行事食として定着するでしょうか。“夏越しごはん”

 “夏越し(なごし)ごはん”。聞きなれない言葉が、外食店やスーパーを中心に広がっています。昨年から“夏越ごはん”の提供を始めた「やよい軒」。今年は、提供店舗数を増やして実施しています。大手スーパーの「マルエツ」も今週末から、惣菜売り場で“夏越ごはん”を販売する予定です。
 “夏越しごはん”の元となるのは、1年の前半の最終日にあたる6月30日に行われる大祓の神事“夏越の祓(なごしのはらえ)”。神社では、茅や藁で作った大きな輪を鳥居の下などに設置。人々は、“茅の輪(ちのわ)くぐり”を行って半年分の罪や穢れを祓い、残りの半年間の無病息災を祈ります。“夏越ごはん”は、この神事に合わせた新しい行事食で、米穀機構が、米の消費拡大を狙って2015年から提唱したものです。
 “夏越しごはん”は、“夏越の祓”の茅の輪の由来となった、蘇民将来が素盞嗚尊(すさのおのみこと)を粟飯でもてなしたという伝承にならった粟、邪気を祓う豆などの雑穀の入ったごはんに、茅の輪をイメージした旬の夏野菜の丸いかき揚げをのせ、百邪を防ぐといわれるしょうがを効かせたさっぱりおろしだれをかけたもの(米穀機構HPより)と言います。それに倣い、市場では、雑穀ごはんにかき揚げを合わせたメニューや惣菜が多いようです。
 行事や祭事、記念日などを食の需要に取り組む動きは活発で、団体やメーカー、小売業などから、数多く提案されます。でも認知度が高まり、定着するものは余りありません。雑穀と、茅の輪をイメージした丸ものの組み合わせを外さなければよいのなら、便乗できる食材や食品の幅はぐんと広がります。行事や祭事が少ない夏の“夏越しごはん”。新行事食として定着するのか、楽しみです。

食べ放題で起死回生? かっぱ寿司

 「かっぱ寿司」が6/13、7/14までの期間限定食べ放題を始めた日、テレビのワイドショーは、この情報をレポーター入りで報道していました。食べ放題自体は珍しくないし、実施店舗は346店舗中(4/9現在)20店舗のみ、しかも平日の14-17時という行きづらい時間帯のみの実施です。それほどの話題なの?と思っていました。時間制限は70分、代金はドリンクバー付きで、男性1580円(税抜き)、女性が1380円(同)です。食べ放題メニューは、寿司は100円の商品が中心ですが、枝豆やたこ焼きなどの一品物、みそ汁やラーメンなどのお椀・麺、プリンやチーズケーキなどのデザートは、比較的幅広く選ぶことができます。来店したお客様からは、“食べたい(価格が)高めの寿司が食べられない”“もともと100円と安いから、得するのためには相当食べなくてはならない”などの声が挙がっていました。14時過ぎにはお客様を制限した店もあり、14時前に行った人でも2時間待ちという盛況ぶりです。
 カッパ寿司の親会社は、コロワイド。すでに3社目の親会社です。回転寿司業界は「はま寿司」「スシロー」「くら寿司」の3強が競い合う激戦区。かつては業界トップだった「かっぱ寿司」ですが、ここ数年不振にあえいでいます。合理化を優先させて原材料費を削ったことで客離れが進み、「安かろう、まずかろう」のイメージを定着させてしまったようです。加えて、上質感を演出するためにカッパのロゴマークを変更。このことも、お客様に分かりづらさを生んだのだと思います。
 今後は、品質の向上に力点を置いて、安っぽいイメージの払しょくを図るといいます。今回の食べ放題で、久しぶりに「かっぱ寿司」に来たというお客様の中には、“おいしくなった”という感想を持つ人もいるようで、その意味では奏功したのではないでしょうか。

6月は「梅仕事」。「仕事」という言葉が好きです

 東京は梅雨に入りました。料理雑誌には、梅漬けや新しょうが、らっきょうなど漬け物のレシピが登場し、初夏の訪れを色彩で教えてくれます。梅はフレッシュなグリーン、新しょうがもらっきょうも赤ちゃんのようにふっくらとしていてみずみずしくて真っ白です。梅は、一晩水につけてアクを抜き、タオルでやさしく水けを拭いて、ひとつずつ竹串でヘタを取って・・・と、時間をかけた丁寧な仕事が続きます。この作業は、よく「梅仕事」とよばれます。
 秋、空気が乾燥してくると、私は部屋に物干し竿を渡し、着物を干し始めます。いわゆる、虫干しです。また着物は、秋から春までは袷(あわせ)を、初夏から夏は上布や紗、絽などの薄物を着ます。ですから、衣替えの時に半襟を洗って付け替えたり、ほつれがあれば繕ったりします。そんな作業を、私は「着物仕事」とよび、その時間をとても大切にしています。
 かつての日本においては、梅漬けもらっきょう漬けも、着物の虫干しも繕いも、すべて女性の“せねばならない仕事”だったはずです。それが今は、しなくてもいい趣味的作業に近くなっています。季節を楽しみながら丁寧な時間を過ごした昔の人の豊かさ――。そこに憧れがあるから、「仕事」という言葉を寄せたくなるのかな、なんて思うのです。

老若男女等しく家事能力が必要な時代です

 経済力より家事・育児能力を重視する――。女性が結婚相手に求める条件を日本経済新聞が調査した結果、41.7%の女性がそう答え、初めて、経済力重視派を約4ポイント上回りました。「共働きなので経済力は求めない。自分が稼げる環境を整えるには相手の家事・育児能力の方が重要」とか、「家事・育児において自立心がない人とは共働きは不可能と感じる」といった声が多く寄せられたそうです。
 一方、国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査によると、男性が結婚相手の条件として重視する項目でも「家事・育児の能力」は「人柄」に次いで2位になっています。結婚を望むなら、男女ともに家事・育児能力は身に付けておくべき重要事項のようです。
 男性の回答からは、女性だから家事ができるとは限らないと思っていることが読み取れます。それを裏付けるように、大手料理教室には、結婚を控えた男女が料理を習いに来るケースが増えたと言います。
 定年退職を迎えた夫婦が、離婚しないで別々の生き方を選択する卒婚。夫は田舎暮らしと畑仕事に憧れ、妻は友だちと趣味を優先させるため、別居する夫婦も多いとか。夢の実現のためには、家事能力が必要になります。
 老若男女に等しく家事能力が求められる時代の到来です。

サラダブームを追い風に豆が人気です

 健康志向を追い風に、豆に注目が集まっています。
 追い風は、やはりボウルサラダのブーム。豆は、トッピング具材として人気のアイテムです。豆を加えることで食べ応えが出て、キドニービーンズや枝豆は彩りにも一役買います。大豆や黒豆など和の煮物の印象が強い豆も、サラダのトッピングに使われるようになってイメージが変わりました。特に、野菜や鶏肉などの具材を細かくカットしたチョップドサラダには豆がなじみやすく、大きさもちょうどよかったことが、豆がトッピング具材として急浮上した理由だと思います。
 もうひとつ、最近身近になったのが、ひよこ豆です。ゆでてすりつぶしたものに、練りごま、オリーブオイル、にんにくやスパイスを混ぜ合わせた“フムス”や、同様にゆでてすりつぶしたものに小麦粉とスパイスを混ぜ合わせて団子状にして揚げた“ファラフェル”は、今まで遠い存在だった中近東の料理をいきなり身近にしました。今年2月には、東京・六本木に、ファラフェルを使ったボリュームたっぷりのサンドイッチを販売する「ファラフェル・ブラザーズ」が、4月には、同・新宿に、フムス専門店「ベジ スタンド」が開店しました。
 肉よりも低カロリーで満腹感が味わえるうえ、食物繊維がたっぷりでタンパク質も期待できる豆。今ドキの女性たちが求める要素がいっぱいです。アサイーやチアシードなどのスーパーフードも、ヘンプシードオイルやアボカドオイルなどのコスメオイルも、日本人にはほとんど縁がないものでした。それが、ヘルシー&ビューティの旗印の下、一気に食市場を席捲しました。女性たちの探求心は、今後も、食の未知なる世界を次々に切り拓いていくことでしょう。

食卓においても市民権を得た“左利き”

 私が子供の頃、右利きが当たり前でした。左利きは1クラスに1人いるかいないか。特に女子は、幼少期に右利きに矯正されるのが当たり前だったように思います。
 ハサミも包丁も右利き仕様。洋包丁は両刃なので問題ありませんが、和包丁は片刃なので左利きでは使えません。また食卓では、右利きの人と左利きの人が並んで食事をすると肘がぶつかることもあります。皆一緒、横並びを良しとしてきた日本において、それは異様な光景に映りました。
 かつて料理雑誌の編集をしていた頃、料理に添える箸は右利き仕様が鉄則でした。万が一、箸先を右にして撮影しようものなら、大目玉をくらって再撮を命じられました。左利きは正しくないという不文律が、日本人の中に明らかに存在していたのです。
 ところが最近は、そうでもないようです。象徴的なのは、左利きのタレントをテレビで見る機会が増えたこと。例えば、テレビ東京で土曜日に放送されている「男子ごはん」のメインキャスター、TOKIOの国分太一氏、コマーシャルでは、味の素「ほんだし」の小栗旬氏、同「Cook Do 今日の大皿」の小池栄子氏、かつて西武鉄道のコマーシャルで、吉高由里子氏は旅館の夕食シーンで左手に箸を持っていました。因みに、元AKBの前田敦子氏は、丸美屋「のっけるふりかけ」のコマーシャルで、左利きを封印したそうです。グルメ番組のレポーターにも左利きのタレントが採用されていますし、料理雑誌もデザイン的に処理された構図では、箸が左から出ているものもよく見ます。
 私は、左利きをまったく否定していません。それはマナー違反ではないから。が正直、左手で箸を持つ姿に未だ違和感が拭えません。そのうち、慣れるのでしょうか。

心地良いサービスができる人材の育成を

先日出席したパーティでのこと。メインディッシュの皿に残ったソースをパンで拭おうとした矢先、皿を持って行かれそうになりました。しかも2回も。もちろんナイフとフォークのサインは「まだ終わっていません」を意味しています。シェフが料理説明で、「自慢のソースです。残ったらパンに付けてお召し上がりください」とおっしゃっていたのに。その前から気になっていたのですが、サービス担当者は、食べ終わったお客様の皿をどんどん下げていきます。同じテーブルの中に、食べ終わった人とそうでない人がいたら、全員食べ終わったのを確認してから皿を下げ始めるのがマナーです。
食べ終わった皿は、さっさと片づけること。それが、機敏でスマートなサービスであると教えられているのでしょうか。テーブル数が少ないビュッフェスタイルのパーティならまだしも、着席でのコース料理。その必要がありますか? “もてなしを受けている”という心地良さは一切なく、“早く片付けたいこなし仕事の対象”になった気分でした。
私はある大学で、フードビジネスについての講義をしています。学生たちは後々、ホテル・ウエディング業界への就職を希望しています。彼らの行動を見ていて確信できます。私が不快だと思うことを、おそらく彼らの大半は、そう感じないでしょう。体験し、心で感じ、考えないことが、自然に身に付くことはないと思います。ホテルやウエディング、レストランなどサービス業を生業としていらっしゃる方々には、今まで以上の本気度でサービスパーソンの教育に取り組んでいただきたいと願います。

強まる節約志向。小売り各社はメリハリ消費に期待

 安倍政権が目指すデフレ脱却。遅遅として進まないばかりか、小売各社は一部商品で値下げを断行。他方、高価格帯商品の開発にも注力。生活者のメリハリ消費への対応を急いでいます。
 イオンは2016年11月から順次、PB「トップバリュ」で、売り上げ規模が大きい主力30品目を5〜30%程度値下げしました。一方、素材・環境配慮型のPB「トップバリュグリーンアイ」を刷新。国際的なオーガニック認証を取得した商品「オーガニック」、抗生物質や成長ホルモンを使用せずに育てた家畜の肉や平飼い鶏の卵などの生鮮食品「ナチュラル」、合成着色料や合成保存料、合成甘味料などを使用しない加工食品「フリーフロム」の3つを新設しました。
 またセブン-イレブン・ジャパンは、4月、洗剤や歯磨き粉などNBの日用品61品目の値下げに踏み切りました。値下げは、8年ぶり。値下げ幅は平均5%、最大で20%です。生活者の節約志向が一段と強まる中、販売価格をスーパーやドラッグストアなどの実勢価格に近づけて対応したい考えです。一方、PB「セブンプレミアム」は、生鮮食品を加えるなど全面的に刷新。PBは品質にこだわることで利益を確保、NBは値下げに踏み切って値頃感をアピールします。
 モノの値段が下がることは、経済全体を考えたとき、決して喜ばしいことではありません。両社の高価格帯PBが生活者の心を動かす商品であり、市場を活性化させてくれることを期待します。

低脂肪、高タンパクの肉人気。オージーがアツい!

 低脂肪、高タンパクの肉が人気の昨今。オーストラリア産の動物の肉が、密かに人気のようです。
 その筆頭は、カンガルーの肉、ルーミート。低脂肪、高タンパク、低コレステロールに加え、体脂肪燃焼と筋肉増強の効果が期待できる共役リノール酸が豊富に含まれています。加えてルーミートは飼育肉ではなく、オーストラリアの大自然で育った野生カンガルーを捕獲し、近代的な専門工場で精肉されているため、完全なフリーフロム。科学的な負荷がありません。濃厚な風味があり、食感は軟らかなのだそうです。
 お次は、アリゲーター、ワニの肉。低脂肪、高タンパク。さらに、上質なコラーゲンが含まれています。こちらは養殖が主体で、ワニたちは、自由に動き回れる環境の中、薬品などを使用せず育てられているとか。肉質は、ジューシーで軟らかく、若鶏のような味わいといいます。
 その他、砂漠で放牧されているラクダや、ダチョウ、エミュー、ワラビーなども、ヘルシーミートとしてオーストラリアでは食用肉として利用されています。
 これらの肉のいくつかは、日本でもネット通販で購入可能ですし、横浜・桜木町には、「珍獣屋」という、変わった肉をウリにしている外食店もあります。ワニの手羽肉は、手と爪まで付いていて、なかなかグロテスクです。
 私たちが普段食している肉、牛、豚、鶏も、十分にヘルシーミートです。そこに、牛肉にはうま味を増すためにサシを入れ、豚肉にはおいしい脂身を付加させることに注力してきた過去があります。何の手も下さない自然界の肉が、ヒトにとって最も健康な肉であり、それが注目されている現実は、食に求められる“享楽”と“健康”というふたつの面を見せています。

無料のトッピングを大量にかける“かけすぎ部”

 飲食店で、調味料やチーズ、紅しょうがやねぎなどの無料のトッピングを大量にかけて食べる人たちが増えているといいます。彼らが所属するのが、“あればあるだけかけちゃう、かけすぎ部”。現在部員は1万人。創設者は歌手のスガシカオ氏です。今年1月に放送されたバラエティ番組「アウト×デラックス」にゲスト出演したスガ氏が、その“かけすぎる”食のこだわりについて語ったため広く知られるようになり、ネット上で話題になりました。
 スガ氏は粉チーズが大好きで、パスタが見えなくなるほどかけるとか。あるお店で会計時に「トッピング代30円いただきます」と言われ、スガ氏は「書いてねえだろ!」と拒否したそうです。部員の活動報告も驚きです。「丸亀製麺」では、うどんに大量のねぎをトッピングしているにも関わらず、小皿にもねぎを取り、なくなったら‟追いねぎ”をする。「スパゲッティーのパンチョ」では、大量の粉チーズをかけながらナポリタンを食べる。「吉野家」では、牛丼に山盛りの紅しょうがを載せるなどなど。もはや、どっちがメインか分かりません。
 もちろん、メニューの価格にはトッピングの食材費も入っています。でも、常識の範囲の量の価格です。客側にしてみれば“卓上に置かれた無料のもの”であっても、店側にすれば原価がかかっている立派な商品なのです。
 北海道新幹線が開業した2016年3月から函館市で実施されていた傘の無料貸し出しサービスが、今年3月末で廃止されました。用意した2300本のビニール傘のうち200本しか返却されなかったためです。サービスは享受する側にマナーがなければ続きません。「紅しょうが有料ですけど付けますか?」と言われるようになりたいのでしょうか。