コロナ下で“通年メニュー”になった鍋料理

 今年の秋は一気に気温が下がり、例年よりも早い冬の訪れを予感させます。秋口、よく話題に上るのは、鍋市場を直撃する夏の異常気象による葉野菜の高騰です。2010年、「保守消費」「もったいない消費」がトレンドキーワードに挙がるほど消費が落ち込んだこの年。「キャベツ鍋のつゆ」「レタス鍋のつゆ」など、シンプルな具材でいただく節約型の鍋つゆが発売されたのですが、葉野菜高騰で節約メニューにならなくなってしまったという笑えない話も。一方、根菜やきのこで作るトマト鍋や葉野菜不要のおでんが人気に。また餃子を具材にした鍋“炊き餃子”も話題になりました。水餃子との違いは、つゆ。トンコツや鶏ガラのスープで餃子をグツグツと炊くので、スープのうま味が餃子の皮に浸み込み、餃子あんのうま味もスープに移るという、うま味の無限ループが起こります。
 ほとんどすべての食材が高騰している今年の鍋市場。昨年、在宅勤務中の手間なしメニューとして人気になった“1肉1野菜”鍋や、具材入りのつゆにしたり、濃いめの味に仕上げたりすることで、1飯1菜を提案する“おかず”鍋が、今年も節約料理として平日鍋の定番になるでしょう。
 すき焼き、しゃぶしゃぶ、寄せ鍋。昭和の鍋料理は、週末のごちそうでした。それが、献立を考えなくていい、冷蔵庫にある野菜でできる、後片付けがラクといった理由から、手抜きをしたいときの“冬メニュー”になり、新型コロナウイルス下で「おうちごはん」の回数が増えた昨今は、冬以外でも鍋料理の需要は高く、簡単に食事の用意をしたい日の“通年メニュー”として人気になっています。