庶民の初秋の味覚サンマ。今年も高嶺の花

 9月8日日曜日、毎年恒例のさんま祭りが東京目黒駅前商店街で行われました。今年は、サンマが例年以上の不漁で、岩手県宮古市が用意したサンマ7000匹に加え、初めて冷凍のサンマが提供されたそうです。
 “目黒のサンマ”は、落語の有名なネタのひとつ。当時は下衆な食べ物であったサンマをたまたま口にした殿様が、その焼き立てのおいしさに魅了されます。その後、サンマを所望されますが、家来は殿様のことを思い、脂を抜き、骨を除いたポロポロのサンマを椀に入れて提供。殿様はそのサンマがまずいので、「いずれで求めたサンマだ?」と聞きます。「はい、日本橋魚河岸で求めてまいりました」「ううむ。それはいかん。サンマは目黒に限る」というオチです。
 今は、おいしさと希少性で人気の食べ物でも、昔は、今ほど珍重されなかった食べ物は他にもあります。
 例えば、マグロのトロ。江戸時代は赤身が上品とされ、脂が多い大トロは「猫またぎ」。つまり猫もまたいで通り過ぎるほど価値のないものとされていたとか。またニシンの卵、数の子も、身は大切に食されていましたが、卵は捨てられていたようです。私の母も、子どもの頃は、いつも大きな器に数の子が山のように盛られていたと言っていました。
 夏の終わりから秋にかけては、大好きなサンマの季節。脂が乗ったサンマと大根おろしの組み合わせは鉄板です。そのサンマの値段を気にしなくてはならないどころか、丸々太ったサンマが食べられない日が来るとは、思ってもみませんでした。