学生時代のアルバイトで、初めて飲食業界に足を踏み入れる人は多いと思います。人手不足の今は、未経験でも引っ張りだこ。加えて、親元を離れて大学生活を送る場合、仕送りだけで学費と生活費を賄える学生は半分以下。生活費が掛かる東京においては、アルバイトのために上京したの?という生活を送る学生も少なくありません。そんな彼らが、飲食市場に夢や目的を見出しても不思議ではないでしょう。実際、“使えるアルバイト”が入社を希望したら、経営者や本部は大歓迎でしょうし、今活躍している社員の中にも、アルバイトからの生え抜きという人はたくさんいます。
私も学生時代、飲食店でアルバイトをしました。当時、女性が厨房に入ることは和洋中問わず難しく、権威のある店では絶対に不可能。そこで、都心のフツーのレストランに応募しました。がそこでも、「フロアなら」と言われ、「洗い場でいいので」と無理矢理厨房の端っこに入れていただきました。大学の寮で大量調理の厨房は慣れていたとは言え、飲食店ならではの洗い場の鉄則を教えられ、フライパンの洗い方で叱られ。その後、野菜の下ごしらえをさせていただけるように。大きな牛刀の重みを利用して引き切りをするテクニックは、調理力学(?)を体感した初めての経験でした。
女子栄養大学では、大学主催の「子ども料理教室」の助手のほか、料理本の撮影現場、原稿の下書きなど、いろいろな仕事を経験させていただきました。当時、「栄大の学生なら料理が上手いだろう」という期待からか、いろいろな食品メーカーが大学、中でも私がお世話になっていた調理学研究室(当時)にアルバイトの求人を出していました。その中のひとつが、「佐藤食品工業株式会社(現サトウ食品株式会社)」。食関連のイベントで餅を焼き、試食していただく仕事です。恩師の指示でアルバイトに行き、餅の焼き方がうまかったのか、笑顔が良かったのか、その後、何度もご指名をいただきました。今でも、食品関連の展示会などでサトウ食品が出展されていると、学生時代の餅焼きの光景が思い出されます。