ゴッドファーザーとカンノーリ

 7月、米国の俳優ジェームズ・カーン氏が亡くなりました。映画「ゴッドファーザー」でのドン・コルレオーネの長男ソニー役が印象強く、久しぶりに「ゴッドファーザー」を見ました。
 映画を見ていてよく思うことは、それが何であるのかを知っているのと知らないのとでは、解釈や感情に大きな違いがあるということ。今回のそれは“カンノーリ”です。カンノーリは、小麦粉で作った生地を筒型に揚げ、クリームをたっぷりと絞り込んだお菓子。「ゴッドファーザー」と「ゴッドファーザーRARTⅢ」に出てきます。
 「ゴッドファーザー」では、ドンの部下、クレメンザが広大な麦畑のような場所に車を止めさせて小用を。その間に手下は車内で裏切り者を銃殺。クレメンザは何事もなかったように、車の中に置いてあった、奥さんから買ってくるように頼まれたカンノーリを持ってこさせるのです。せりふは、“Take the cannoli”ですが、字幕は“ケーキを(持って来てくれ)”。1972年の日本では、カンノーリを知っている日本人はほとんどいなかったからでしょう。
 「ゴッドファーザーRARTⅢ」では、コルレオーネ家のドンとなったマイケルの妹コニーが、ドン・アルトベッロを毒殺するのにカンノーリを使います。ドン・アルトベッロは観劇中、コニーから誕生日のお祝いにもらったカンノーリを、おいしそうに食べ続けていました。
 カンノーリの発祥の地は、イタリアのシチリア島。ドン・コルレオーネはシチリア島のマフィアから逃れて来た移民、アメリカンマフィアの起源はシチリア島にあります。強面のマフィアもメロメロになるのは、故郷のお菓子、マンマの味だからでしょう。それを理解して見ると、ふたつのシーンが一段と残酷さを帯びてくるのです。