販売して欲しい」と訴えました。燃料代や肥料代が値上がりし、加えて経済水準が上がっているため人件費は倍近くに跳ね上がっているとのこと。バナナ農家は大変なのだとか。日本との長年に渡る取引関係を考えると、値上げ交渉は簡単ではないと推測され、苦悩した末の大使の発言だったのでしょう。
 一方、値上げラッシュの中、踏み留まっているのが、プライベートブランド(以下PB)です。イオンは、6月末までPB「トップバリュ」商品約5000品目で価格を上げない「価格凍結」を宣言。西友も、PB「みなさまのお墨付き」の全商品約1200品目の価格を、イオンと同様、6月末まで据え置くと公表しました。もちろん、内容量を減らすステルス値上げもしないといいます。マヨネーズやレトルトカレー、冷凍餃子など、商品によってはメーカー商品の半額近いものもあり、売り上げは好調です。
 6月末までとのことなので在庫で賄えるでしょうが、売れている勢いに乗って価格据え置きを続けるようであれば、今度は、PBの製造会社にしわ寄せが行くことに。バナナ農家の苦境と被ります。

ワールドカップに向けて盛り上がれ!食市場

 今年は、4年に1度のサッカーFIFAワールドカップ(以下WC)開催年。開催国カタールで11/21から始まります。新型コロナウイルス対策の規制が緩和されたままであれば、再びあの熱狂が繰り広げられ、食市場も盛り上がるでしょう。
 弊社が提供している「食のトレンド情報Web」のアーカイブでは、2004年からの情報を順次アップしています。現在2010年半ばまでアップされていますが、そこで“ワールドカップ”と検索すると、2006年ドイツWCが開催されたときのトレンド情報が挙がってきます。
 前年の2005年は、日本における「ドイツ年」。日本代表のドイツWC出場も決まり、ドイツ熱が高まった年です。日比谷公園や神宮外苑など首都圏5ヵ所で、ドイツ各地の地ビールやソーセージ、ザワークラウトといったドイツフードが楽しめる「東京オクトーバーフェスト」が開催されたり、札幌の岩田醸造が「ドイツワインの試飲展示会」を行ったり、ドイツワイン基金駐日代表部が、チョコレートにドイツのアイスワインを組み合わせるギフトを提案してバレンタイン商戦に参入したり。ネットのお取り寄せでは、通常のクロワッサンよりも層が多く、よりサクサクした歯応えが特徴のドイツ生まれのクロワッサン「ギッフェリ」が話題になりました。ドイツに限らず、欧州に対する関心が高まり、輸入ビールの人気が徐々に高まった年でもあります。
 奇しくも、カタールWCの日本の初戦の相手は、ドイツ。WC熱が高まりを見せる中、食市場ではどんな提案や仕掛けが展開されるのか楽しみです。
 ドイツWCを最後に引退した中田英寿氏。東京・青山でカフェをプロデュースしたり、東ハトの執行役員になって商品開発に参画したり。そんな話題も食市場を賑わせました。

「味覚が合わない人」付き合える?

 女性ファッション誌「CanCam」の調査【「他の全部が合うけど味覚が合わない人」付き合える?】。[余裕です12%][付き合えないこともない57%][無理です31%]という結果に。
 [余裕派]からは「自分が合わせる」「それぞれの好きなものを食べればいい」「こだわらない」「気にしない」「食に興味がない」。[付き合えないこともない派]からは「付き合うだけなら問題ない」「違って当たり前」「それぞれの好きなものを食べればいい」。[無理派]からは「食事を楽しめない」「疲れる」「ストレスを感じる」「家庭を想像したときにつらい」といった意見がそれぞれ出ています。
 本人が食にこだわりがなければ余裕、こだわりがある場合は無理。付き合うだけならいいが、結婚は無理。というのが大方の意見のようです。
 私は、絶対に[無理派]です。自分がおいしいと思うものは一緒に食事をする人にもおいしいと思ってほしいし、私がおいしいと思うものは、絶対においしいはずだと確信しているからです。もちろん、育った土地の味が好みになる場合が多いので、みそやしょうゆの種類、料理の素材や味付けが違うのは仕方ありません。が、違いを問うより、どちらもおいしいと思えることのほうが楽しいと思います。
 味覚が合う合わない以外にも、食べることに興味がない、おいしそうに食べない、楽しく食事をしない、料理を残す、好き嫌いが激しい、余りに無作法、食べ方が汚いなどなど、[無理]な理由は盛りだくさん。加えて、私が食べられない分をきれいにさらってくれることも欠かせない条件。海外旅行で、思いがけずボリューミーな料理が出されたとき、残したくないから困るのです。私のパートナーはすべてをクリアして、夫になりました。

“なくてもいいですか”と、ザワつくコメント

 情報提供番組で料理を紹介する場面がよくあります。見ていて気になるのは、出演者の“なくてもいいですか”発言。先日も、ペルー料理店のシェフがスタジオで調理を披露。オレガノを使うシーンでオレガノが家にあるかないかの話題になり、“なくてもいいですか”がまたも飛び出したのです。南米料理でハーブやスパイスを省くなんてありえません。
 学生の時、女子栄養大学主催の「子ども料理教室」でお手伝いをしていました。揚げ物の衣で薄力粉に片栗粉を合わせる段になったとき、保護者から“片栗粉なくてもいいですか”の質問が。先生はきっぱりと“高いものではありません。買ってください”とおっしゃいました。その通りだと思います。せっかく子どもに、安全で、失敗しない、おいしい料理の作り方を教えているのに、なぜそんなところではしょるのでしょうか。
 NHKエデュケーショナルの「みんなのきょうの料理」。作った人のコメント欄を読むと頻繁にザワッとします。“○○がなかったので、××を使いました”“△△がなかったので入れませんでした”“麺つゆで味付けしました”などなど。実に自由奔放。もはや別の料理でしょと突っ込みたくなる投稿も少なくありません。“おいしかったから今回はちょっとアレンジを加えてみました”とか、“塩味が我が家にはやや強かったので塩を減らしました”とかなら理解できるのですが、端から前向きとは言い難いアレンジを加えるのはいかがなものか。せっかくプロが研究を重ねたレシピを伝授してくれているのです。できるだけその通りに作って、思いがけない食材の組み合わせに驚いたり、味わったことのないおいしさを体験したりしたほうが得です。調理の世界が拡がる機会を無にしているようで、もったいないと思うのです。

ゴールデンウイークの食事報告

  ゴールデンウイーク。長いお休み、我が家では、何をしようかと何を食べようかとは、同じくらい大切なテーマです。朝はぐっと軽めにして昼下がりから夕食飲みを始めるのが今年のトレンドでした。
 初日は、朝から「栄大ちらし」を仕込みました。以前にもコラムで書きましたが、「初心忘るべからず」の思いで、年に1度、必ず春に作る母校に伝わる料理です。朝、包丁を研ぎ、大鍋いっぱいにだしを取ります。寿司桶を納戸から持ち出し、しゃもじと布巾を揃え、大きな団扇を用意します。かんぴょう、しいたけ、れんこん、人参、アナゴ、そぼろ、錦糸卵、芝エビ、さやえんどう、甘酢しょうが、三つ葉の調理が済んだら、刻み海苔と桜の花の塩漬けを用意して、ベランダの山椒の葉を摘みます。が、時すでに遅し。「木の芽」から成長し「木の葉」になりかけていましたが、仕方ありません。
 2日めは、10年前、何かのきっかけで購入した「トルティーヤプレス」をデビューさせたい一心での「手巻きトルティーヤ」。とうもろこしの粉に水を加えて生地を作り、丸めて、トルティーヤプレスで円形に押し広げます。麺棒で広げるよりもきれいな円になり、何枚かプレスしていくうちにコツがつかめます。といっても、この作業は夫の担当ですが。巻く具材は、スパイシーな味付けのビーフとポーク、ひよこ豆とレンズ豆のサラダ、ワカモーレ、トマトのサラダとレタス&ハーブです。
 3日めは、ステーキの食べ比べ。神戸牛、宮崎牛、佐賀牛、但馬牛など6種類の牛肉の食べ比べセットをいただいたのです。自分で焼きながら食べ比べても“おいしいね”しか出て来ず。加えて連休中で気が緩んでいるから、仕事のテイスティングのような真剣さはありません。
 そんな風にして日は過ぎ、最後は、手打ちのそばとうどんをはしごしました。

新宿の「ガルロチ」。ショーレストランとして再開

 新型コロナウイルスの影響で、多くの飲食店が休業や廃業に追い込まれました。ショーレストランも同様です。
 新宿伊勢丹会館の6階に、フラメンコのショーを見ながら食事ができるタブラオがあります。おそらく東京で最も面積が広く、歴史あるタブラオです。前身は「エル・フラメンコ」。1967年開業です。私は大学生のときに知人に連れられ、初めて本場のフラメンコをここで見ました。その後、フラメンコを習うことになる最初のきっかけです。
 「エル・フラメンコ」は2016年、フラメンコを愛するファンに惜しまれつつ閉店。その後、「タブラオ・フラメンコ・ガルロチ」と名前を変えて再スタートしたのですが、コロナ禍で2020年に営業を終了してしまいます。何とか、日本におけるフラメンコの老舗を守りたいと立ち上がった現オーナーがクラウドファンディングで資金を集め、フラメンコだけでなくさまざまなエンターテインメントが楽しめる場として「ガルロチ」と改名。5/3に再開を果たしたのです。
 その日私は「ガルロチ」に行き、スペインから招聘されたアーティストたちの華やかで楽しいフラメンコを堪能しました。
 日本は、本場スペインに次いでフラメンコ愛好者が多い国です。とはいえ、絶頂期の3分の1にまでその数は減少しています。「ガルロチ」をタブラオではなくショーレストランとして再開した意図も充分に理解できます。決してラクではないショーレストランを再開してくれた方々に感謝すると共に、一(いち)フラメンコファンとして、タブラオの火を消さないよう、「ガルロチ」にもせっせと通わなくてはと思う次第です。

“カタカナスシ”と“客が育てるセカンドライン”

 最近の寿司市場。流行りは、“カタカナスシ”と称されるカジュアルな寿司酒場と、“客が育てる”高級店のセカンドラインです。
 先日、前者の先駆けとも言える「スシエビス 恵比寿本店」にふらりと立ち寄りました。風変りなメニューがウリとの話は聞いていました。カウンターに座ると、目の前には大きな蒸し器。ちょっと変わった“小籠包”が人気だとか。おすすめは、“名物!エビ・カニ合戦”。カニの甲羅に叩いたエビとズワイガニ、イクラとうずら卵が盛り付けてあり、それをよくかき混ぜて甲羅の下に並べられたカニ味噌の細巻きにかけていただきます。“とろける鰻バター”は、うなぎの握りの上に、スタッフがバターを削りながらたっぷりかけてくれる、動画向きの一品。まさにSNS映えと気軽さがウリの「寿司居酒屋」です。接客も明るくて親切なのですが、オ―ダーは完全スマホ経由。カウンターに座っても、板さんとのやり取りはありません。
 後者の代表格は、4/23にオープンした立ち食い寿司店「鮨 銀座おのでら 登龍門」です。「銀座おのでら」が、“お客様に育てていただく鮨店”をコンセプトに立ち上げた店。ポストコロナのさらなる世界展開に向けて、実力のある寿司職人を育てていくことが目的です。ネタは総本店と同じものを使用しながら、価格は若手職人の“勉強代”としてよりリーズナブルに設定していると言います。
 これに先立ち昨年10月にオープンした「廻転鮨 銀座おのでら本店」(東京・表参道)。「銀座おのでら」でも提供されている「やま幸」の本マグロを目当てに出掛けました。その時付いてくれた板さんに「どのくらいお寿司握ってるの?」と聞いたら、「6ヵ月です」とのこと。このプロジェクト、その時既に始まっていたのですね。

「生娘をシャブ漬け」。発言内容よりも気になること

 吉野家の常務取締役企画本部長の「生娘をシャブ漬け戦略」の発言。驚きと共に、さもありなんとも思いました。
 ネットの報道では、“シャブ”という反社に繋がる名称を使ったこと、女性に対する人権侵害と性差別的な発言に当たること、牛丼を中毒性のある食べ物のように表現したことなど、さまざまな批判の声が挙がっていますし、吉野家も発言内容について謝罪をしています。お客様に対してはそれでいいでしょう。でも、この問題で私が最も気になったことは、発言内容そのものではなく、そのような発言が飛び出した理由です。
 私は長らく、食品会社や外食会社など食関連企業の方と一緒に仕事をしてきました。ときどきその中に、食に興味がない、食の仕事が好きではない、食をモノとして扱う、人(顧客)を愛していないと感じる方がいます。あくまで私感ですが、そのような方は、市場や人を見るより、数字のマーケティングがお好きな傾向にあるような。
 私は、「食」と「人(顧客)」に対して愛情を持つことが、食に携わる人間に求められる最低限の条件だと思っています。食は人を健康にし、笑顔にし、心を満たし、育てます。加えて、地球環境や人権、経済、文化、歴史、宗教などとも深く関わっています。そのぐらい広く深い存在です。愛情がなくてはできません。
 マーケティングの現場では、顧客の「囲い込み」という言葉が頻繁に発せられます。この時点で既に、人(顧客)に対する強制が肯定されているような気がして仕方ありません。

飲食店の値上がりと安い外食の限界

 食料品の値上がりが止まりません。食用油と小麦粉の価格が上がれば、ほとんどの加工食品と飲食店のメニューが値上がりするのも無理はありません。
 弊社近くの、青山骨董通りの行きつけの飲食店も値上げラッシュです。
 カジュアルイタリアンの「YPSILON Aoyama(イプシロンアオヤマ)」のランチは、1200円から1350円に。台湾家庭料理の「ふーみん」のランチも、平日は10~50円、土曜日は10~100円の幅で値上げされました。「蕎麦青乃」は、かつ丼や親子丼、しらす丼など丼物とそばまたはうどんのセットが100円程度値上がりしたほか、私のお気に入り“鍋焼きうどん”はエビ天1本の“並”と2本の“上”があったのに、エビ天が大エビ天1本になり、“並”はなくなりました。上の金額への大きな引き上げです。
 致し方ありません。店側も苦渋の選択です。この時世においては、客側も充分に理解ができることです。が、感情的には厳しくなるもの。再来店客の口コミなどを見ると、この値段でこの料理なら再々来はないといった内容のものもあります。値上げは料理の現状維持のためであり、値上げ分は食材費に吸収されます。値上げをした分、料理の質や量がアップできるわけでも、店側が儲けているわけでもありません。
 私たちは、日本人の正直さと勤勉さとやさしさと器用さが生み出す安全でおいしい外食を、どの先進国と比べても比較的安くいただける幸せを当たり前のように享受してきました。しかし日本人力だけではどうしようもない現実が来ていることを、東欧で起きている惨状と苦難、それが及ぼすさまざまな影響に重ねるカタチで、思い知らされているように感じるのです。

春先の気分は軽やかに。食もファッションも雑貨も同じ

 20℃超えで「日中は半袖で」とお天気お姉さんに言われた翌日は、10℃を下回り北風が吹いて真冬並みの寒さに。まさに今春は「三寒四温」でした。
 この時期思うのは、いつ衣替えをしようかということ。せっかちな質なので、ちょっとでも温かくなると衣替えに手を付け、何でも一回で済ませたい質なので、コートから徐々にとはいかず。結局、毎年春先に風邪をひきます。今年は、せっかちな私を思い留まらせるのに十分な「三寒四温」ぶりでした。
 もうひとつ冬から春へと中身替えをするのが、冷蔵庫と食品庫です。この冬は「食のトレンド情報Web」の立ち上げで忙しく、また寒かったこともあり、昼食は持参していました。定番は、「白菜とれんこん入り鶏つくねのしょうが煮」。白菜半分がペロッと食べられ、しょうがのお陰で身体がポカポカになります。つくねを作り置きして、鶏肉や豚肉を買い置きしておけば、白菜と合わせるだけで温かい煮物が即できます。まさしく白菜は、冬を代表する野菜です。
 で、春キャベツが店頭に並び始めると、白菜はお役御免とばかりにフェイドアウト。キャベツ料理に取って代わります。白菜同様、煮物にするにしても、だしからコンソメに、しょうゆから塩に、和風から洋風に料理が移り、見た目も華やかになります。不思議なもので、豚汁に筑前煮にと大活躍してくれた根菜類も重くて。もういいかなと感じるのです。
 明るめの色の服を着たくなるように、春先は軽やかな気分でいたいもの。そんな心の移り変わり、私だけではないはずです。生活者の気分が求めるものは、食もファッションも雑貨も同じ。菜の花、グリンピースもいいけれど、もっともっと生活者、とくに女性の気持ちに敏感な店内装飾と販売促進をしてはいかがでしょう。スーパーの社長殿。