夢中になった料理番組「世界の料理ショー」

 昔、大好きな料理番組がありました。「世界の料理ショー」です。昔というのは、いつの頃見ていたのか覚えていないからです。
 今はウィキペディアという、大変便利なツールがあります。それによると「世界の料理ショー」は、1968年~71年、カナダ放送協会で放送されたテレビ番組で、日本では1974年~79年、東京12チャンネル(現:テレビ東京)が放送。それを機に、日本各地の放送局が再放送を含めて断続的に放送したとか。
 登場するのは、グラハム・カーという男性の料理研究家。おしゃれなキッチンとリビングルームのセットに観客を入れてのスタジオ。そこでグラハム・カー氏が、楽しいというより笑えるおしゃべりをしながら、世界各地を旅して味わった料理を再現して見せるのです。ゴージャスな雰囲気、リッチでおいしそうな料理、愉快なグラハム・カー氏、巧妙でラフな進行。そのすべてに魅了されました。それは私にとってまさしく、「パートリッジ・ファミリー」や「奥様は魔女」といったアメリカのテレビドラマと同一線上にある、アメリカンな料理番組だったのです(カナダで制作されていたのですが)。
 もちろん、紹介された料理をいくつか作りました。その中でも強く記憶にあるのは、英国の“パン粉とはちみつのパイ”。パイ生地の中身は、はちみつでしとらせたパン粉だけなのです。驚きのレシピですが、これがおいしかった!
 グラハム・カー氏は料理をするとき、ジャケットは脱ぎますが、ネクタイはしたまま、シャツの袖もまくり上げません。油が飛んだり、シミが付いたりしそうでちょっとハラハラ。そんな庶民の心配をしている私に、彼の手の動きがとても上品で優雅に見えたことを、今でもよく覚えています。

2022年1月1日 1アカウント3,300円(税込)/月で閲覧できる「食のトレンド情報Web」をリリースしました。
→ https://trend.himeko.co.jp

withコロナが常態化した日本の年末年始

 今年のお正月も、自宅でのんびりと過ごしました。一昨年は息子の受験、昨年は新型コロナウイルスと、正月の遠出を控える状況が続き、3年目となる今年は、新事業立ち上げで溜った疲れの回復とオミクロン株を理由に、飲んで食べて寝てを繰り返していました。
 ただ、年末は少し外出をしました。渋谷の「東急フードショー」におせちの買い出しに行き、「六本木ヒルズ」に映画を見に行き、ついでに「ラトリエ ドゥ ジュエル・ロブション」でシャンパーニュを楽しみ、家の近くのイタリアン「イル・パチョッコーネ・カゼイフィーチョ」で21年最後の外食を堪能しました。
 どこに行っても賑わっていて、withコロナが常態化しているのを感じました。聞けば、渋谷のスクランブル交差点では、主催者不在のカウントダウンで大盛り上がりだったとか。マスクと消毒が当たり前になっている日本においては、だれもが気を付けているだろうという信頼感と安心感が強く、ウイルスに対する危機感も大分薄まってきているように感じます。
 因みに、年末、以前から約束していた友人との外食をしようと、急遽、馴染みの飲食店のいくつかに予約の電話を入れたのですが、すべての店が満席でした。オミクロン株のここまでの拡がりを予期していなかったその時は、心の底から外食市場が回復しつつあることをうれしく思いました。
 結婚後、初めておせちの準備をしませんでした。別に暮らしている夫が、じゃが芋入りの筑前煮を作りました。普段、おかずとして作っているそうで、ボリューム感が欲しくてじゃが芋を入れるようになったそうです。料理においては正統派を自認する私には違和感がありますが、根菜の滋味をたっぷり含んだ甘辛味のじゃが芋は、確かにおいしかったです。

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しみじみおいしいと思った日本酒

 来年から始まる弊社の新事業「食のトレンド情報Web」の成功を祈願して、氏神様の渋谷「金王八幡宮」で御祈祷を受けました。帰りがけに神主さんからいただいたのは、「社員の皆さん全員が正しくできる会社は珍しい」と玉串奉奠の作法に対するお褒めの言葉。さすが、ひめこカンパニーです。そして、お札とお神酒も頂戴しました。

 お神酒は、灘の辛口「剣菱」。私の好きな日本酒です。会社に戻り、スタッフ全員で乾杯をしてもまだまだ楽しめる一升瓶。ちょうど寒くなってきたこの頃。冷えた身体を温めるのに、もってこいです。

 「剣菱」があるとランチのメニューも変わります。まずはコンビニでおでんを買って。和辛子は必須です。ツーンとした辛さに「剣菱」のすっきりとしたふくよかさがよく合います。翌日は、鶏団子と白菜の煮物、そしてみぞれがちらついた次の日は、鍋焼きうどんです。気温がぐっと下がる夕方、ぬる燗で一杯、二杯・・・。そうこうしているうちに「剣菱」は空になりました。

 蒸留酒は太らない―。それを信じて、ビールよりウイスキー、日本酒より焼酎を選んでいましたが、久しぶりに日本酒をいただき、しみじみおいしいと思いました。お神酒だからか、剣菱だからか、季節のせいなのか、年齢のせいなのか。今年の冬は、新事業の成功を祈願しながら、日本酒を楽しもうと思います。

骨董通りのおそば屋さん

 ひめこカンパニーのオフィスは、南青山5丁目、骨董通りを南に少し入ったところにあります。ここに来て、もうすぐ30年になります。上京したての私にとって憧れの場所だった「紀伊国屋」は「AOビル」になり、その向かいにあったガソリンスタンドは「マックスマーラ」が入る複合ビルになりました。ここが通称「骨董通り」の入り口。出口は「フジフィルム本社ビル」です。

 以前は、「高樹町通り」という名称だったとか。「いい仕事してますね~」でお馴染みの古美術鑑定家、中島誠之助氏が昭和51年に高樹町通りで「骨董屋からくさ」を開業。骨董店が並ぶ通りを多くの人に知ってもらいたいという思いから「南青山骨董通り」と呼ぶようになったそうです。「骨董屋からくさ」の骨董通りをはさんだ反対側には「春日家」というおそば屋さんがありました。中島氏がテレビ番組で、店を切り盛りしていた年嵩の女性を「看板娘」と紹介していましたから、よく通っていらしたのでしょう。私も大変お世話になりました。が、突然、閉店してしまいました。

 しばらくの間、骨董通りにおそば屋さんはなかったのですが、小原流会館の地下1階、人気店「ふーみん」の向かいに「蕎麦青野」がオープンしました。青山にしては手頃な値段でおそばが楽しめます。それはもちろんうれしいことなのですが、それ以上の魅力が、会計時に1人1枚いただける「ドリンクチケット」。グラスの生ビール、焼酎、オレンジジュース、ウーロン茶の中から1人1杯サービスしてくれます。しかも1枚のチケットで2名利用できます。2人で食事に行き、1枚使っても帰りには2枚もらえる―。私たちはこれを“無限ループ”と呼んでいます。

麺を揚げない“博多皿うどん”

 先週に引き続き、福岡に講演に行ったときの話を。

 遠方に講演に行くときは、いつも2時間ほど早く現地に入り、その土地ならではのおいしいものを目指します。今回は、博多駅近くの「元祖ぴかいち」で皿うどんをいただきました。

 日本列島の真ん中から右でしか生活したことのない私の場合、皿うどんと言えば長崎。パリパリ麺の上に、野菜や肉、魚介、かまぼこやさつま揚げなどの練りものを炒めて片栗粉でとじたあんがかかっている様を思い浮かべますが、この店のそれは違いました。同店の“博多皿うどん”は、麺を揚げていません。ちょっと太めの麺にあんがかかっていて、チャンポンの汁なしという感じです。あんの具材は種類が多く、量もたっぷり。鶏ガラとアサリで取っただしはうま味が強く、それが太めの麺に浸み込んで食べ応え十分。しかも油っぽさがないからとても食べやすく、あっという間に完食です。テーブルの上には、食べ放題の自家製の辛子高菜や、好みに合わせて味変ができる自家製の酢醤油や酢、ウスターソースも。一度では堪能できません。

 大学生の頃、九州を車で旅したことがあります。幹線道路沿いの店で、初めてちゃんぽんを食べました。おいしさに感動したことを覚えています。その後すぐ、埼玉県で「リンガーハット」を見たときの、えも言われぬ気持ち。そう、初めてのちゃんぽんは「リンガーハット」だったのです。ネットがない時代の“あるある”です。リンガーハットのちゃんぽんは、確かにおいしいからいいのですが、埼玉県でも食べられるということがショックだったのです。

福岡で偶然の出会い

 緊急事態宣言の規制が解除され、久しぶりに福岡へ講演に行きました。帰途、福岡空港で、一緒に登壇した静鉄ストアの元専務取締役、中山直人氏と会いました。傍らには、男性がずっと付いていらっしゃいます。話は、自然と私の出身地でもある静岡県のことに。

 「私は磐田出身なんです」。すると傍らの方は「僕は今は磐田に住んでいるんですが、出身は森です」「母が森の出です」「どちらですか」「下宿です」「僕も下宿です」。そういえば、この方、こんにゃく屋さんをやっているとか??? で、はっとしました。よく祖母と母の会話にでてきた名前「こんにゃくやのおこうちゃ」。祖母の家のお隣りか、お隣りのお隣りか、記憶は定かではありませんが、「おこうちゃ」さんは確かに祖母の家の隣人で、祖母のお友達で、おそらく嫁同士で。で、その方は、「おこうちゃ」さんのお孫さんだったのです。お名前は、倉島正三さん。現在は、遠州森町の小国神社に向かう街道筋で「久米吉」という立派なこんにゃく屋さんを経営していらっしゃいます。

 私の家は商売をしていたので両親はいつも忙しく、兄と二人でバスに揺られ、よく祖母の家に泊まりに行きました。近くに太田川が流れていて、夏休みは毎日川遊びです。遠くに見える鉄橋には、時々、煙を吐きながら蒸気機関車が走っていました。祖父は大工の棟梁だったので、家には常時10人くらいの弟子が寝泊まりしていて、夕食時などはそれは賑やかでした。私はいつも、横に長く並べられたテーブルの真ん中にどんと座わる祖父の膝に乗って、得意満面でした。

 そんなことを思い出しながら、祖母や母が生きていたら、この偶然の出会いを、きっと驚いて、そして喜んでくれたに違いないと思いました。

2年ぶりの展示会

 11月10日、業務用食材卸、株式会社久世の展示会に伺いました。昨年は新型コロナウイルス禍で中止したため、2年ぶりの開催です。展示会のテーマは「外食新時代~原点回帰+α~」。FLコスト低減を可能にする食材、汎用性の高い商品・メニューの提案、コロナ収束後を見据えてのサポート提案をメインに展開されていました。 

 SDGsの施策として、入り口で紙製のトレーと箸が渡されます。トレーはほどよい大きさがあり、ヘリが高いので、試食品を載せて持ち歩いても落とす心配がありません。いろいろな試食品を盛り合わせてビュッフェの皿のようにしている来場者もいました。会場の所々に試食テーブルがあり、各ブースで受け取った試食品はそこでいただきます。人気のブースの前に密を作らない工夫です。

 年に1度、展示会でしか会わない食品会社の担当者さんたちがたくさんいます。皆さん、飲食店や宿泊施設などをお客様にする業務用担当ですから、コロナ禍で大変な思いをしていらっしゃいます。2年ぶりにお会いして近況を伺って歩きました。皆さん、売り上げはまだまだ戻らずと困り顔でしたが、一様に、これからに向かって“やるぞ”という思いが伝わってきました。提案している商品も、例年より力が入っているような。

 飲食店の時間制限、人数制限が撤廃され、Go To イートは2022年のゴールデンウイークごろまでの延長が決まりました。ここにいる皆さんの提案力と営業力で、沈んだ外食市場を盛り上げていただきたいと強く願った次第です。

ソースやつゆの濃さと麺の太さ

 今年は濃い系の味がトレンドです。インスタントラーメンも売れている商品は「日清食品 日清これ絶対うまいやつ!」や「明星食品 麺神」など、濃い味、そして濃い味にしっかり馴染む極太もちもち麺がウリです。

 麺の太さや歯応え、のど越しと、ソースやつゆの味や濃度のバランスは、とても大切です。例えばパスタは、ソースによって太さを変えるのは常識。ボロネーゼやカニ風味のトマトクリームなどうま味の強い、濃い味のソースには、しっかりとした歯応えの太めのパスタを合わせますし、生ハムやトマト、レモンを使ったすっきりとした味付けには細いパスタを合わせるのが一般的です。うどんも同様。ずんぐりもっちりとした伊勢うどんには、たまりじょうゆの濃厚なたれがよく合いますし、細くてなめらかな口当たり、のど越しのよい稲庭うどんは、だしが利いた麺つゆでいただくのがおいしいと思います。

 なのに、です。飲食店には、オペレーション優先で、短時間でゆで上がる細めの麺を使っている店が多いのです。ランチメニューでカルボナーラやアマトリチャーナをオーダーしたとき、細いパスタが使われていると本当にがっかりします。中華料理店でも、広東麺の麺が細いと、とっても損した気持ちになります。具材にボリュームがあればあるほど、残念な気持ちは大きくなります。もちろん、ソースや具材、あんにかかわらず、細いパスタや麺が好きな人もいるでしょう。でも私は、うま味の強い濃い味には、それに適した麺を合わせたいのです。

 ご飯や麺の「大盛り」、ラーメンの「油多め」や「麺硬め」と同じように、「麺太め」をオーダーできたらいいのにといつも思います。

飲食店の制限解除を前に食材費が高騰

 ランチの常連店が、11月1日からランチの価格を10~15%値上げすると言います。食材費の高騰が理由なのだそうです。非常事態宣言が解除され、飲食店に対する制限も緩和から解除に進もうとしている今。“さあ、これからだ”と勢いづく飲食店経営者に、食材費の高騰と人手不足という大きな壁が立ちはだかります。

 食材費の高騰には、大きくふたつの原因があります。ひとつは、世界的規模で起こっている異常気象による農作物の不作です。今年だけでも、北米、シベリア、トルコ、ギリシャなど世界各地で大規模な山火事や森林火災がいくつも発生し、農作物に甚大な被害をもたらしました。北半球の各地では、干ばつにより小麦などの作物が生育せず、家畜に与える餌に窮する国もあります。一方、南半球では、異常低温でとうもろこしやコーヒーの収穫に影響が出ています。

 もうひとつは、ワクチン接種による経済復活の動きと急激な消費量の拡大です。中国は牛肉を輸入したく、米国は、巣ごもり生活と住宅バブルで中国製の家電や家具、自動車部品が欲しい。頻繁な往復に船賃が上がり、“日本行き”は割の合わない航路になっているとか。希少な農産物を高騰した船賃で運ぶのですから、食材費が値上がるのは当然です。

 異常気象と新型コロナウイルス。地球の主人公は決して人間ではないこと、日本は自給率の向上を含め、持続可能な循環型食生活への取り組みを真剣に考えなくてはいけないことを、痛感しています。

料理レシピを愛読します

 料理を作るとき、私はよくレシピを見ます。手慣れた料理でもたまにはレシピを検索して、もっとおいしくなるレシピはないか、おもしろいアレンジをしているレシピはないかと探すのです。

 よく見るのは、「みんなのきょうの料理」(NHKエデュケーショナル)。Webに掲載されているレシピは、今は亡き料理研究家、新鋭の料理研究家、お世話になった料理研究家の息子や娘、親しいシェフたちのオリジナル。どのレシピも、読んでいるだけで楽しく、作りたい欲求が高まってきます。

 料理番組では、昼時間に放映される「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」(朝日放送テレビ)をよく見ます。大阪あべの辻調理師専門学校の、西洋料理、日本料理、中華料理の3人の教授が講師です。司会の上沼氏がひと口食べて感想を話すのですが、その表現がお上手で。今すぐに味見をしたい欲求に駆られます。しかも番組HPに掲載されているレシピもシンプルで、よく考えられているのです。これは、前出のシェフのレシピにも言えることですが、プロの技術とセンスが家庭料理に溶け込んでいて、その点がとても魅力的です。

 私は料理編集者をしていたので、レシピを読むと、料理のポイントと段取りがすっと頭に入ってきます。作りづらい書き方には、ケチをつけることも。“料理記者”の草分け的存在だった岸朝子先生は、「レシピを書く時は、左手に鍋、右手に菜箸を持ちなさい」とおっしゃっていました。順序だけではなく、流れを大切にすることを教えていただきました。