米国の「TVディナー」

 主食とおかずを組み合わせたワンプレートタイプの冷凍食品の市場規模が急拡大しているという記事が、2/14の日経MJ(流通新聞)に掲載されていました。インテージによると、2023年の推計市場は86億円と17年比で7.7倍に達し、年代別にみると、1人あたりの購入金額が最も多いのは60~70代。ただ、金額の伸びが目立つのは30代以下で、30代の購入金額は6年間で2.4倍に。メーカー各社は、若年層を意識した商品を相次ぎ投入。中でもニチレイフーズの、「デミグラスハンバーグ&ナポリタン」「チキン南蛮&ボロネーゼ」「厚切りベーコンのグラタン&オムライス」など洋食の王道メニューを組み合わせた「三ツ星プレート」シリーズが好調だといいます。
 この記事を読んで、1970年代に初めて聞いた「TVディナー」という言葉を思い出しました。「TVディナー」とは、米国において、例えば肉のトマト煮とグリンピースのバターソテーなど、メインディッシュと付け合わせが一緒にトレイにセットされた冷凍食品のこと。テレビを見ながらでも作れることから、このように言われるようになりました。食事の簡便化を皮肉混じりに表現した言葉なのかもしれません。
 当時、「TVディナー」を日本の食事スタイルに置き換えた場合、ご飯、焼き魚、和え物が仕切りのあるプレートに盛り付けられて冷凍されているという発想になり、すべての料理をちょうどよい温度に温め直すことはできない。従って日本ではTVディナーの展開は難しいという結論に行き着きました。ご存知の通り、電子レンジ加熱は食品に含まれる水分量や大きさ、形に大きく影響されるからです。その点、米国の料理は電子レンジに向いていると言えますし、だからTVディナーなるものが登場したのでしょう。
 ピザだけで食事を済ますなんて考えられないという時代。今より、ずっと日本の食のカタチが固定化されていました。なんだか嘘みたいな話です。