もはや“安上がり”ではないファストフード

 「いつの間にか値上げしていた!」。今年のGWは、そんな驚きの連続でした。久しぶりに訪れた浅草の天丼屋、六本木の日本料理店、恵比寿の定食屋、渋谷の町中華、近所のハンバーガーショップ。食材代が上がっているのだから仕方ないと同情したり、インバウンド価格にシフトしたのではと悲しくなったり、今が値上げのチャンスとばかり横並びに加わっているのではないかと疑ったり。
 マクドナルドが今年1月の値上げで、モスバーガーやバーガーキングとほぼ同じ価格帯になったことが話題になりました。“ビッグマックセット”は都心店価格で830円です。勝手に安いカレー屋と思っていたココイチ。期間限定メニューの“THEチキンカレー”1030円(税込)に“うずら卵串フライ”131円(同)をトッピングして「いとこ仕立て?」などとニンマリしていたら、1161円(同)。コンビニの弁当価格は、安売りスーパーのそれとは比べものになりません。
 ファストフードチェーンやコンビニチェーンの誕生期、発展期と時代を共にし、それらが食体験の一部になっている世代にとって、ファストフードやコンビニ弁当は、一般飲食店より「安上がり」という固定観念があります。特に、マクドナルドの59円(税別)バーガーやサンキューセット(ハンバーガー+マックフライポテトS+ドリンクで390円)、吉野家の牛丼並盛280円(税込) など、集客を目的とした価格戦略の恩恵を享受してきただけに、度重なる値上げを断行する現在のマクドナルドに対しては、勝手ですが、もはや庶民の味方、ファストフードではないという一抹の寂しさがあります。
 一方、ここ数年で顧客になった世代にとっては、今の価格も違和感なく現実として受け入れられるのでしょう。ファストフードと一般飲食店の区別も、食の調達方法という目的においては、飲食店とコンビニの区別もないのかもしれませんね。