「癒やしニーズ」と「甘じょっぱ」

 今年も「食市場のトレンド相関図」を作成しました。日常生活は取り戻したかのように思いますが、経済成長を伴わないインフレ、日本の経済力の低下など、先行き不安は解消されないままの日々が続き、「癒やしニーズ」はますます強くなっています。今年トレンドとして挙げたキーワードの傾向は、過去の先行き不安だった年と同じ内容のキーワードが多く、それがさらに深化していることです。
 例えば、「NEXT甘じょっぱ」。「甘じょっぱ」は、「癒やしニーズ」が強くなると派生するキーワードで、過去には、2007年に塩味のジェラートやチョコレートなどのスイーツが人気になり、飲食店では「ゲランドの塩」などブランド塩をウリにしたスイーツが提供され、マクドナルドが「マックグリドル」を発売しました。2000年代は、給与が伸び悩み、「実感なき景気回復」と言われた時代。不況対策としての量的金融緩和政策を06年3月に解除したことから、翌07年から景気の転換局面に入り、リーマンショックが追い打ちをかけました。
 その次は、15年。消費税が5%から8%に引き上げられた翌年で、節約志向が定着。生活が良くなっていないと感じる生活者は、4年後に予定されていた10%増税に猛反対していました。この年は、甘いクレープにトリュフやキャビアを合わせたり、最近日本でも見られるようになった「ドーナツバーガー」が米国でブレークしたり。その米国の甘じょっぱを代表する老舗ハム店「ハニーベイクド・ハム」が日本に初上陸しました。
 今年は、「甘じょっぱ」感がより濃厚になり、かつ大人の風味や辛味が加わってリッチなテイストに仕上げているのが特徴。次のステージにアップしているので「NEXT甘じょっぱ」というキーワードで表現しました。
 「癒やしニーズ」が高まると「濃い系」の味も求められます。ペットボトルの飲料やスナック菓子、氷菓や調味料、ピザやラーメンなども濃い系が続々登場。しかも今年は、過去の「濃い系」よりもさらに濃い味の食品やメニューが多く、「濃厚系」をキーワードにしました。