大好きな卵の話

 春は卵の旬。「歳時記」には、「鳥の卵」は春の季語として定められています。原種に近い鶏は、春の時季にしか卵を産まなかったからなのだそうです。現在でも、陽気がいい春に生まれた卵はおいしいとされています。
 卵は、必須アミノ酸をバランスよく含む完全栄養食品。具材にもソースにもなるし、単独でも一品になり、どんな食材とも相性抜群。加熱によって固まる技には、料理界における「食材栄誉賞」ものの価値があります。
 私は卵が大好きです。最後の晩餐には“卵かけご飯”をお願いするつもりだし、晩酌のつまみは“ゆで卵”2個と決まっています。たまにキャベツのせん切りに焼き立て熱々の半熟“目玉焼き”をのせ、しょうゆをかけて黄身を崩しながら食べたくなります。先日、宿泊したホテルでの朝食ビュッフェ。無性に食べたくなってプレートにキャベツを盛ってオムレツを焼いてくれるコーナーに。「目玉焼きできますか?」。料理人は一言「できません」。そうですよね~、卵液でスタンバっているのですから。
 忘れられない卵料理があります。20代の頃住んでいたアメリカのダイナーの“朝食”です。当時マンハッタンには、ガラス窓に「Breakfast$1.99」の文字が大きく書かれている古いダイナーが点在していました。鉄板で焼くスクランブルエッグ、ベーコンやソーセージ、ハッシュブラウンやグリルドポテト、カリカリトーストに、おかわり自由の薄~いアメリカン。この組み合わせがサイコーのおいしさで。ビンボーな私には贅沢な朝食ですが、かなりのボリュームなのでランチ代を節約できました。
 今、卵の価格が急騰しています。一部スーパーでは、品切れも起きているようです。ところが通勤路にあるローソンでは、1パック(10個)179円(税抜)のまま。驚きを通り越してもはやミステリーです。