アナログ家電が売れています。今年の食市場のトレンド講演のキーワードのひとつ[エモ消費(エモーショナル消費)]が背景にあります。[エモ消費]は、モノやコトは手段でしかなく、それを通じて得られる“精神価値”の方に重心を置いた消費スタイルを指します。元来、生活者がモノやコトを求める時、そこにはエモーショナル(感情的・情緒的)な理由があるはず。それが、明確化しているということです。コスパやタイパなど効率性重視の対極にあるものに、癒やしや活力を見いだす生活者が増えています。
例えば、編み物ブーム。100円ショップのDAISO(ダイソー)では、編み物関連商品の2024年度の売り上げが前年比170%に伸びました。無心になって手を動かす。編んだ物は形になって残る。スマホでSNSや動画を何となく見続けたときの虚無感と異なり、自分の手で生み出した充実感が得られます。
黒物家電で売れているのは、フィルムカメラやフィルムと電池が内蔵された使い捨てカメラ「写ルンです」、撮影後その場でカードサイズの写真がプリントされる「チェキ」。「写ルンです」はここ数年、前年を上回るペースで需要が拡大。「チェキ」は、その場で現像してくれる“エモさ”がウケ、20~30代を中心に手を伸ばす女性が増えています。さらに東京・渋谷には、“客席でカセットテープが聴けるカフェ”がオープンし人気になるなど、若者を中心に“不便さ”や“手触り”に新鮮さを感じ、そこに心動かされ、お金と時間を費やす傾向が強まっているようです。
調理家電では、デザインは昭和、機能は令和のハイブリッド系や、花柄の炊飯器や保温ポット、二層式の洗濯機など、既に終売したと思われる昭和の商品も登場しています。家電や生活雑貨のトレンドは時代を映します。余談ですが、男性が料理に興味を持ち始めたり、育児に積極的に参加し始めたりした年には、炊飯器やトースターなどの調理家電が黒色になり、バギーやチャイルドシート付自転車、抱っこひもは、ハードなデザインや堅牢な造りに変化します。
[エモ消費]がレトロブームに繋がる理由には、多くのトレンドキーワードが相互に影響しあっています。生活者がなぜ“エモさ”を求めるのか、何を“エモい”と感じるのか。時代の空気の流れをいち早く察知し、その背後にある生活者のニーズを見極めることが大切です。