ときどき、ミョーにコンビニのレジ横フードに惹かれることがあります。唐揚げやフライドチキン、コロッケやアメリカンドッグに焼鳥などなど。お祭りの露店フードのようなジャンキーさには、魅惑と背徳がない混ぜです。だからレジ横フードを買う瞬間は、レジ清算の終了ぎりぎり。欲望と衝動に負けたときです。
先日の戦敗品は、アジフライとイカフライ。とにかく大好きな揚げ物ですが、リスクもあります。アジフライは、アジの適度な肉厚感が大切。薄過ぎても、厚過ぎても、衣とのバランスが悪くなります。イカフライはイカらしい風味と歯応えを楽しみたい。冷凍イカを利用しているから前者は大きくは望みませんが、後者はなんとか!と期待を懸けます。
コンビニやスーパーの揚げ物は、衣のうま味がジャンキーさを高めます。いろいろな食材からエキスがにじみ出た油を吸着した衣は、“香ばしい”だけでは表現できない特有のおいしさがあり、家庭では真似できません。子どもの頃、珠算塾の帰りに買い食いをした天ぷら惣菜店のさつま芋のおいしかったこと。やはり“うま味油”の違いでしょう。
新型コロナ後、唐揚げ店が一気に急増。そして、同じ勢いで終息しました。理由は、テイクアウト需要の低減、競合店の増加、油、鶏肉など原材料価格と人件費の高騰など。単品販売業態の利点が裏目に出ました。しかし、揚げ物を外部化したい生活者のニーズがなくなったわけではありません。
そんな中、横浜の「クールフライヤー」が、超小型でキッチンの棚に設置できる“クールフライヤーCFT-7”を発売しました。アルバイトでも天ぷらを揚げられる高性能を謳っていて、人件費を抑えつつ質の高い天ぷらを提供できるとか。飲食店や惣菜店では、既存の業態やメニューにプラス揚げ物の提案が可能になるほか、2017年にヒットした、立ち食いを基本とする「低価格揚げ物専門店」が、さらにシンプルな業態になってリバイバルするかもしれません。
月: 2025年2月
いよいよ定着? ハラール食
国内でモスクが増えています。昨年6月時点で全国のモスクは149ヵ所。25年でおよそ10倍になったそうです。推計によれば、在日イスラム教徒はおよそ35万人。単純計算で日本の人口の350人に1人がイスラム教徒です。理由は、人手不足を背景に技能実習や特定技能の在留資格で来日するインドネシア人が増えたため。インドネシア人の9割近くは、イスラム教徒です。
「2014年 食市場のトレンド」講演でも同じような情報を取り上げ、「ハラール食(当時の表記はハラル食)」はキーワードに挙がっています。前年9月、20年オリンピック・パラリンピックの東京開催が決定したことを受け、空港や宿泊施設、外食店などは、その日を目指して早くも外国人旅行者向けに“おもてなし”に磨きを掛け始めました。
成田国際空港では、第1、第2旅客ターミナルそれぞれに「礼拝室」を設置。前年12月から「ハラール食」のケータリングサービスを開始し、有料待合室利用者を対象に、専用キッチンで調理した「ハラール食」を予約制で提供していましたし、06年から礼拝室を設けていた関西国際空港も、その数を増やし、讃岐うどん店など2店でハラール対応のメニューを用意しました。
首都圏の観光施設やホテルでも、イスラム教徒が多いマレーシアやインドネシアなどからの旅行客に対応する動きが広がり、「新宿ワシントンホテル」は事前予約でハラール料理を提供。食品メーカーはビジネスチャンスと見て、ハラールに対応した加工食品の開発を急ぎました。政府もハラール食品の輸出を後押し。高級和牛や果物など日本が強みを持つ農畜産物を、輸出先が求める基準や品質を満たすようにする施設の整備を助成し、日本ブランドの食品人気が高まるアジアやイスラム圏向けに輸出の拡大を図りました。
それから10余年。海外にルーツを持つ子どもが増え、1千人以上のバングラデシュ人が暮らす東京都北区にある認可保育園では、ハラールに配慮した給食を始めています。労働人口の減少が続く日本において、労働を目的に移住を希望する外国人は、大変ありがたい存在。ハラール食への取り組みが、いよいよ本格化しそうです。
あなたは何の「プロパ志向」?
春は講演の季節。講演原稿作成のため、暮れから2月初めまで忙殺されます。晩秋、社内会議を重ねて決める翌年のトレンドキーワード。原稿を重ねていくうちに、次から次へとキーワードに関する新しい情報が入り、原稿の刷新を繰り返します。手前みそですが、弊社が挙げたトレンドキーワードが間違っていないという証しです。
2/12から幕張メッセで開催されるスーパーマーケットトレードショーのセミナーで、“2025年 食市場のトレンド ―「タイパ」と「プロパ」のハイブリッド戦略―”というテーマでお話をします。だからでしょう。お昼ご飯を作っているときなど、「プロパだなぁ」としみじみ思うのです。忙しいのだから、ちょっと出掛けて食べても、コンビニで買って来てもいいのに、料理をしたくなるから不思議です。気分転換? 逃避かも。
料理のプロパの魅力は、料理を1度も、1ミリも楽しいと思ったことがない人、料理をまったくしない人には分からないでしょう。たとえば、古い家具を補修して磨き、ペイントするプロセスを楽しむ人がいます。それを面倒だと思う人は、家具屋に行って新品を買えばいいのです。私は、古いタオルで雑巾を縫います。針と糸でシクシクシクシク。新品のタオル地、ミシン縫いですが3枚110円で売っています。縫い物が苦手な人には、無駄なプロセスに思えるでしょう。昨今、梅干しを漬けたり、ぬか床を育てたり、そんな“手仕事”に挑戦する生活者が増えています。お金と引き換えに得るものではなく、頭と手を動かして時間を楽しむものに癒やされ、そこに価値を求め、アイデンティティの確認をしているかのように思えます。そして今、フツーの高齢者が著す“ていねいな暮らし本”が人気です。
料理をあまり経験していない食業界人さん。あなたが好きなプロセスはありますか。大丈夫。その気持ちを思い起こしながら「プロパ志向」を理解していただければ、外すことはないと思います。
活躍広がる「ふりかけ」と世界に広がる「FURIKAKE」
子どものご飯が進まないとき、おかずが少ないとき、ちょっと別の味を楽しみたいとき、「ふりかけ」は強い味方です。が最近、「ふりかけ」はそれだけにとどまらない活躍を見せています。
オリジン東秀は、カップ焼きそば“ペヤング”とコラボ。「キッチンオリジン」「オリジン弁当」などの店舗で、店の人気メニューに特製ペヤングソースとスパイス風味のふりかけを組み合わせた“そばめし おにぎり ペヤングソースやきそば味”などを展開。エースコックは、関西と関東の味わいを一気に楽しめるカップ麺“超大盛りスーパーカップ2.0倍 豚骨醤油ラーメン 関西風から関東風”を発売しました。食べ始めは、“関西風のトンコツしょうゆ味”、別添の味変用ふりかけを加えると、“魚介強めな関東風のトンコツしょうゆスープ”に変化します。
スイーツ用ふりかけに力を入れているのは、ナショナルデパートです。スイーツふりかけ&珍味ブランド「ふりちん」を立ち上げ、アイスやトースト、ヨーグルトにかけるユニークな風味のふりかけ、豆腐をスイーツにしてしまうふりかけなどを次々に開発しています。一方、サプリメントブランドを展開するサンセリテ札幌が提案しているのは、だしに含まれる各種栄養素に注目した“KAKEDASHI”。そばやうどん、鍋料理や鉄板料理、ご飯にかけたり混ぜたりするだけで、だしに含まれるミネラルやタンパク質が摂取でき、料理のうま味もぐんと上がります。もともとふりかけは、大正時代初期に熊本県の薬剤師がカルシウム不足を補うために考案したそう。
近年、海外でも「FURIKAKE」への関心が高まっていて、オーストラリアではカフェのメニューになったり、米国ではトレーダー・ジョーズが自社ブランドの「furikake」を販売したり。フランスでは、国内産の無添加ふりかけブランド「FURIFURI(フリィフリィ)」が話題になりました。
海外にも「seasoning(シーズニング)」と呼ばれる、複数のスパイスやハーブ、塩、調味エキスなどが配合された、粉末タイプの調味料があります。「FURIKAKE」は、「seasoning」とは別の存在として、その認知が広がっています。