ベンチャーが農業を儲かるビジネスにする

農業ベンチャーが、新しい農業のカタチをつくろうとしています。
農業総合研究所(和歌山)が展開しているのは、生産者が、栽培した農産物を都市部のスーパーで自由に販売できるプラットフォーム。約700店の都市部のスーパーに「農家の直売所」を開設。登録した5,000以上の全国の生産者が、全国約60ヵ所の集荷場に持ち込んだ農産物を販売しています。生産者は、どのスーパーにいくらで売るのかを自分で決めることができるうえ、農協や市場を通さないため、手取り収入がこれまでの30%程度から65%ほどにアップしたといいます。
プラネット・テーブル(東京・渋谷)は、農協のルートには乗りにくい規格外の野菜を業務用に流通させ、主に都内の飲食店に卸しています。煮込んでスープにしたり、細かく刻んだりする野菜は、形が悪くても、キズがあっても使えます。やり取りはスマホ。1個から即日配送するため、開始から1年で全国3,000の生産者、900の飲食店が利用しています。
UPFARM (東京・港)が始めたのは、「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」の点数で米の価格を決める“米風土(まいふうど)ブランドプロジェクト”。コンクールで審査対象となる“食味値” が価格設定の基準になります。100点満点で80点以上を獲得した米だけをUPFARMが点数に応じた価格で農家から買い取り、「米風土」の通販サイトや百貨店などで販売。小売価格は、80点台で1.8kg2000円前後と、高級米の代表銘柄、新潟コシヒカリの2倍以上です。
政府は今、農協改革に積極的に取り組んでいます。民間の動きは、それとは一線を画すもの。保護から自由化へ、画一性から多様性へと、農業が魅力的なビジネスになるための挑戦が、いろいろなところで始まっています。

人手不足の小売・外食業界に起こる機械化の波

 好景気でもないのに、小売・外食業界では、相変わらず人手不足が深刻な問題になっています。この問題を解決すべく、機械化が進んでいます。
 今、急拡大しているトンカツ・カツ丼市場。松屋フーズが展開する「松乃屋」の伸長を支えているのは、オートフライヤーです。衣を付けた豚肉を油の中に入れると、ベルトコンベヤー式または水車のような回転式で豚肉が自動的に揚げ上がる機械で、注文から5分で提供できます。イオンはショッピングセンターに、自動走行機能付きの業務用ロボット掃除機を400台導入します。夜間の床清掃を無人化することで人手不足を解消。同時に、年間1億5000万円の経費削減が可能と試算します。
 オーダーをタッチパネル式に転換するのは、「鳥貴族」。導入コストは1店当たり200万円程度かかりますが、その分、1~2人店員を減らすことができ、加えて混雑時にもオーダーがしやすくなることで、客単価が上がると見ています。一方、すき家が導入するのは、金庫一体型のレジです。売上金のデータが本部に送られるのはもちろん、売上金は自動で金庫に保管され、保管された売上金は警備会社が集金してくれます。これまで手作業で行っていた売上金のチェックや金融機関への入金作業などが不要になり、人件費の削減に繋がるといいます。
 スーパーやコンビニなどの小売店、ファストフードや居酒屋などの外食店は、経験のない主婦や学生でも入りやすい労働の場として重宝がられ、家庭経済の一端を支えてきました。一億総活躍社会の呼び声とは裏腹に、熟練者しか活躍できない労働市場が着実に広がっています。

ウーバーイーツを試してみました

 米国の配車アプリ大手「ウーバーテクノロジーズ」が港区と渋谷区で始めた、料理宅配の仲介サービス「ウーバーイーツ」。早速、試してみました。
 まずスマホにアプリをダウンロード。名前や住所、クレジットカード番号など基本情報を入力します。いよいよ食べたい料理を検索。インド料理、イギリス料理、カレー、刺身、チョコレート、朝食、ヘルシーとカテゴリー分けもユニーク(?)。ひとつの店舗がいろいろなカテゴリーに属しています。繁忙時やランチとディナーの間の時間など、デリバリーの料理を作れないときは「休業」も可のようで、「次回のご注文開始は午後5時からです」というメッセージが掲載されています。
 私は、イタリアンの中からまったく知らない店舗をチョイスしました。オーダー確認の画面の後、「準備しています」→「配達しています」とメッセージがあり、配達員が今どこにいるのか、地図で確認することができます。オーダーから到着まで約40分。料理はそこそこおいしく、冷めてもいません。キャンペーン中ですから配達料金もなし。プロの味を家で味わえる点はいいと思いますが、包材に盛り付けられた料理の貧弱さは、やはり否めません。店で食べるときと同じ金額に見合うかと言えば、疑問です。配達員は江東区から来ていて、ずっと港区と渋谷区を回っているのだとか。もはや本業です。
 料理宅配で知った店に実際に行ったことのある人は、2-3割と言います。基本的に短時間で配達できる近隣の店しかオーダーできませんから、店の存在を気付かせ、来店に繋げる効果は大きいのかもしれません

米国の料理宅配サービス上陸

 アメリカの配車アプリ大手「ウーバーテクノロジーズ」が、料理宅配の仲介サービス「ウーバーイーツ」を日本で始めました。同社は6月、日本で初めて一般の人が運転手となり、客を有料で同乗させる、いわゆる白タク事業を、京都府京丹後市で始めたばかり。タクシー業界の強い抵抗に遭い、苦しいスタートを強いられています。
 料理宅配エリアは、渋谷区と港区が中心で順次拡大していく予定です。配達員は、こちらも一般の人。審査を受けた個人がドライバーとなり、好きな時間に自転車か125cc以下の原付きバイクで配達をします。すでに、「大戸屋」や「焼肉トラジ」など150以上の飲食店が加盟。1000人以上がドライバーとして登録しているといいます。料理の金額は、来店時とほぼ同じ。配達料は当面無料で、「ウーバーイーツ」が負担。認知と拡散を図ります。
 同様のサービスをすでに展開しているのは、宅配寿司「銀のさら」や宅配御膳「釜寅」を運営しているライドオン・エクスプレス。「ファインダイン」という名称で、最低配達金額を2000円程度に設定、配達手数料として合計金額の15%を申し受けます。こちらの場合、宅配システムをフル活用できる意味では資産の有効利用と言えます。
 2014年、LINEが「LINE WOW」という同様の出前サービスを始めましたが、わずか1年足らずで撤退しています。「ウーバーイーツ」はいかに。現在加盟している外食店の6割が宅配は初めてとか。同じ料理でも、皿に盛り付けるのと使い捨て容器に盛り込むのとでは、商品価値はぐんと変わります。また一般人の配達員に、料理を運んでいるという自覚を徹底させることはできるのでしょうか。とにかく一度、利用してみましょう。

食べログの信頼感が揺らいでいる

 グルメサイト「食べログ」の評価疑惑が、ネットや週刊誌で話題になりました。
 炭火で焼き上げるラムチョップが自慢の外食店「ウルトラチョップ」全4店の‟食べログスコア”が、あるとき一斉に3.0にリセットされたことから話は始まります。オーナーは、その前に食べログの営業担当者から、ネット予約を利用して欲しいなど売り込みを受けていて、それを断ったという経緯があります。3.0にリセットされたとき、営業担当者から連絡が来て「食べログのネット予約を使ってもらわないと検索の優先順位を落とします」と言われたとし、「仮にも飲食業界でビジネスするのならばもう少しお客様やお店や業界全体に資する気概はないのかねぇ…(苦笑)」とブログに綴っています。単なる偶然とも思われますが、4店舗すべてが一斉にという点が、疑惑を呼びます。この話題がネット上で拡散すると、食べログを運営するカカクコムの株価は急落。一時、前日終値比で10.68%安になる場面がありました。
 食べログは、あくまでも一般の生活者が、お店の評価をする仕組み。だから信じられるという人も多いのではないでしょうか。一人の評論家の意見よりも普通の人の多数決。いかにも日本人らしいと思います。でもそれが、運営会社の利益のために改ざんされていたとしたら、点数を付け、口コミを投稿してきた人たちの善意の気持ちを踏み躙り、評価を頼り、口コミを信じて店選びをしてきた人たちを裏切ることになります。
 今回の騒動、真偽のほどは分かりませんが、「然もありなん」と思った生活者は少なくないと思います。食べログにとって、今後、ジャブのように効いてくる打撃であることに違いないでしょう。