食感ブームは[触感消費]へ

 「2026年 食市場のトレンド」講演では、[エモ(エモーショナル)消費]のキーワードの中で、若者の編み物ブームを取り上げました。編み物が新たな“集中できる趣味”として人気になっているという内容。実際、100円ショップのDAISOでは、編み物関連商品の24年度の売り上げが前年比170%に伸びました。無心になって手を動かす。編んだ物は形になって残る。スマホでSNSや動画を何となく見続けたときの虚無感と異なり、自分の手で生み出した充実感が得られる。スマホ全盛の今だからこそ、編み物の魅力が際立つのかもしれません。
 それを追いかけるような情報が米国からも。10~20代の間で裁縫が流行っているのだそう。ローカルテレビ局WKTVニュースは昨年、国内で約3000万人が裁縫していると報道。TikTokでも裁縫関連の投稿数は約3万件あり、若年化が進んでいると指摘しました。またニューヨーク・タイムズによると、若い世代が裁縫教室に通うようになった結果、ニューヨーク裁縫センターでは売り上げが75%増加しているとか。
 そしてノルウェーの若者が今熱中しているのが、料理なのだそう。アルゴリズムが勧める画面から離れられないZ世代とα世代が今、キッチンに逃げ込んでいるといいます。パン作りのような一から手を動かすアナログな作業が心配や不安を減らすための手段になりつつあるようで、調査会社が15~25歳を対象にした意識調査によると、生地作りから行う若者の割合は25年の調査時の55%から64%へと上昇。余暇時間に最も関心のある行為として「食事」が挙がり、ノルウェー産食材や地産地消、オーガニックへの関心も高まっているようです。確かにノルウェーでは、生地からパンや焼き菓子を作る文化はかなり身近なよう。パン作りは生地をこねているときの感触がクセになるし、生地を台に叩きつける工程はストレス発散にもなります。
 私は、来年のトレンドキーワードに[触感消費]を挙げる予定です。毛糸も布もパン生地も触って心地よく、自らの手で何かを作り上げたときの達成感は共通しています。モチモチ、ザクザクの食感ブームから[触感消費]へ。癒やされたい生活者のニーズは[五感消費]へと広がり、次のフェーズに向かっているようです。