新型コロナウイルス禍を機にすっかり影をひそめてしまったスーパーの試食・試飲販売。古くて確かな手法は、時代とともにその目的を変え、さまざまなカタチで展開されています。
「お歳暮を贈る習慣がない」「お歳暮は自分には関係ない」と感じている若い世代に、贈る前に“自分で試す”という“新しいお歳暮体験”を提供する目的で試食の場を開いたのが、「新宿高島屋」(東京・新宿)。11月、お歳暮ギフトのカタログ“Tasty Days”に掲載されている商品を店頭で味わえる“お歳暮カフェ”をオープンしました。
インフルエンサーやプレス関係者を対象に試食会が開かれるのが一般的なクリスマスケーキ。2012年、客から「失敗したくない」という声が多く寄せられていたため、好みのケーキを探してもらえるよう一般の客向けにクリスマスケーキの試食会を開催したのが、当時の「東急百貨店東横店」(同・渋谷)。東急フードショーと東横のれん街の12店、計18種類のケーキを少しずつ、事前に試すことができました。
因みに14年には、コンビニでもお試しクリスマスケーキが登場。ローソンは、「ホールで買う前に試食したい」「ホールサイズでは大き過ぎるが、クリスマス気分を楽しみたい」という要望に応え、予約専用のホールケーキを小さくした“味見”用を店頭で販売。お試し需要と個食需要の両方の取り込みに成功しました。その後、同様の目的で、おせち市場にも試食用個食型商品のトレンドが。「失敗したくない」「一人でも楽しみたい」ニーズは今も健在です。
バレンタインデー向けチョコレートの試食で名を馳せたのが今はなき「プランタン銀座」(同・銀座)です。06年、女性が商品を選ぶときの参考になるようにとの目的で、広告会社やアパレル勤務の“イケメン”男性を招き、33ブランド約100種類のチョコレートを採点する試食会を開催しました。結果、酒のつまみにも合うチョコや高級チョコへの流れが加速。その後、プレゼントする前に味見をしたい女性向けに試食用商品を販売。自分のために購入する“ご褒美チョコ”需要の取り込みが始まりました。