スパイスとハーブの話

 家庭に外食のエッセンスを持ち込みたいとき、活躍するのがスパイスやハーブです。特に夏の家飲みのアテ料理に欠かせないのが、クミンシードやカルダモン、カイエンペッパーなどクセが強いスパイスたち。肉に振りかけて焼くだけで、一気にエスニックな雰囲気を演出してくれます。ハーブも同様。バイマックルやレモングラスは、タイ料理のスープやカレーに欠かせません。
 一方、オリーブオイルに鶏肉と一緒にローズマリーとにんにくを漬け込んでおけば、いつでもイタリアンなローストチキンが楽しめますし、プロヴァンスのミックスハーブで下処理すれば、南仏の風が吹いてきます。
 和のスパイスの代表と言えば、七味唐辛子でしょうか。赤唐辛子、青のり(青さ)、山椒、黒ごま、白ごま、しそ、陳皮、麻の実、けしの実、しょうがなどの素材の中から、何をどのような配分で組み合わせるかはメーカーによって異なりますが、縁起担ぎの7種類はお決まりのようです。スパイスでもあり、ハーブでもあるのかなと思うのは、山椒です。“粉山椒”や“実山椒”はスパイス、若芽の“木の芽”や“花山椒”はハーブ。ほかに和素材でハーブのようなものを挙げるとしたら、“しそ”や“三つ葉”、“あさつき”でしょうか。いずれも、東南アジアやヨーロッパのハーブのように料理に強い風味を付けるために使われるというより、薬味やあしらいとしての役割が多いのが特徴です。
 スパイスを求めてヨーロッパ各国がアジア進出を計り、独自ルートの獲得に乗り出した大航海時代、ナツメグを巡って英国とオランダが凄惨な争いを繰り広げたスパイス戦争。料理の素材としてだけなく、殺菌剤や保存料、薬としてのスパイスやハーブの当時の価値は、現代の日本人には想像すらできません。