9月、“焼かない”うなぎ屋「鰻次郎 神楽坂 UTSUROHI」がオープンしました。うなぎを刺身、炙り、しゃぶ炊きで提供。メインは“鰻しゃぶコース”。〆は“白い鰻丼”。合わせるのは、日本酒と白ワイン。皮の焼き目やたれの香ばしさとは無縁な白いうなぎワールドです。
6月、“焼かない”サムギョプサルの提供を始めたのは、東京・恵比寿の「SONON」。マリネした豚バラ肉を低温の油でじっくりと火入れするコンフィ調理により、余分な脂が落ち、質感は驚くほどなめらかに仕上がるとか。鉄板焼きのようなギトッとした脂感や焦げたにおいはなく、軽やかな仕上がりでナチュラルワインと絶妙にマッチするとアピールします。
昨年12月、“焼かない”ハンバーガー“極上生ハンバーガー”の提供を始めたのは、「9Hamburger & Dining Bar」(東京・東田端)。低温調理により適切な温度調節で中心部までじっくりと火入れを行ったパティを、焼かずにサンド。焼かないことで生の肉に近い味わいと食感、噛むほどに広がるうま味が楽しめると言います。
一方、“焼かない”焼肉で販促をかけたのがエバラ食品工業。今年3月、“豚バラ焼肉ジャーキー”“豚キムチジャーキー”の販売に合わせ、焼肉や豚キムチといった肉料理の味を手軽に楽しめる商品として訴求しています。
過去をさかのぼると2014年、山崎製パンは「パサつく」「トーストする気にならない」などの理由から、食パンを敬遠する人が多くなる夏に向けて、主力の食パンで“焼かずに食べる”という戦略を展開。通常商品よりも薄い“ロイヤルブレッド 10枚スライス”を発売しました。トーストしなくてもいいようにしっとりとした食感に仕上げた商品で、スーパーの店頭で、唐揚げなどの惣菜をはさんで食べる“ワンハンドサンド”を提案しました。
通常、焼く料理を“焼かない”、“焼かない”から別のおいしさが・・・の流れは驚きを誘い、興味をかき立てます。そして昨今の夏の酷暑。“焼かない”戦略は、新たなニーズを刺激すること間違いないでしょう。