栄養バランスが取れていた昭和後期の家庭料理

 来年2025年(令和7年)は、昭和100年。弊社が毎年作成する「食市場のトレンド2025年」相関図のトレンドキーワードに「昭和100年レトロ」を挙げました。最近は、昭和平成令和と時代を超えてヒットした曲のランキングをしたり、昭和レトロな喫茶店や食堂を紹介したり、テレビ番組でも昭和が多く取り上げられています。
 家庭の食の世界でも、今後、昭和の食がいろいろなカタチで注目されるかもしれません。例えば、昭和55(1980)年頃の食事が日本人にとって最も理想に近い栄養バランスだったのではないかと思います。昭和48年高度経済成長が終わり、昭和61年バブル景気が始まるまでの落ち着いた期間。まだ日本の家庭料理の伝統や風習が残っていて、献立は、米を主食にみそ汁、肉や魚の主菜、野菜や豆類の副菜が複数付いた一汁三菜が基本。常備菜や漬物を用意する習慣も残っていました。洋食が家庭にも定着し始め、朝食はパン食という家庭が増えた時期。目玉焼きに付け合わせはキャベツのせん切り、季節の果物に牛乳などの献立。夕食にはハンバーグやポークソテーにサラダといったメニューも珍しくありませんでした。子どもの好みが食事に反映され始めたことも家庭料理の洋食化を後押し。圧倒的に多かった専業主婦は、子どものためにと料理本や料理番組を手本にせっせと洋食にチャレンジ。主婦向けの料理教室も賑わっていました。
 昭和の始め。日本の食卓は栄養学的には決して豊かとは言えず、塩気の強い漬物や塩辛などで白飯を何杯もお替わり。エネルギーの主体は炭水化物でした。適度な洋食化は、肉からタンパク質を果菜や葉野菜からビタミンやミネラルを摂取。使用食材も増え、バランスが取れていたと思います。家電進化と核家族化が進んだ家庭で、主婦の牙城となった台所。主は、新しい料理作りを楽しんだことでしょう。ただ、味わったことがない料理も多く、これでいいのかしら?のトライアンドエラーの日々だったことは、想像に難くありません。

プラスチック削減に向けて広がる無料給水所

 $1=\160台という円安絶好調の中で米国旅行をした今夏。宿泊したホテルで水道水を沸かし、マイボトルに入れて持ち歩くだけでもかなりの節約になりました。因みに、空港の自販機で売られていたペットボトルの水は500mlで$3.5(560円)。その代わり(?) 搭乗階には、マイボトルに水が入れられる給水機や直接飲める給水機がたくさん設置されています。
 世界各地でプラスチック利用の削減への取り組みが積極的に行われている中、米国では多くの州で、ペットボトル入り飲料水の公費での調達を廃止しています。加えて民間も含め、新設のビルには誰でも利用できる給水設備の設置を義務付けています。地方自治体では、市が所有する施設や敷地内でのペットボトル飲料水の販売を禁止する条例を施行。“水道水推進キャンペーン”を展開し、おいしい水道水を提供していることを市民に知ってもらう活動もしています。グランドキャニオンなどの国立公園や大学などでも、ペットボトル飲料水の販売は禁止されていて、代わりに水飲み場や給水機はとても増えています。
 この流れは日本にも。東京都水道局は、都内で冷たい水道水がいただける給水ポイント約900ヵ所を地図にまとめてホームページに掲載しています。が、悲しいかな使いづらい。同様のサービスに、REFILL JAPAN(リフィルジャパン)が展開している「リフィルスポットマップ」や、一般社団法人Social Innovation Japan(ソーシャルイノベーションジャパン)が運営するアプリ「mymizu(マイミズ)」などがあり、近くにある給水機や無料でマイボトルに水を入れてくれる飲食店、雑貨店などがすぐに探せます。
 今後も、今年のような、いえそれ以上の酷暑の夏が繰り返されるのは確実のよう。ペットボトルの飲料水をできるだけ避け、マイボトルに給水して持ち歩くことは、熱中症予防に役立つと同時に、酷暑の原因でもある地球沸騰化を防ぐことにも貢献します。

近年おせちのキーワード[SDGs・フードロス削減・アップサイクル]

 おせち商戦が只中です。今年のおせちトレンドは、「和洋・和中を組み合わせたおせち」「伝統的な和風おせち」「有名料亭・レストランのおせち」「オードブル付きおせち」などだとか。他方この数年、トレンド情報で取り上げたおせちのキーワードには、[SDGs・フードロス削減・アップサイクル]があります。“年の初めは贅沢を味わいたい”というニーズは変わらないものの、“食材をムダにしてはいけない、したくない”という時代の空気感を反映したおせち商品もいろいろ登場していました。
 [SDGs]をテーマにしたのが2022年の高島屋のおせちです。ジュースを作る際に残る伊予柑の皮を活用したエサで育てた“真鯛の西京焼き”、商業施設の余剰食品を用いた飼料で肥育した豚を使った“焼き豚”、山の生態系を守るため処分されたジビエの“ソーセージ”や“ハンバーグ”、規格外の野菜を使用した“筑前煮”などが詰め合わされています。[フードロス削減]に動いたのが、ロスゼロ。おせちは販売数をある程度予測して製造しますが、まだ作れるとしても締め切り後に販売することができず、予約数が少ないとそのまま余ってしまいます。23年12月ロスゼロは、それらを「おそち」として会員への販売を始めました。
 [アップサイクル]なおせちを23年向けに販売したのは、ローソンです。おせちの製造過程で出る規格外品や端材だけで作ったアップサイクルな「もったいないおせち」を販売しました。“規格外の蟹爪”や“折れ数の子”、“字がズレた寿高野豆腐”や“伊達巻の切れ端”など13品目です。また大阪・泉大津のグローフーズは23年、おせちの「端材の有効利用アイデアコンクール」を開催しました。“伊達巻”“牛すじ”“牛赤身”“鶏のチーズピカタ焼”“合鴨スモーク”の端材を活用するためのアイデアを募集。一般の人のアイデアと自社開発力の協業により端材の商品化を図りました。

飲食店の想定外の残念なサービス

 飲食店での残念な体験は、料理の内容よりも、サービス面でのことが多いと思います。大きな期待を抱いて訪問した店の場合は料理のハードルも高くなりますが、そうでないとき、料理は往々にして想定内、一方サービス面は想定外のことが稀に起こります。
 宴会場での講演後、場は懇親会に移ります。円卓に着席してのイタリアン。全員が着席する前に注がれたスパークリングワインは、乾杯のときには既に泡はなく。残念ですが、“ありがち”で済ませます。驚いたのは、その後。パンが2個ずつ配られました。私が「ひとつで結構です」と言うと、「ひとり2個ですから」と受け入れてもらえません。しばらくして対面にお座りだった会長がサービスの方に「パンお替わりください」。返事はやはり「ひとり2個ですから」。さすがに同卓の皆さんもびっくり。「私のをどうぞ」と一斉にパン皿を差し出す事態に。“パンの2個縛り”で起こったこの珍事。さすがの私も初めての体験でした。
 上野で人気のそば屋へ。メニューにある“二色鴨ざる”の二色とはなんだろう。更科そばと田舎そばの組み合わせ?変わりそばかな?秋だから菊、さつま芋、ごま?などと思いを巡らせ、サービスの女性に尋ねると返って来たのは「2枚ということです」。「同じものが2枚、大盛りということ?」「はいそうです」。運ばれたのは、案の定、普通のそばと田舎そばの組み合わせでした。
 「パンはひとり2個ですから」はおもてなしの気持ちからは生まれない言葉だし、メニューにある料理の内容を理解していないのは、サービス担当としては致命的です。人手不足が深刻な業界。すぐに辞めてしまうかもしれないアルバイトにムダな時間は割けないし、多く(?)を求めたら辞めてしまうかもしれないということなのでしょうか。そう思うと、過客に過ぎない私が物申してもという気持ちになり。同時に、もう何でもいいからがんばれ!という気持ちにもなり。愁う秋です。

銀行が「Olive LOUNGE」に大変身!

 今年5/27、渋谷西武B館の1、2階、三井住友銀行のあった場所にドドーンと「Olive LOUNGE(オリーブラウンジ)渋谷店」がオープンしました。1階は、三井住友銀行の窓口とATMコーナーに、スターバックスが併設されています。公園通りと井の頭通りに面したカジュアルながらくつろぎ感のある明るい空間です。2階は、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下CCC)が運営するコワーキングスペース「SHARE LOUNGE(シェアラウンジ)」。シンプルな1名席、窓に面した2名席、ソファの4名席のほか、半個室や4、5名で使える会議室も用意されています。プランには、ソフトドリンクプランに加え、スパークリングワインやハイボールが飲み放題のアルコールプランもあります。スナックやクッキー、パン、スープ、ソフトクリームなども食べ放題。アルコールプランがあるからか、味付けうずら卵やチータラなどのおつまみも完備です。1、2階のどちらもグリーンと木を基調とした空間。1階はスタバグリーン、2階はオリーブグリーンで微妙に異なるのかもしれませんが、どちらにしても「Olive LOUNGE」とスタバの親和性は高いと言えます。
 「Olive LOUNGE」は、三井住友フィナンシャルグループ(以下SMBC)の個人向け金融サービス「Olive」をモチーフとした新しいコンセプト店で、資産運用等の相談やVポイントの使い方などをレクチャーしたり、金融に関する知識が得られるセミナーなどを開催したりする場でもあります。因みに、SMBC とCCCは資本・業務提携をしている関係で、前者のVポイントと後者のTポイントは、4/22に新しいVポイントに統合されています。
 銀行の支店は統廃合が進み窓口業務がどんどん縮小する一方、「Olive LOUNGE」の展開には積極的なようで、10/7には東京・下高井戸にもオープンしました。貯蓄から運用へ。顧客獲得のためのポイント活用。金融業界の舵切りが大胆に行われ、そこに飲食を融合させた空間は欠かせないようです。

食企業発祥の地、知多半島

 海に面した温泉旅館を訪ねて知多半島へ。観光地としては余りメジャーではありませんが、食に関してはとても興味深い半島です。
 知多半島に位置する半田市には、ミツカンの本社とミュージアムがあります。ミュージアムでは、酢造りの歴史や工程を実物の桶や実際に発酵している様子を見ながら学べると共に、身体を動かしながらそれらを覚えられるアトラクションもあります。米酢はふつう米から造りますが、ミツカンは酒粕を原料にしています。酒造業を営んでいた創業者の中埜又左衛門は、酒と同時に大量に産出される酒粕を上手く利用できないかと考え、酒粕から酢を造ることを思い付いたといいます。
 半田市にはビール会社もありました。ここでも登場するのは、中埜又左衛門。と言っても四代目です。明治20(1887)年、敷島製パンの前身である敷島屋製粉場を開業した盛田善平と共に、「丸三ビール醸造所」を設立。数年後には、本格的ドイツビール製造に向けてドイツからビール醸造器械を買い入れ、ドイツ人醸造技師を招いて「カブトビール」を発売しました。「カブトビール」は、東海地方では最大のシェアを持つほどに急成長。今でも醸造所の一部が「半田赤レンガ建物」として残されていて、当時としては先進的な「カブトビール」の販促物をいろいろ見ることができます。盛田善平は、ソニーグループの創業者、盛田昭夫の実家、盛田の関係筋に当たります。盛田も日本酒やしょうゆ、みそなどを製造する醸造会社で、発祥は知多半島の常滑市です。常滑と言えば、急須に代表される六古窯のひとつ、常滑焼が有名。もうひとつ、知多半島の入り口東海市は、カゴメの創業の地です。
 海に囲まれた知多半島は、海運業も盛んでした。ミツカンの酢は、半田運河で船に積まれ、握り寿司がブームになった江戸の街に運ばれて行ったのでしょう。(※敬称略)

飲食業界で細分化する二極化

 今年5/20のhimeko’s COLUMN「もはや“安上がり”ではないファストフード」の中で、度重なる値上げを断行するマクドナルドに対して一抹の寂しさがあるという一文を書きました。FFが生まれた国、米国でも富裕層と貧困層の経済格差が拡大する中、米国人の74%がFFを贅沢品と考えるようになり、62%は以前のように気楽にFFを食べなくなったという衝撃的なデータが紹介されています。各FFチェーンは、贅沢なイメージを払拭するキャンペーンを実施。物価に便乗して安易に値上げをしているというネット上の批判を否定しているようですが、一度付いてしまった割高イメージを一掃するのは難しいようです。
 日本においては、ハンバーガーチェーン各社が高価格商品を展開するなど勢いを付けている一方で、ファミリーレストランは店舗数が減少。特に中価格帯のチェーンが苦戦しているようです。低価格帯のチェーンより品揃えを多くしているもののそれが魅力に繋がっていない、空間的に高めの演出はしているもののフルサービスではなくタブレットや配膳ロボットを使うなど、中途半端さが目立ちます。
 経済格差の二極化が拡大する中、飲食業界では立ち位置の選択が難しくなっていると痛感します。東京においては、飲食店の価格は確実に上がっています。今までなら中価格帯と判断されただろう店が開店当初から高価格帯に属する値付けでスタート。既に高価格帯に属していた店はさらに高価格帯にシフトするなど、高価格帯の中でも二極化が生まれていて、それは明らかに円安によるインバウンド消費が背中を押していると思われます。同様に、今まで低価格と思われていたFFでも二極化が生まれていて、大雑把に言えば、ハンバーガーやカレーは上に、丼ものやそば、うどんは下に棲み分けられているのが実情です。
 石破茂氏が自民党総裁に選出され、一気に進んだ円高。インバウンド消費が減速したとき、二極化の上の波に乗った飲食店はどうするのか。興味深く見続けようと思います。

吉野家が始めた“ダチョウ”活用

 吉野家ホールディングスは、持続可能な未来のためにダチョウ(オーストリッチ)に関する事業の展開を100%子会社 SPEEDIA(スピーディア、東京・中央)を中心に始めました。事業領域は食だけでなく、美容と健康にまで及んでいます。
 ダチョウの肉は、低カロリー・低脂肪・低コレステロール。鉄分が豊富で、筋肉維持に不可欠なクレアチンや、脂肪燃焼を促すL-カルニチンも豊富。余分な脂肪を付けず、質のいい筋肉だけを求める運動選手や体形が気になる方はもちろん、高齢者の運動能力の改善にも役立つとして「アスリートミート」とも呼ばれ、弊社の“2006年 食市場のトレンド”には、羊、馬、鴨、内臓系と一緒に「ローファットミート」というキーワードで挙がっています。
 「吉野家」は8/28、“オーストリッチ丼〜スープ添え〜”の販売を“クッキング&コンフォート”スタイルの約400店舗にて合計約6万食限定で始めました。茨城県の牧場で育てたダチョウのモモ肉とヒレ肉をローストビーフ風に仕立てた“オーストリッチ丼”に、ダチョウのガラスープを添えたメニューで、わずか1週間ほどで完売したようです。
 SPEEDIAのダチョウに関する研究は、肉や脂にとどまらず、骨、羽根、皮など全般の部位が対象。ダチョウのすべての部位を無駄なく有効に活用するという観点で、人々の美と健康に役立てたいとしています。研究により、ダチョウの脂は美容成分が肌に浸透する効果を促進することが明らかに。ダチョウの脂を活用したスキンケア商品の展開も始めています。
 “2019年 食市場のトレンド”のキーワード「オルタナフード」では、ジビエや昆虫、未利用魚などと共に、飼料効率がよいという観点からダチョウを取り上げています。新型コロナウイルスの脅威が蔓延していたこの年、オーストリッチトリビュート(京都・精華)が発売したダチョウキャンディも併せて紹介しています。ダチョウの卵黄抽出物を配合したキャンディで、驚異的な免疫力でのどの粘膜を保護してくれるという商品。これもまた、ダチョウの秘めたパワーです。
※オルタナフード・・・食糧問題、環境問題など食に関わる問題の解決や、食の伝統の保護に繋がる食材のこと。

それってイタリアの“小料理屋”?

 イタリアでは最近、調理済みの惣菜と作り立ての料理を提供する“惣菜&トラットリア”が飲食店の新業態として注目され、増えているそう。惣菜を温めて提供する店はあったものの、それにプラスして注文を受けてから調理するメニューも揃えるのが、人気のスタイルなのだとか。
 この情報を聞いてピンと来たのは“小料理屋”。料理上手の女将が切り盛りしているイメージの。カウンターに座った目線の高さに大皿に盛られた惣菜が並べられていて、まずはその中から何品かを注文するのがお作法。料理によってはそのまま小皿に盛り直して、内いくつかは温め直して、またいくつかは最後の仕上げ調理をして。提供の仕方も、料理に合わせて細やかです。惣菜は、家庭の常備菜あり、ちょっと手の込んだ料理あり、はたまた女将の故郷の味あり。「全部食べたい」と思わせる大皿が並んだカウンターは、これから始まる幸せ時間を約束しています。
 情報で紹介されているのは、イタリアのナポリ料理店「CreDa Gastronomia Popolare(クレダガストロノミアポポラーレ、みんなの惣菜店)」。人気メニューのひとつが、2人の星付きシェフ、それぞれの祖母の想い出の料理から生まれたトマトソースの“ノンナマリア(マリアおばあさん)のミートボール”とか。やっぱりおふくろの味は、洋の東西を問わず人気のようです。
 イタリアの“惣菜&トラットリア”も日本の“小料理屋”も、並べられた料理を見て選ぶワクワク感、メニューの文字情報から料理を想像し、でき立てを待つワクワク感、ふたつを同時に味わえます。
 今、訪日外国人客に人気なのは、ファミレスのようにメニューブックに料理の画像がある飲食店だとか。どんな料理なのかがひと目で分かるプレゼンテーションは、日本ならではのよう。ならば、目の前に日本料理が並ぶリーズナブルな小料理屋は、絶対に人気になるはず。“スナック人気の次は小料理屋!”と言いたいところですが、「小料理」の提灯、すっかり見られなくなりましたね。

世界でじわじわ根付く納豆文化

 世界的ヘルシーブームを追い風に、爆発的ではないにしてもちょこちょこと話題になるのが、海外での納豆人気。以前は、訪日外国人旅行客に日本で驚いた食品、苦手な食品を質問すると必ず挙がった納豆。においと糸を引く見た目が苦手のようです。そもそも発酵と腐敗は紙一重。その違いは、人間にとって有益であるか否かのようで、基準は曖昧です。チーズやヨーグルト、生ハムやドライソーセージ、アンチョビ、シュークルートやピクルス、キムチやザーサイ、ビールやワイン、紅茶や烏龍茶もみんな発酵食品です。いろいろな国にさまざまな発酵食品があり、強弱こそあれ、それぞれに特有のにおいやクセがあります。が、糸を引く食品は珍しい。この見た目が、慣れていない人には“腐敗”を連想させることは容易に想像できます。
 そこで、納豆王国茨城では2014年、納豆を世界に羽ばたかせようと「豆乃香プロジェクト」が発足。県内の納豆業者6社が、茨城県工業技術センターが開発した糸引きの弱い納豆を統一ブランド名「豆乃香」と定め、海外への販売を始めました。フランスで開催された展示会での評判は上々だったとか。
 最近では、糸を引く納豆も海外で市民権を獲得しつつあるようです。米国では納豆を具材にしたブリトーが話題になり、スムージーやサラダにも。フランスでは納豆を使ったクレープが提案され、タルトやカナッペの具に。それぞれの国の料理や食材との相性の良さが奏功してさまざまなアレンジメニューが生まれているようで、納豆を使ったスナック菓子も登場しています。
  日本においては、納豆スパゲティ、納豆オムレツ、納豆ブルスケッタ、納豆ピザ、納豆炒飯などなど、納豆アレンジは無限大。今後、海外で納豆文化がさらに広がれば、その地方の食文化を反映した独特の納豆料理が生まれ、逆輸入されて日本で人気になることも・・・あるやもしれません