代替タンパク質源として、慶應義塾大学発スタートアップ、フェルメクテス(山形・鶴岡)が開発した新素材“納豆菌粉”。納豆菌を大量培養して乾燥粉末にしたもので、主成分は100gあたり70g以上がタンパク質です。カロリーがほぼ同じ小麦粉に比べてタンパク質を効率的に摂取できるうえ、もちもち感を高めるなど食品の物性を改善する効果もあるといいます。
大きな特徴は、生産効率が極めて高いこと。約60分で2倍量になるとか。スプーン1杯(1g)の納豆菌が24時間後には1600万倍の16トンになる計算です。必要なのは、大きなタンクとバイオマス由来の培養液のみ。バイオマスとは、再生可能な生物由来の有機性資源で、石油や石炭などの化石資源を除いたもの。麦わらやもみ殻、サトウキビやとうもろこし、菜種などで、食品廃棄物や台風で倒れた樹木も含まれます。
人口に対してタンパク質の需要と供給のバランスが崩れる“プロテインクライシス”が起こると予想される2050年。インドやアフリカの一部の国々では、人口が急増すると言われています。そのような地域において、未利用だったり、廃棄されたりしていた資源を使ってタンパク質源として納豆菌粉を生産することが可能です。フェルメクテスは今後、その土地その土地の納豆菌粉が作れるよう、培地に応じて納豆菌をカスタマイズしていくことを目指します。
日本では、植物性のタンパク質源として、大豆を原料に納豆やプラントベースフードが作られています。が、知っての通り、大豆は9割を輸入に頼っているのが現状。台湾有事とシーレーン封鎖の危険性が否定できない今、改めて食糧自給率の低さが大きな問題になっている我が国においても、納豆菌粉は救世主になり得るのかもしれません。