吉野家が始めた“ダチョウ”活用

 吉野家ホールディングスは、持続可能な未来のためにダチョウ(オーストリッチ)に関する事業の展開を100%子会社 SPEEDIA(スピーディア、東京・中央)を中心に始めました。事業領域は食だけでなく、美容と健康にまで及んでいます。
 ダチョウの肉は、低カロリー・低脂肪・低コレステロール。鉄分が豊富で、筋肉維持に不可欠なクレアチンや、脂肪燃焼を促すL-カルニチンも豊富。余分な脂肪を付けず、質のいい筋肉だけを求める運動選手や体形が気になる方はもちろん、高齢者の運動能力の改善にも役立つとして「アスリートミート」とも呼ばれ、弊社の“2006年 食市場のトレンド”には、羊、馬、鴨、内臓系と一緒に「ローファットミート」というキーワードで挙がっています。
 「吉野家」は8/28、“オーストリッチ丼〜スープ添え〜”の販売を“クッキング&コンフォート”スタイルの約400店舗にて合計約6万食限定で始めました。茨城県の牧場で育てたダチョウのモモ肉とヒレ肉をローストビーフ風に仕立てた“オーストリッチ丼”に、ダチョウのガラスープを添えたメニューで、わずか1週間ほどで完売したようです。
 SPEEDIAのダチョウに関する研究は、肉や脂にとどまらず、骨、羽根、皮など全般の部位が対象。ダチョウのすべての部位を無駄なく有効に活用するという観点で、人々の美と健康に役立てたいとしています。研究により、ダチョウの脂は美容成分が肌に浸透する効果を促進することが明らかに。ダチョウの脂を活用したスキンケア商品の展開も始めています。
 “2019年 食市場のトレンド”のキーワード「オルタナフード」では、ジビエや昆虫、未利用魚などと共に、飼料効率がよいという観点からダチョウを取り上げています。新型コロナウイルスの脅威が蔓延していたこの年、オーストリッチトリビュート(京都・精華)が発売したダチョウキャンディも併せて紹介しています。ダチョウの卵黄抽出物を配合したキャンディで、驚異的な免疫力でのどの粘膜を保護してくれるという商品。これもまた、ダチョウの秘めたパワーです。
※オルタナフード・・・食糧問題、環境問題など食に関わる問題の解決や、食の伝統の保護に繋がる食材のこと。

それってイタリアの“小料理屋”?

 イタリアでは最近、調理済みの惣菜と作り立ての料理を提供する“惣菜&トラットリア”が飲食店の新業態として注目され、増えているそう。惣菜を温めて提供する店はあったものの、それにプラスして注文を受けてから調理するメニューも揃えるのが、人気のスタイルなのだとか。
 この情報を聞いてピンと来たのは“小料理屋”。料理上手の女将が切り盛りしているイメージの。カウンターに座った目線の高さに大皿に盛られた惣菜が並べられていて、まずはその中から何品かを注文するのがお作法。料理によってはそのまま小皿に盛り直して、内いくつかは温め直して、またいくつかは最後の仕上げ調理をして。提供の仕方も、料理に合わせて細やかです。惣菜は、家庭の常備菜あり、ちょっと手の込んだ料理あり、はたまた女将の故郷の味あり。「全部食べたい」と思わせる大皿が並んだカウンターは、これから始まる幸せ時間を約束しています。
 情報で紹介されているのは、イタリアのナポリ料理店「CreDa Gastronomia Popolare(クレダガストロノミアポポラーレ、みんなの惣菜店)」。人気メニューのひとつが、2人の星付きシェフ、それぞれの祖母の想い出の料理から生まれたトマトソースの“ノンナマリア(マリアおばあさん)のミートボール”とか。やっぱりおふくろの味は、洋の東西を問わず人気のようです。
 イタリアの“惣菜&トラットリア”も日本の“小料理屋”も、並べられた料理を見て選ぶワクワク感、メニューの文字情報から料理を想像し、でき立てを待つワクワク感、ふたつを同時に味わえます。
 今、訪日外国人客に人気なのは、ファミレスのようにメニューブックに料理の画像がある飲食店だとか。どんな料理なのかがひと目で分かるプレゼンテーションは、日本ならではのよう。ならば、目の前に日本料理が並ぶリーズナブルな小料理屋は、絶対に人気になるはず。“スナック人気の次は小料理屋!”と言いたいところですが、「小料理」の提灯、すっかり見られなくなりましたね。

世界でじわじわ根付く納豆文化

 世界的ヘルシーブームを追い風に、爆発的ではないにしてもちょこちょこと話題になるのが、海外での納豆人気。以前は、訪日外国人旅行客に日本で驚いた食品、苦手な食品を質問すると必ず挙がった納豆。においと糸を引く見た目が苦手のようです。そもそも発酵と腐敗は紙一重。その違いは、人間にとって有益であるか否かのようで、基準は曖昧です。チーズやヨーグルト、生ハムやドライソーセージ、アンチョビ、シュークルートやピクルス、キムチやザーサイ、ビールやワイン、紅茶や烏龍茶もみんな発酵食品です。いろいろな国にさまざまな発酵食品があり、強弱こそあれ、それぞれに特有のにおいやクセがあります。が、糸を引く食品は珍しい。この見た目が、慣れていない人には“腐敗”を連想させることは容易に想像できます。
 そこで、納豆王国茨城では2014年、納豆を世界に羽ばたかせようと「豆乃香プロジェクト」が発足。県内の納豆業者6社が、茨城県工業技術センターが開発した糸引きの弱い納豆を統一ブランド名「豆乃香」と定め、海外への販売を始めました。フランスで開催された展示会での評判は上々だったとか。
 最近では、糸を引く納豆も海外で市民権を獲得しつつあるようです。米国では納豆を具材にしたブリトーが話題になり、スムージーやサラダにも。フランスでは納豆を使ったクレープが提案され、タルトやカナッペの具に。それぞれの国の料理や食材との相性の良さが奏功してさまざまなアレンジメニューが生まれているようで、納豆を使ったスナック菓子も登場しています。
  日本においては、納豆スパゲティ、納豆オムレツ、納豆ブルスケッタ、納豆ピザ、納豆炒飯などなど、納豆アレンジは無限大。今後、海外で納豆文化がさらに広がれば、その地方の食文化を反映した独特の納豆料理が生まれ、逆輸入されて日本で人気になることも・・・あるやもしれません

ロッテの「イブ」復刻発売で思い出されること

 グミ人気に押され、低調が続いていた板ガム市場に復活の兆しが。インテージSRI+によると今年4~6月の売り上げは前年同期比で110%と伸長。特に若い世代に顕著で、マクロミルのデータでは10~20代の板ガムの購入率が150%と伸びているそう。
 そんな中、ロッテは、1972年に発売、95年頃に終売した“香水ガム”「イブ」を復刻販売しています。ECなど一部店舗での取り扱いを除けば、なんと29年ぶりの発売になります。この商品、中高年の女子なら一度は口にしているのではないかと思います。私も例外なく、驚きを持ってはまりました。72年と言えば、女性がガムをかむことに否定的な意見もまだ残っていた時代。まさに、未開拓の若年層女子市場をターゲットにした、それまでの板ガムのイメージを完全に覆す“香水のようなガム”です。
 この情報で思い出したのが、2010年に展開されたロッテと資生堂の共同販促。ロッテは、資生堂の化粧品ブランド「マジョリカマジョルカ」をイメージした板ガムを「グラマティック」ブランドの限定商品として発売しました。「グラマティック」は、“香りで吐息をメイクする”をコンセプトに発売されたガムで、ローズやライチ、ペアーなど女性がうっとりするようなさまざまなフレーバーを展開。のちにタブレットやキャンディも同ブランドで発売しています。
 この年、「マジョリカマジョルカ」の夏限定商品は、紫の花の色が基調。「グラマティック」のパッケージも紫色をテーマにし、“吐息にマジョリカマジョルカの魔法”と記載するなど、世界観を連動させました。しかも両商品を並べて陳列できる販売台も制作。化粧品売り場でガムを販売したのです。ここには、ロッテと資生堂、双方の狙いがありました。「マジョリカマジョルカ」は認知度は高いものの当時の取扱店は約9500店。一方、ロッテの「グラマティック」の取扱店は約7万店だか、ブランド認知率は低い。メインターゲットが重なる双方は、互いの弱みを補完して効率的に売り上げ拡大を目指そうとしたわけです。

学生時代のアルバイトの話

 学生時代のアルバイトで、初めて飲食業界に足を踏み入れる人は多いと思います。人手不足の今は、未経験でも引っ張りだこ。加えて、親元を離れて大学生活を送る場合、仕送りだけで学費と生活費を賄える学生は半分以下。生活費が掛かる東京においては、アルバイトのために上京したの?という生活を送る学生も少なくありません。そんな彼らが、飲食市場に夢や目的を見出しても不思議ではないでしょう。実際、“使えるアルバイト”が入社を希望したら、経営者や本部は大歓迎でしょうし、今活躍している社員の中にも、アルバイトからの生え抜きという人はたくさんいます。
 私も学生時代、飲食店でアルバイトをしました。当時、女性が厨房に入ることは和洋中問わず難しく、権威のある店では絶対に不可能。そこで、都心のフツーのレストランに応募しました。がそこでも、「フロアなら」と言われ、「洗い場でいいので」と無理矢理厨房の端っこに入れていただきました。大学の寮で大量調理の厨房は慣れていたとは言え、飲食店ならではの洗い場の鉄則を教えられ、フライパンの洗い方で叱られ。その後、野菜の下ごしらえをさせていただけるように。大きな牛刀の重みを利用して引き切りをするテクニックは、調理力学(?)を体感した初めての経験でした。
 女子栄養大学では、大学主催の「子ども料理教室」の助手のほか、料理本の撮影現場、原稿の下書きなど、いろいろな仕事を経験させていただきました。当時、「栄大の学生なら料理が上手いだろう」という期待からか、いろいろな食品メーカーが大学、中でも私がお世話になっていた調理学研究室(当時)にアルバイトの求人を出していました。その中のひとつが、「佐藤食品工業株式会社(現サトウ食品株式会社)」。食関連のイベントで餅を焼き、試食していただく仕事です。恩師の指示でアルバイトに行き、餅の焼き方がうまかったのか、笑顔が良かったのか、その後、何度もご指名をいただきました。今でも、食品関連の展示会などでサトウ食品が出展されていると、学生時代の餅焼きの光景が思い出されます。

おいしく飲めるぞ! 亜熱帯生まれのビール

 ビールは造られた場所、その近くで飲むのが一番おいしいと言われます。それは、ビールが輸送によるストレスの影響を受けやすく、かつ時間が経てば当然、鮮度がどんどん落ちるから。これは物理的な理由です。例えば、中欧のブリュワリーでどこまでも続く麦畑を眺めながら、カリブ海に浮かぶ島国のブリュワリーでレゲエを聞きながら、そんな環境や空気感もビールのおいしさを増幅させます。そしてもうひとつ大切なのが、気候です。タイのシンハー、インドネシアのビンタン、シンガポールのタイガー。いずれも日本でも買える有名なビールですが、現地ではおいしいのに、日本で飲むといまひとつ。そんな経験をした人は多いと思います。
 沖縄を代表するビール会社オリオンビールは今年4/27~5/6、オリオンビールが楽しめる新感覚のイマーシブ型バー「秒で沖縄に行けるバー by Orion」を東京・渋谷にオープンしました。白砂を敷き、ガジュマルの木々を配し、プロジェクションマッピングで東洋一美しいとされる宮古島の与那覇前浜ビーチの風景を投影。時間の流れに合わせて日が傾く仕掛けに加え、湿度や温度も管理。オリオンビールがおいしく飲める沖縄の空気感を再現しました。
 さらにオリオンビールはウェザーニューズ(千葉)と共同で、沖縄と近しい気候を示す「沖縄指数」を開発。オリオンビールが飲み頃の地域を知らせる天気予報を8/5から1ヵ月間、X(エックス)のウェザーニュース公式アカウントでプロモーション配信しています。那覇市の平均気温33℃に対し、35℃超えの地域が多発した今夏の日本。亜熱帯で生まれたビールが、日本の至る所でさらにおいしくいただけるようになったということ。ひょっとしたら、シンハーも?ビンタンも?タイガーも?

真夏の果菜とタネの話

 夏は、果菜の季節。トマト、なす、きゅうり、ピーマン、オクラ、ズッキーニ、ウリ、ヘチマ、いんげん、枝豆にそら豆。とうもろこしもイチゴも果菜に入ります。ここに挙げた名前だけでも、それは豆では、穀物では、果物ではと、たくさん疑問が浮かびますが、まずは果菜ということで。果菜の特徴は、水分が多く夏バテを解消してくれるビタミンやミネラル、中でも汗で体外に出てしまうカリウムが豊富に含まれているものが多いこと。酷暑を乗りきるためにも、たくさんいただきたいものです。
 果菜の定義は、“果実やそれに含まれる種子が食用部位となる野菜”。トマトもきゅうりも可食部分にタネがありますが、きゅうりなどは未熟果でいただくのでそれほど気になりません。でも料理によっては、きゅうりのタネとワタをスプーンでかき取ったり、トマトはタネの部分を除いて果肉だけを利用することもあります。
 タネを除くのが面倒な果菜がピーマンです。ぶどうもすいかもタネなしにできるのだから、ピーマンのタネなしも可能なはず!と思っていたら、横浜植木(神奈川・横浜)がタネ無しピーマン「タネなっぴー」を開発していました。が一方で、最近は“ピーマンのタネごと料理”がSNSでちょっとしたネタになっています。ピーマンのタネには、ビタミンC、カルシウム、水溶性・不溶性の両方の食物繊維などが豊富に含まれているとのこと。タネとワタを残したまま、ヘタだけ除いて煮浸しにしたり、挽き肉詰めにしたり、肉巻きにしたり。食材を余すことなく食べきることは、SDGsにも即します。
 とは言え、ピーマンのタネは硬く、舌触りがよくないし、苦みもあり、料理の味に影響します。ただでさえ敬遠しがちな子どもたちには、余計に嫌われそう。

アメリカで人気のカクテル“エスプレッソマティーニ”

 米国旅行中、ミズーリ州の田舎町のライブハウスでも、セントルイスのソウルバーでも、マンハッタンのステーキハウスでも、「お薦めのカクテルは?」と聞くと答えは決まって“エスプレッソマティーニ”。バーで“エクストラ・ドライマティーニ”以外のカクテルをオーダーすることがほぼない私にとっては、初めて聞くカクテルの名前でした。が実は、オーセンティックバーではずっと以前から提供されているスタンダードカクテルでした。
 “エスプレッソマティーニ”はエスプレッソコーヒーを主成分としたカクテルの総称のよう。エスプレッソコーヒーとウオツカ、コーヒーリキュール、砂糖シロップなどの甘味料が基本のレシピです。本来、マティーニはジンをベースにベルモットで香りを付けたカクテル。ウオツカが使われているのになぜ“マティーニ”と呼ばれるのか。アメリカの場合、マティーニグラスを使い、バーテンダーが「マティーニ」と言えば、それは“マティーニ”なのだとか。確かに、ウオツカだけでなく、バーボンやラム、テキーラやブランデーで作るレシピもあるようで、アメリカではカクテルもおおらかです。
 肝心の味は、エスプレッソコーヒーの苦味と甘味料の甘さ、そこにウオツカのキリッとした特有の風味が絶妙に絡み合うのが特徴。クセが強い酒が苦手の人でも楽しめる、大人のカクテルです。コーヒーのサードウェーブをきっかけに米国ではもちろん、世界中でブームになったようで、もちろん日本のバーやカフェでも味わえます。2019年、東京・中目黒にオープンした“STARBUCKS RESERVE® ROASTERY TOKYO(スターバックスリザーブ®ロースタリートーキョー)では、“スターバックス リザーブ”を冠する初めてのカクテルとして登場しています。
  バーでもカフェでも提供されるこのカクテル。注目したいのは、作り手がバーテンダーなのかバリスタなのかの点。バーにはエスプレッソマシンがないことが多く、そのせいでしょう。前者にとってのエスプレッソコーヒーは副材料であり、後者にとっては主材料です。だからこそ、カクテルの表現はテイストだけに留まらない。その違いを探るのもまた一興です。

変わらないマンハッタンの「Zaber’s」

 前号に引き続き、アメリカ視察の話題。アメリカは、スーパーマーケットに代表される食品小売り、ファストフードやファストカジュアルなどの業態や、かつてはアマゾン奥地をテーマにした“秘境レストラン”、今は“イマーシブレストラン”などトレンドをいち早くコンセプトに展開している飲食店に関してはとても興味深い国なのですが、「外食が充実している?」と問われると・・・。加えて、インフレと円安。チップを入れると、東京と同程度かそれ以下の満足度で2、3倍の出費は覚悟しなくてはなりません。一方、野菜や肉など国産の食材はとても割安です。そこで、マンハッタンではキッチン付きのホテルに滞在し、スーパーマーケットで食品や惣菜を購入して食事を楽しむことにしました。
 マンハッタンの「Whole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)」や「Trader Joe’s(トレーダー・ジョーズ)」は、日本人にも馴染みやすい広さ。野菜売り場に最もスペースを割いていて、カット野菜の種類がとにかく多い。精肉は対面販売が基本で、必要な量だけカットしてくれます。惣菜の量り売りも充実していますが、レジでまとめて計算するためかなり込み合います。日本では、まずは避けるシステムでしょう。合理主義一辺倒と思われがちなアメリカですが、雇用を生み出すためと考えると納得できる場面に多々遭遇。人口減少に苦しむ日本のほうが、よほど合理的に省力化されています。
 私が大好きなスーパーマーケットは、アッパーウエストサイドの老舗「Zaber’s(ゼイバーズ)」。古い店内は、この店が100年近くもの間、地元の人々に愛され続けていることがひしひしと伝わる雰囲気。有名なのは、チーズと魚の燻製、惣菜の種類の多さです。「Zaber’s」の食をあれもこれもと楽しむために、マンハッタンに数ヵ月滞在したいと思えるくらい。初めて出会った40年前とまったく変わらない、日々の買い物を楽しいと思わせてくれるスーパーマーケットです。

変わらないアメリカ田舎町の食のおおらかさ

 6年ぶりのアメリカ視察。訪れる度に思うことは、「ホント変わらない」。人も街も、知っているアメリカそのままの姿でいつも迎えてくれます。その変わらなさぶりは、空港に降り立つとすぐに実感できます。縦にも横にも大きな身体の空港職員の働きぶりは、決して褒められたものではなく、手荷物検査所での対応に至っては、入国早々、アメリカ映画の囚人役を仰せつかったのではないかと錯覚するほどの横柄かつ威圧的な洗礼を受けます。
 今回の旅の計画はふたつ。ミズーリ州のカンザスシティからセントルイスへ向かってルート66を走り、地元の人々が行きつけのスーパーや飲食店を訪ねること。マンハッタンではキッチン付きのホテルに滞在し、スーパーで食品や惣菜を購入して料理をし、試食をすること。
 まずはドライブ。田舎町の幹線道路沿いに建つのが、「Walmart Supercenter (ウォルマート・スーパーセンター)」。スーパーセンターの売り場面積は、1~2万㎡。倉庫のような空間の中に、生活に必要なおよそ10万品目の商品が並び、地域住民の胃袋を満たし、生活を支えています。特に加工食品は、1カテゴリーが多品種で、ケース陳列の商品が多く、圧倒されます。そしてすべてがビッグサイズ。野菜も肉もピザも何もかも。“ファミリーサイズ”と謳うバターの容量は1.9kg。「何人家族?」と思わず笑ってしまいます。日本のものより華奢なのは、しょうがぐらいでしょうか。
 エントランスには、装甲車のようなショッピングカート。大きな身体をもたせかけて前進するには、かなり強靭でないと。客は、その大きなカートに食品を入れるわ入れるわ。「そんなに食べ切れるの?」と思いますが、広大な緑の大地に、ときどきポツンポツンと家が建っているような環境。超特大冷蔵庫と冷凍専用庫に、入るだけの食料を貯蔵するのでしょう。
 店がどんな商品に重点を置き、客が何をカートに入れているのか。それを見れば家庭の食は推測できます。カロリーや栄養バランス云々はさておき、一言で表現すれば「過多」と「豊か」です。田舎町の住民の食に対するおおらかさは何も変わっていません。ピックアップトラックが似合う風景も、これまた変わっていません。