先日、女子栄養大学、短期大学等を運営する香川栄養学園の新理事長就任パーティがあり、学校関係者や協力会社など、約350人が参加しました。
我が母校である、女子栄養大学。創立者の香川綾氏が「すべての人が健康で、そして幸せであるように」という思いから、昭和8年、自宅を改造して作った教室で、約20人の生徒を集めてスタートさせた「家庭食養研究会」が始まりです。綾氏は、ビタミンB1を含む胚芽を残して精米することで、当時流行っていた脚気を予防できることを発見。食事だけで健康を取り戻せるという新事実は、綾氏にふるえるほどの感激を与えたと言います。綾氏は、「いつかは栄養学の大学を」という大きな目標を持ち続け、昭和10年には「栄養と料理」を刊行。戦禍を被りながらも学びを続け、25年には、念願の栄養学に特化した初めての大学「女子栄養短期大学」の設立に至りました。プロの料理を再現できる料理カード、計量カップ、計量スプーン、四群点数法など、綾氏が残した財産は、今も私たちの食と健康を支えています。
パーティでは、多くの先輩たちが顔を揃えました。皆さん、女子栄養大学が世に送り出した、食と健康の世界における財産です。食事管理がしっかりしているからでしょう。皆さん、とにかく元気。年齢を意識させないのは、張り切った毎日をお過ごしの証拠です。会話に出てくるのは、会社を設立した、新しい本を出版した、子どもの食教育の場を作った、京都に勉強に行くなどなど、チャレンジと研鑽の話しばかり。少しだけ若い私は、そのバイタリティにただただ驚き、自身の怠慢さを恥じるばかりでした。
カテゴリー: 食のトレンド
ベンチャーが農業を儲かるビジネスにする
農業ベンチャーが、新しい農業のカタチをつくろうとしています。
農業総合研究所(和歌山)が展開しているのは、生産者が、栽培した農産物を都市部のスーパーで自由に販売できるプラットフォーム。約700店の都市部のスーパーに「農家の直売所」を開設。登録した5,000以上の全国の生産者が、全国約60ヵ所の集荷場に持ち込んだ農産物を販売しています。生産者は、どのスーパーにいくらで売るのかを自分で決めることができるうえ、農協や市場を通さないため、手取り収入がこれまでの30%程度から65%ほどにアップしたといいます。
プラネット・テーブル(東京・渋谷)は、農協のルートには乗りにくい規格外の野菜を業務用に流通させ、主に都内の飲食店に卸しています。煮込んでスープにしたり、細かく刻んだりする野菜は、形が悪くても、キズがあっても使えます。やり取りはスマホ。1個から即日配送するため、開始から1年で全国3,000の生産者、900の飲食店が利用しています。
UPFARM (東京・港)が始めたのは、「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」の点数で米の価格を決める“米風土(まいふうど)ブランドプロジェクト”。コンクールで審査対象となる“食味値” が価格設定の基準になります。100点満点で80点以上を獲得した米だけをUPFARMが点数に応じた価格で農家から買い取り、「米風土」の通販サイトや百貨店などで販売。小売価格は、80点台で1.8kg2000円前後と、高級米の代表銘柄、新潟コシヒカリの2倍以上です。
政府は今、農協改革に積極的に取り組んでいます。民間の動きは、それとは一線を画すもの。保護から自由化へ、画一性から多様性へと、農業が魅力的なビジネスになるための挑戦が、いろいろなところで始まっています。
人手不足の小売・外食業界に起こる機械化の波
好景気でもないのに、小売・外食業界では、相変わらず人手不足が深刻な問題になっています。この問題を解決すべく、機械化が進んでいます。
今、急拡大しているトンカツ・カツ丼市場。松屋フーズが展開する「松乃屋」の伸長を支えているのは、オートフライヤーです。衣を付けた豚肉を油の中に入れると、ベルトコンベヤー式または水車のような回転式で豚肉が自動的に揚げ上がる機械で、注文から5分で提供できます。イオンはショッピングセンターに、自動走行機能付きの業務用ロボット掃除機を400台導入します。夜間の床清掃を無人化することで人手不足を解消。同時に、年間1億5000万円の経費削減が可能と試算します。
オーダーをタッチパネル式に転換するのは、「鳥貴族」。導入コストは1店当たり200万円程度かかりますが、その分、1~2人店員を減らすことができ、加えて混雑時にもオーダーがしやすくなることで、客単価が上がると見ています。一方、すき家が導入するのは、金庫一体型のレジです。売上金のデータが本部に送られるのはもちろん、売上金は自動で金庫に保管され、保管された売上金は警備会社が集金してくれます。これまで手作業で行っていた売上金のチェックや金融機関への入金作業などが不要になり、人件費の削減に繋がるといいます。
スーパーやコンビニなどの小売店、ファストフードや居酒屋などの外食店は、経験のない主婦や学生でも入りやすい労働の場として重宝がられ、家庭経済の一端を支えてきました。一億総活躍社会の呼び声とは裏腹に、熟練者しか活躍できない労働市場が着実に広がっています。
ウーバーイーツを試してみました
米国の配車アプリ大手「ウーバーテクノロジーズ」が港区と渋谷区で始めた、料理宅配の仲介サービス「ウーバーイーツ」。早速、試してみました。
まずスマホにアプリをダウンロード。名前や住所、クレジットカード番号など基本情報を入力します。いよいよ食べたい料理を検索。インド料理、イギリス料理、カレー、刺身、チョコレート、朝食、ヘルシーとカテゴリー分けもユニーク(?)。ひとつの店舗がいろいろなカテゴリーに属しています。繁忙時やランチとディナーの間の時間など、デリバリーの料理を作れないときは「休業」も可のようで、「次回のご注文開始は午後5時からです」というメッセージが掲載されています。
私は、イタリアンの中からまったく知らない店舗をチョイスしました。オーダー確認の画面の後、「準備しています」→「配達しています」とメッセージがあり、配達員が今どこにいるのか、地図で確認することができます。オーダーから到着まで約40分。料理はそこそこおいしく、冷めてもいません。キャンペーン中ですから配達料金もなし。プロの味を家で味わえる点はいいと思いますが、包材に盛り付けられた料理の貧弱さは、やはり否めません。店で食べるときと同じ金額に見合うかと言えば、疑問です。配達員は江東区から来ていて、ずっと港区と渋谷区を回っているのだとか。もはや本業です。
料理宅配で知った店に実際に行ったことのある人は、2-3割と言います。基本的に短時間で配達できる近隣の店しかオーダーできませんから、店の存在を気付かせ、来店に繋げる効果は大きいのかもしれません
米国の料理宅配サービス上陸
アメリカの配車アプリ大手「ウーバーテクノロジーズ」が、料理宅配の仲介サービス「ウーバーイーツ」を日本で始めました。同社は6月、日本で初めて一般の人が運転手となり、客を有料で同乗させる、いわゆる白タク事業を、京都府京丹後市で始めたばかり。タクシー業界の強い抵抗に遭い、苦しいスタートを強いられています。
料理宅配エリアは、渋谷区と港区が中心で順次拡大していく予定です。配達員は、こちらも一般の人。審査を受けた個人がドライバーとなり、好きな時間に自転車か125cc以下の原付きバイクで配達をします。すでに、「大戸屋」や「焼肉トラジ」など150以上の飲食店が加盟。1000人以上がドライバーとして登録しているといいます。料理の金額は、来店時とほぼ同じ。配達料は当面無料で、「ウーバーイーツ」が負担。認知と拡散を図ります。
同様のサービスをすでに展開しているのは、宅配寿司「銀のさら」や宅配御膳「釜寅」を運営しているライドオン・エクスプレス。「ファインダイン」という名称で、最低配達金額を2000円程度に設定、配達手数料として合計金額の15%を申し受けます。こちらの場合、宅配システムをフル活用できる意味では資産の有効利用と言えます。
2014年、LINEが「LINE WOW」という同様の出前サービスを始めましたが、わずか1年足らずで撤退しています。「ウーバーイーツ」はいかに。現在加盟している外食店の6割が宅配は初めてとか。同じ料理でも、皿に盛り付けるのと使い捨て容器に盛り込むのとでは、商品価値はぐんと変わります。また一般人の配達員に、料理を運んでいるという自覚を徹底させることはできるのでしょうか。とにかく一度、利用してみましょう。
食べログの信頼感が揺らいでいる
グルメサイト「食べログ」の評価疑惑が、ネットや週刊誌で話題になりました。
炭火で焼き上げるラムチョップが自慢の外食店「ウルトラチョップ」全4店の‟食べログスコア”が、あるとき一斉に3.0にリセットされたことから話は始まります。オーナーは、その前に食べログの営業担当者から、ネット予約を利用して欲しいなど売り込みを受けていて、それを断ったという経緯があります。3.0にリセットされたとき、営業担当者から連絡が来て「食べログのネット予約を使ってもらわないと検索の優先順位を落とします」と言われたとし、「仮にも飲食業界でビジネスするのならばもう少しお客様やお店や業界全体に資する気概はないのかねぇ…(苦笑)」とブログに綴っています。単なる偶然とも思われますが、4店舗すべてが一斉にという点が、疑惑を呼びます。この話題がネット上で拡散すると、食べログを運営するカカクコムの株価は急落。一時、前日終値比で10.68%安になる場面がありました。
食べログは、あくまでも一般の生活者が、お店の評価をする仕組み。だから信じられるという人も多いのではないでしょうか。一人の評論家の意見よりも普通の人の多数決。いかにも日本人らしいと思います。でもそれが、運営会社の利益のために改ざんされていたとしたら、点数を付け、口コミを投稿してきた人たちの善意の気持ちを踏み躙り、評価を頼り、口コミを信じて店選びをしてきた人たちを裏切ることになります。
今回の騒動、真偽のほどは分かりませんが、「然もありなん」と思った生活者は少なくないと思います。食べログにとって、今後、ジャブのように効いてくる打撃であることに違いないでしょう。
フードの充実は必要? 今どきカラオケ事情-2
前回に引き続き、今回もカラオケについて。
先日ある会社から、カラオケチェーンの「まねきねこ」について相談を受けました。フードとドリンクに関して、リニューアル提案をしたいとの要望です。都内ではあまり見かけない「まねきねこ」は、北海道から沖縄まで広いエリアに400店舗を展開。今年はいよいよ1都3県に積極的に進出する計画で、300店舗増を目指しています。「まねきねこ」の特徴のひとつは、室料が低価格であること。店舗にもよりますが、平日午前中は1時間20円(ワンドリンクオーダー制)です。もうひとつは、フードもドリンクも持ち込みができること。近くのコンビニやスーパーで、惣菜やビールを買って入店するお客様が多いそうです。これにより、厨房にかける経費や人件費が抑えられ、大変利益率の高い商売をしています。
一方、全体の約3割の店舗を閉鎖すると発表したシダックス。本業が外食、給食ですから、料理に関しては専門家。ファミリーレストランのような充実した食事メニューを揃えています。過去、節約志向の生活者が、カラオケ1店で食事も飲みも歌も済ませてしまうという使い方をしていたときは、よかったのですが、歌うことが唯一の目的で使われるようになった近年は、メニューの充実が経費を増大させる原因になってしまいました。
先出の会社は、「まねきねこ」の本格的東京進出に当たり、他カラオケチェーンのようなおしゃれなメニューを揃えた方がいのではないかと思っているようでした。弊社の仕事がひとつなくなるかもしれませんが、私は、「まねきねこ」は、今のままのビジネススタイルをベースに展開した方がよいと答えました。
“歌う”だけじゃない 今どきカラオケ事情-1
つい最近、カラオケチェーン大手のシダックスが、全体の約3割の店舗を閉鎖すると発表。SNSで人と繋がるイマドキの若者は、カラオケなんて行かないのかも・・・などと思っていたら、大間違い。ここ5年連続で市場はじわりと拡大しているそうです。その原動力となっているのは、なんとその「SNS」と「シニア」、「スターの卵」です。
第一興商は、カラオケで歌う動画を専用のサイトに公開できるサービスを展開。YouTubeではちょっと恥ずかしいという人も、会員のみの公開だから参加しやすいといいます。「シニア」にも、カラオケ好きが増えています。同世代の仲間と、あるいはひとりだけで楽しむ人が増加。シダックスは、‟ゆったりランチ”と銘打ち、和食や丼メニューをルーム料金込みで安く提供したり、第一興商は、カラオケ機器を使って体操などのプログラムを実施したりと、シニア向けサービスを充実させています。また優勝者がプロデビューを果たした、テレビ東京の「THE カラオケバトル」の盛り上がりを見ていると、カラオケが「スターの卵」の孵卵器になっているのもうなずけます。
さらに、住宅事情で友だちと騒げる場所がないという学生や、踊りや楽器の練習をしたいという人にも、カラオケ店はうってつけのようです。東京急行電鉄は、カラオケチェーン「パセラ」の個室を仕事場として提供するサービスを開始。カラオケ用のモニター画面をパソコンに接続すれば、会議室やプレゼンテーションルームとしても使えるといいます。
新曲をいち早く取り入れ、コスプレ衣装もあれば、おひとり様対応も充実しているイマドキのカラオケ。機器メーカーと店側の企業努力が、市場を成長させています。
節約志向の市場にはまる「スパイシー」
私は、今年のトレンドキーワードのひとつに「スパイシー」を挙げています。スパイスが利いた“ピリッと辛い味”も人気ですが、それに加えて、スパイス本来の味や香り、スパイスの持つ美容や健康への効果に注目。“辛さだけじゃない”スパイスの魅力に目覚める生活者が増えているのが今年流です。
外食市場では、お酒と共にスパイスを使った料理を楽しむ‟スパイスバル”が増えています。いずれの店も、カレーはもちろん、すべての料理にスパイスを使用しているのが特徴。中でも、スパイスとジンの相性のよさに着目して30種類以上のクラフトジンを揃え、それらを使ったスパイスカクテルも提供する店や、黒糖梅酒にクローブやカルダモンを漬け込んだ‟スパイス梅酒”を提供する店などが人気です。
加工食品では、スパイシーなテイストや多種のスパイスを使用していることをウリにした商品がたくさん出ています。ジンジャーエキスに数種のスパイスをブレンドした“濃縮辛口ジンジャードリンク”が注目されていますし、スパイス料理の代表格「カレー」は、スパイス感をより際立たせる“スパイシー化”が加速していて、本格派を謳う商品が続々発売されました。
近年日本では、食の多様化に伴い、調味料や香辛料の消費量は確実に増加しています。また米国においても、「スパイシー」は今年の外食トレンド予測のひとつに挙がっていて、特に、コチュジャンや七味唐辛子など、アジアの調味料や香辛料が好まれています。高価な食材を使わなくても、ほんの少量で料理の味わいを劇的に向上させ、ヘルシー感やおしゃれ感までプラスしてくれるスパイスは、まさに、魔法の調味料。節約志向が強い市場に、ビタリとはまる食品です。
“炭水化物の重ね食べは控えるように”大阪府がお達し
大阪府は8/2、「大阪版健康・栄養調査」の結果を公表。その中で、麺類やお好み焼きなどとご飯類を一緒に食べる炭水化物の重ね食べを「大阪でよくみられる食べ方」とし、肥満体型の人に重ね食べを控えるように呼びかけたことが波紋を呼んでいます。ネット上では、「大きなお世話」「好きなもん食べたらええ」「おいしいからしゃあないだろう」と非難轟轟。コナモン文化を愛する大阪人にとっては、見過ごせないお達しだったようです。
お好み焼きやたこ焼きをおかずにご飯を食べる――。大阪人ではない私にとって、この食べ合わせにはやや違和感を覚えますが、炭水化物の重ね食べは、何も大阪特有の食文化ではありません。そばにミニ丼や丼にミニそば、うどんにいなり寿司、ラーメンライスやラーメンチャーハン、焼きそば定食にはご飯が付きます。パスタランチにはパンが添えられ、ピザとパスタのハーフ&ハーフのセットも珍しくありません。
大阪の調査結果によると、BMIの高い“肥満”の男性の約71%、女性の約56%が週1回以上炭水化物の重ね食べをしているそうで、1日1食以上重ね食べをする強者は、なんと男性の26.8%、女性の26.0%。4人に1人です。他自治体の調査結果がないので比較はできませんが、この数字に関しては、おそらく大阪府がダントツでしょう。
糖質制限ダイエットがブームの今、この数字を叩き出せる大阪ってやっぱりすごいと思います。