1975年食

 小学館の月刊誌「DIME」6月号。連載「キーワードで読み解く社会学 Buzz Word」で取り上げたのが「1975年食」。手間なし時短料理がもてはやされる昨今、一汁三菜を基本にさまざまな食材を摂取していた“1975年食”が再評価されているという内容です。
 記事によると、1975年頃の日本の食事はPFC(タンパク質、脂質、炭水化物)バランスが理想に近く、当時の食事が肥満解消や血糖値低下、ストレス軽減などに効果があることが東北大学の研究で報告されているとか。
 摂取カロリー量は、食糧不足だった戦後(46年)から急上昇、75年頃がピークで2226kcal。その後、徐々に減少し2010年に底を打ちます。一方PFCの割合は、加工食品の利用率が上がり、家庭の食の洋食化が進み、外食機会が増加したこと、健康志向・ダイエット志向による脱糖質の流れで、炭水化物が減って脂質が増えていきます。
 確かに1975年当時の献立は、一汁三菜が当たり前だったように思います。ご飯にみそ汁は必須。魚か肉の主菜に野菜や豆、豆腐などの副菜が1、2品。そこにひじき煮や切り干し大根の煮物といった常備菜が加わることも。これらとは別に漬物もありました。時の流れと共に、漬物と常備菜がなくなり、汁物が消え、今は主菜と副菜が合体しています。食卓にみそ汁がなくなり始めたと感じたときのことはよく覚えています。大学生協食堂部のコンサルをしていた当時のこと。みそ汁が売れないので学生たちに聞くと、家庭でもみそ汁は出ないし、なくても構わないと言います。それを裏付けるかのように、“みそ汁は手間がかかるのにおかずの1品としてカウントされない、だから作らない”という生活者の声もよく耳にしました。魚や肉をメインにした主菜の登場回数が、2024年には15年比で11%減少。魚は“ホイル焼き”や“ちゃんちゃん焼き”に、肉は“肉野菜炒め”にと、野菜も一緒に摂れる一皿完結型の料理に取って代わられています。
 魚や肉を主菜に、野菜で副菜をという「一汁三菜の献立」は、生活者の[思考キャンセル]とタイパ志向、節約志向を一身に受けて減少の一途を辿っているようです。主食を中心とした一汁三菜の食事はさまざまな栄養を摂取でき、日本人にとっては理想的なバランスだと思います。が、どんなに素晴らしくても、流石に1975年そのままのカタチに戻すことは無理でしょう。令和の家庭の献立を、手作りだけでなく、加工食品や惣菜、デリバリー料理などすべての調達方法を視野に提案するときの指針となる骨格作りが求められます。